承諾年齢引き上げに向けた法案を今すぐに通過させなければならない

Fr. Shay Cullen

2021年4月23日

 

ほんの数週間前のことだ。14歳のAnnalisa(仮名)はソーシャルワーカーと警察官によって救出され、虐待を受けた子どもたちのためのプレダ・ホームへ連れてこられた。Annalisaは崩壊した家庭で育ち、実の父親に会ったのは12歳の時だ。それ以降1度しか会っていない。Annalisaは教育レベルが低く、簡単に誘惑され、27歳の男と性的関係を持つようになった。Annalisaは年上のこの男からの贈り物や愛の誓いにその気になり、彼女の母親は合意した。だが、この関係はうまくいかなかった。

 

人身取引という犯罪行為にも思える一連のこの出来事において、当時、この母親は再度Annalisaを26歳の別の男に差し出した。この男はAnnalisaの同棲相手となり、彼女はこの男に依存するようになった。しばらくすると母親は娘を再び取り戻したいと思うようになった。この男が自分に金を払い続けるようには思えなかったからだ。この男がそれを拒むと、母親は警察に訴え出た。

 

現行法では、承諾年齢(訳註:法的に性交・結婚できる年齢)は12歳とされており、驚くほど低い。この法律の下では、たとえAnnalisaが14歳、その関係が始まった時にはほんの13歳だったとしても、この男たちが児童性的虐待や性的暴行で起訴れることはない。この12歳という承諾年齢は、世界で一番ではないとしても、アジアで最も低い。

 

現代的で文明化した社会、そして子どもたちを守る32の法律を備えた子どもに優しい社会を誇るフィリピンだが、この承諾年齢が変わることはなかった。これはフィリピンにとって不名誉なことだ。

 

憂慮すべきこの低い承諾年齢は、小児性愛者(ペドファイル)にとっては非常に好都合だ。自分が愛情深く、支えとなる“夫”になると子どもたちやその母親を言いくるめる。子どもたちは、その関係の中に暴力による脅しや傷害、恐怖、強制はなく、自ら同意したと話す。そうなると性行為は合法であり、相手の男は何歳であろうと、起訴されることはない。

 

悪用されてきたこの法の抜け穴が、今、変わろうとしている。新たに提出された法案では、16歳以下の子どもとの性行為はすべて法廷レイプ(訳註:法的に罰せられる強姦)となる。この新たな法案はすでにフィリピン議会の最終見解で承認されており、上院の承認待ちだ。この法案は、婚姻関係にある場合を例外として除外し、さらに、双方の年齢差が4歳を超えない未成年同士の合意に基づく、非搾取的・非虐待的な性的関係においても刑事責任を問わないことになるだろう。

 

現在の低い承諾年齢を引き上げる法案に対する承認が上院で遅れていることで、さらに多くの子どもたちがAnnalisaのように年上の男たちから性的虐待や暴行を受けることになるだろう。子どもたちを男たちの力と影響力で押さえつけることは容易であり、親たちもそうした状況から金を儲けている。

 

現在Annalisaは安全に暮らしており、治療やセラピー、教育、法的支援を受けている。法医学上の検査により、彼女には深刻な裂傷があることがわかった。Annalisaは母親を恐れ、何も言わずにどれほど苦しんでいたことか。逃げ出し、助けを求めることをどれだけ恐れていたことか。我々は思い知らされた。検察官は、娘に対する人身取引の罪でこの母親を起訴することもできるだろう。そして男たちを、取引された子どもを利用した罪で起訴することも可能だ。人身取引禁止法は、こうした状況に対応するために制定された。

 

この法案が議会を通過すれば、見せかけの恥ずべき現行法に終止符を打ったとして、法律の歴史に残るだろう。現行法は事実上、児童性的虐待を認めている。フィリピン議会はこれ以上の遅滞なく、この重要な法案を通過させるべきだ。ただし、若者同士が同意に基づく性行為を行ったことで性犯罪者のレッテルを貼られることを防ぐために、年齢が近い未成年同士の関係については例外とする条項を設ける必要がある。

 

コロナ大流行により、さらに多くの子どもたちが家庭内に閉じ込められることになり、身内からの性的虐待にさらされることになった。ロックダウンによりインターネットの利用が急増し、児童ポルノが前代未聞の勢いで広まった。低価格のスマートフォンが普及し、子どもですら、虐待を受ける子どもの映像に簡単にアクセスできるようになった。政府にできることがあるとすれば、販売するスマートフォンに内蔵型児童ポルノ制限ソフトを搭載させ、起動させることをスマートフォンの販売業者に義務付ける国内法を制定することだ。この制限ソフトを解除したい場合、それが大人であればパスコードが知らされる。

 

自社のサーバーを経由して送受信される児童ポルノをいまだに規制せずにいるISPs(インターネット・サービス・プロバイダー)も存在する。こうしたISPsに対して制限ソフトのインストールを義務付ける法律(共和国法第9775号)に従うよう求める国家電気通信委員会(National Telecommunications Commission, NTC)の努力にもかかわらず、筆者が知る限り、2009年にこの法律が議会を通過して以降、ISPsは同法の遵守を怠っている。PLDT /SmartやGlobe Telecomといった電気通信会社はマイクロソフト社とDNAPhotoやDNAVideoといった制限ソフトに関する交渉を行っていた。マイクロソフト社はこうしたソフトを扱っているが、ISPsがそれを使用してるかどうかに関する情報は提供していない。つまり我々はISPsが制限ソフトを使用していないと解釈することができる。ISPsが制限ソフトを持っていないということは、彼らが制限ソフトのインストールを拒否しているということだ。

 

自分の子どもが隠し事をし、親と距離を置き、何も話さなくなると、その性格や行動の変化に、親たちは心底ショックを受け、当惑するだろう。親たちは、子どもが薬物中毒なのではと考えるかもしれない。携帯上でポルノ映像を見てしまうと、10代の子どもたちはトラウマに陥りやすい。悪影響を受け、以前と同じように自分の親と接することができなくなる。その関係は永遠に変わってしまうだろう。彼らには、ポルノの普及を認めている、人の道を踏み外したISPsを責める正当な理由がある。至る所でこうした状況は、現代の憂慮すべき家族の危機であり、子どもたちにとっての悲劇であり、親たちに課せられた難題である。

 

原文:https://www.preda.org/fr-shays-articles/bill-raising-age-of-consent-must-be-passed-soon/