森林を救うことは地球を救うことである

Fr. Shay Cullen

2021年3月21日

 

3月21日は「国際森林デー」だ。森林は、あらゆる生物、自然界、そして特に人類の幸福にとって不可欠であり、重要なものである。森林は、気候変動を引き起こす有害な二酸化炭素の大部分を吸収してくれる。地球の温度上昇を1.5度未満で食い止め、来るべき大惨事を回避するためにも、森林の保護と復元は各国の最優先課題であるべきだ。

 

一年を通して水を保持・放出するために、森林は欠かせない存在である。干ばつを防止し、清潔な水を提供し、台風シーズンに起こる地滑りや土壌浸食を防いでくれる。森林破壊の被害を受けているフィリピンその他の国々では、豪雨と台風により農作物の収穫高が著しく低下しており、それにより食料不足が起きている。土壌浸食が原因だ。場所によっては栄養豊富な表土の50%が流され、今後さらに被害が大きくなることが予想される。水を保持するための森林はもうこれ以上存在しない。かつては米を自給自足できていたフィリピンは、今ではそのほとんどを輸入している。

 

森林破壊の多くは、役人から許可を得た採掘会社や伐採者によって引き起こされている。1900年、フィリピンの国土は70%が森林に覆われていた。1999年までに残っていたのはそのおよそ3〜5%だ。容赦ない伐採が40年もの間野放しにされていたことで、このような埋め合わせのできない原生林の喪失を招いてしまった。荒廃し、丸裸にされ、地表をむき出しにされた丘や山々はその悲劇的な結果であり、こうした流れは今も続いている。フィリピン製の合板の98%が日本へと輸出され、その額は8,600万米ドルに相当する。だが、輸出される木材の中には持続可能な植林地から伐採されているものもある。

 

“foresticide”と筆者が呼ぶ現象が起きている。世界の森林破壊は、毎年、およそ1,000万ヘクタールの割合で進んでいる。つまり1990年以降、4億2,900万ヘクタールの森林が破壊されていることになる。ブラジルでは、アマゾンの熱帯雨林数百万ヘクタールで木々が伐採され、森林管理人や先住民族が殺害され、状況は悪化している。研究者らによると、2050年までに2億3,000万ヘクタール以上の原生林が破壊破壊されることになる。

 

伐採者や採掘会社を支援する政府役人もおり、フィリピンやブラジル、その他の国で環境をめぐる「密かな戦い(secret war)」が起きている。多くの森林管理人や環境保護活動家たちが、フィリピンでは鉱山警備員によって、ブラジルでは牧場主によって組織的に射殺されている。軍は、先住民族のコミュニティをテロリストあるいは共産主義支持者であると公言し、彼らに対する強制退去命令を正当化しているらしい。そして採掘会社は、抵抗されることも抗議を受けることもなく、先祖代々の土地を搾取する。イタリア人環境保護活動家である“Pops”Tentorio神父は2011年に射殺された。この殺人について有罪判決を受けた者はいない。それ以前にも複数の神父が殺されている。

 

アマゾンでは、牧場や、やし油を作るための畑や大豆栽培用の農地を提供するために、森林が伐採されている。先住民族の人々は、病気や、牧場主や大豆農場主らによる暴力によって一掃される。現在、世界中の牛の数は9億8,900万頭であり、2014年の10億頭強からは減少している。だがそれでもこの状況は厄介である。この牛たちは、温室効果ガスであり、気候変動の原因となる大量のメタンガスを放出している。そしてこの気候変動が森林に負の影響を与えているのだ。ヨーロッパでは、ポーランドの森林保全をめぐる争いが起きている。政府は、有名な世界遺産であり、何百万年も前から存在する原生林Bialowieza Forestでの伐採を許可している。欧州司法裁判所は2018年、森林破壊は違法であると宣言した。だがポーランドは、抗議や法的な異議申し立てにもかかわらず、既に伐採継続を計画している。野生生物の生息地を破壊する行為は、野生生物の生存の機会を破壊することになる。

 

ドイツでは、環境を汚染している工場や石炭発電所、車両からの排気ガスによって生ずる酸性雨により、代々続く森林が深刻な危機に晒されている。1980年代までに250万ヘクター ルの森林が損なわれ、膨大な数の木々が死滅した。酸性雨は木々の葉や根を枯らした。現在森林は、法律の改正や再生可能なエネルギー源への転換により保護されている。

 

木々は人間や動物、鳥たちにとって不可欠だ。木々は健康に良い影響を与える香りや雰囲気を醸し出す。木々のそばで暮らすのが健康に良い理由はそこにある。木々は根の部分で互いに繋がっており、必要な菌類その他の植物の成長を促す。木々や野生生物の存在しない世界は、生命を失ったも同じだ。いい情報もある。『Geography Realm』の以下の報告によると、大規模植林活動が広がりつつある。https://www.geographyrealm.com/mega-tree-planting-efforts-around-the-world/

 

インドのUddar Pradeshでは、80万人のボランティアたちが1日で5,000万本の植林を行った。この記録は翌年、破られた。Madhya Pradeshで、150万人のボランティアが12時間ほどで6,600万本の苗木を植えた。こうした活動が毎年行われている。今年、あらゆるソーシャル・ディスタンス対策に配慮しながら、200万人のボランティアたちがUttar Pradeshの農地や役所、川岸に集まり、職員が配布した2億5,000万本の苗木を植えた。さらに今年は植林した木々のその後を記録するために、タグをつけた。最終目標は、2030年までに森林の面積を2億3,500万エーカーにまで増やすことだ。インドは2016年パリで、この数字を達成させることを誓約している。

 

エチオピアでは、政府が進める“Green Legacy Initiative”の活動において、およそ2,300万人のボランティアたちが国内1,000ヶ所の植林場に動員された。そして全員で力を合わせ、12時間ほどで3億5,000万本以上の苗木を植えたそうだ。

 

トルコは、砂漠化と山火事の増加という危機に直面し、独自の大規模植林活動を始めた。政府は昨年、11月11日を「森林の日(National Forestation Day)」とすることを宣言した。1年目、ボランティアたちはトルコ国内の2,000ヶ所以上で1,100万本の植林を行った。Northern Anatolian City of Corumは、1時間、1ヶ所での植林数の世界記録を破り、30万3,150本の苗木を植えた。しかしながらそれほど多くの苗木が生き残るわけではなく、残存率は、議論の余地はあるものの、およそ40%ほどだ。

 

だが、森林は再生可能であるという事実は未来への希望である。そしてフィリピンでは、国民が直接行うさらなる植林活動が必要である。DENR(環境天然資源省、Department of Environment and Natural Resources)による活動は、契約数が増えるにつれ噂によると汚職が起きているようだが、失策や裏取引があってもなお、活動は続いている。

 

我々が考える最善策は、先住民の人々に苗木を提供し、破壊された先祖代々の土地に植えてもらうというやり方だ。プレダは、先住民族であるアエタ族の人々と活動を続けている。彼らはこの15年間、毎年平均3,000本の苗木を植えている。数は少ないが、意味のある貢献だ。我々は、地域の人々を信頼し、ともに活動を続けることで森林を救い、取り戻すことができる。

 

原文:https://www.preda.org/fr-shays-articles/saving-the-forests-is-saving-the-planet/