欧州評議会での演説

Fr. Shay Cullen

 

今月はChildren’s Monthである。欧州評議会の参加者たちへ向けて、2020年11月10日(火曜日)に行った筆者の演説を皆さんと共有したい。

 

欧州評議会事務総長

 

議長、参加者の皆様

 

この会議にお招きいただき、また、実際にこの場に上がるために私を励まし、鼓舞してくださったSylvie Bollini特命全権大使に感謝申し上げます。この演説を通して、子どもたちの置かれている現状、そしてネットを介したセックス・ショーや児童ポルノで子どもたちを苦しめている児童性的虐待者の危険性や暴力について、情報と懸念を共有したいと思います。

 

フィリピンでは、同様に邪悪な闇の力が10万人を超える子どもたちを取引し、彼らを性奴隷や利益目的の性的搾取が行われている世界へと誘い入れてきました。Unicefによると、同じ犯罪者たちがヨーロッパでも、そして世界中で活動しているようです。あらゆる優れた利点を有するインターネットが、児童虐待の直接の手段となっています。

 

UNICEF及びEUROPOLによると、フィリピンでは、ネット上で性的虐待を受けている子どもたちが恐ろしい状況に置かれています。そしてそのような状況が、フィリピンをネットを介した児童性的虐待の国際的中心地にしているのです。子どもたちを性的に虐待するための取り決めをし、多くの場合、その取引相手である被害者の親族に支払いをする顧客の大半は、先進国の人々です。ネットによるコミュニケーションが可能となり、世界中が繋がっていることで、子どもたちに対するネット上での性的搾取は全ての国の懸念事項となっています。

 

小児性愛者のいない国はありません。彼らの多くが児童ポルノを収集し、閲覧するために、そしてネット上での性的虐待への支払いをするために、インターネットを利用しています。彼らの多くは罰せられることはありません。それは、インターネット・サービス・プロバイダーや電気通信会社のほとんどが管理されておらず、無秩序な状態にあるからです。誰もがほぼ何でもネット上に掲載することができます。企業はこれに対して何ら責任を負いません。

 

フィリピンには、児童ポルノ禁止法として知られる共和国法第9775号が存在します。プレダはその起草に協力しました。この法律は、児童ポルノやネット上の性的虐待ショーを制限するソフトをインストールすることをインターネット・サービス・プロバイダーに対して求めています。しかしながらフィリピンの電気通信会社の力はあまりにも強大であり、彼らは罰せられることもなく、この法律を無視し続けています。

 

ヨーロッパ諸国の国内法令は、児童ポルノやネット上での性的虐待の掲載や共有を禁止しています。しかしながら法律は無視され、虐待は広がっています。電気通信会社は、虐待の広がりを阻止するためにより積極的に行動すべきであり、そのように行動しないことについて責任を負うべきです。

 

小児性愛は深刻な問題ではないという考えは、昔からあり、今も残っています。ロックダウンが実施され、Covid–19が大流行する中、児童ポルノやネット上での性的虐待はさらなる広がりを見せており、そのような考え方は今後もなくならないと思われます。7,300万人のフィリピン人がインターネットを使用しています。そのうち2,500万人が子どもであり、うち70%が監視のない状態でネットを使っています。

 

フィリピン国家警察によると、ネット上での児童虐待は、COVID大流行の最中、264%増加しています。ネット上での児童性的虐待を求める顧客のほとんどは、先進国の人々です。欧州評議会のメンバー国やオブザーバー国も含まれています。被害者の中には3歳ほどの幼い子どももいます。親族が虐待者であり、国際宅配便で支払いを受けます。

 

『ドイツ、ネット利用の小児性愛者に対する捜査が拡大する中、容疑者3万人を調査』今年、このような見出しでFrance24が次のように報じました。「フランスは、小児性愛者の作家Matzneffに虐待された被害者やその目撃者を探している。」彼は尊敬される作家であり、テレビのトークショーで活躍していました。他の知識人や芸術家同様、自らの児童虐待行為を美化する作家でした。子どもたちを性的に虐待しているという彼の発言については、長年にわたり、誰も何も言わず、何もせずに済ませてきました。現在彼は姿を隠しています。このような動きは、物事が前進し、意識が向上しているという良い兆しです。

 

児童虐待という犯罪に対する無気力・無関心は昔から存在しています。より多くの資源が、児童虐待者の捜査・逮捕、子どもに対する犯罪の処罰強化に投じられるべきです。テロ防止対策や捜査には数十億が使われています。テロリストたちの多くは社会の中にいます。彼らは子どもたちを性的に暴行し、虐待し、身体的・性的暴力の対象にします。周囲に気づかれずにそうした行為を行います。街中ではなく、閉ざされた扉の向こう側で秘密裏に行われ、だからこそ、周囲の反応も薄く、阻止しようとする行動も起きにくいのです。虐待者たちは、児童性的虐待ショーのライブを通して、世界中で虐待行為を行なっています。

 

フィリピンに関するさまざまな数字には本当に驚くばかりです。およそ80%にあたる3,200万人の子どもたちが、その人生のいずれかの時期に、暴力を受けています。こうした子どものうち10歳から18歳の700万人が、毎年、性的虐待を受けています。その20%にあたる140万人が6歳未満です。

 

子どもたちに対する性的暴行がもたらす苦痛や苦悩については、プレダの動画をご覧いただければおわかりでしょう。我々は、子どもの頃に受けた性的虐待がヨーロッパやフィリピン、そして世界中の何百万という子どもたちに傷を負わせていると確信しています。治療の過程で解き放たれた彼らの怒りや憎悪が、性的暴力が子どもたちに及ぼす計り知れない影響を、はっきりと示しています。虐待の加害者のほとんどが実の父親や継父、同性相手や小児性愛者であり、虐待を受けた何百万という子どもたちは、恐怖や恥ずかしいという思いから、決して通報しません。

 

声を上げ、あるいは治療や支援を受けることができる被害者はほとんどいません。被害を受けた子どもたちは心の中に痛みや苦しみ、怒りを抱えたまま成長します。社会に対するこの怒りが反社会的・政治的暴力や犯罪、テロ行為として表現されたとしても、それは驚くべきことでしょうか?何事にも理由があります。精神分析医は、子ども時代に受けた暴力は長期にわって影響を及ぼすと断言してくれることでしょう。

 

最後に、心に留めておくべきことをお話ししたいと思います。この地球上で、人類は、多くの驚くべき発明をすることができ、多くを成し遂げることができます。しかしながらこれまでのところ、ある特定の人々の精神状態や感情の状態をコントロールすることができずにいます。それにより、そうした人々は子どもたちに精神的・身体的暴行を加え、子どもたちはその影響を受けながら、ほとんど、あるいは全く支援を受けることができないまま、生きていかなければなりません。

 

ヨーロッパでは、さらなる啓蒙活動が進められるべきです。そうすれば子どもたちは虐待を受けた場合、被害を申し出、通報する勇気を持ち、緊急支援を受けることができます。フィリピンのような発展途上国では、そしてヨーロッパでも、被害を受けた子どもたちに、さらなる支援が提供されるべきです。

 

人権や子どもたちの権利、尊厳について語る人々は力を合わせ、なお一層真剣に、児童性的虐待という悪の根源を壊滅させるために、極力、現在行なっている活動に尽力しなければなりません。活動の要となる領域であるインターネットやソーシャルメディアの多くのプラットフォームを厳しく規制し、この活動を続けていかなければなりません。

 

ありがとうございました。