朝食用のサラダを作っていて、冷房を入れていないのに、素肌がゆったりとくつろいでいるのに気づいたのが最初。
飲み物を用意しようとして、いつもなら冷蔵庫から冷えた麦茶を出すのに、ちょっと考えて―身体に聴いて、薬缶を火にかけ、引き出しから紅茶を選ぶ。
前回、熱い紅茶を飲んだのはいつだったか、思い出せない。
茶葉が膨らんで、無色の湯を鮮やかな茶の階調に染めていく時間。不織布の袋は重ったるげで、しかし決して沈みきらずに、ふわりとグラスの中に浮かんでいる。

日常の中の、誰に話すことでもない、ささやかな小さな驚き。

空の青が澄みわたり、雲は入道雲だけでなく、さまざまな不思議な形を見せるようになった。
暑すぎて咲かなかった朝顔が鮮やかに咲き始めた。急いでいるのがわかる。
近所の雑木林の蝉がさらに激しく鳴き、最後の力を振り絞る。屍やちぎれた羽が通路や階段に点々、と。

長月朔日。
確かな季節の移り変わり。
秋の始まりと夏の終わりが交錯する。

(使用画材:透明水彩、鉛筆、スケッチブック)