母には、癌については話していない


この先も話さないかもしれない


彼女の性格を知っているから


嫌いだと思っていても


酷いと思っても


どうしようもないと思っても


母親なんだ


小さいころは可愛がってもらった


洋服も作ってもらった


大人になったって


色々心配してくれた


親の心子知らずなんだ


嫌いな所はたくさんある


でも


母親が


目の前からいなくなる事を想像すると


途方に暮れるんだ....



お母さん


お母さん


親孝行はしたつもりだ


だけれど


まだまだ足りなかった


彼女が生きる気力を無くしたのは


父が認知症になって、自分の思い通りに事が運ばなくなったから


父のお世話をする事が母の生き甲斐だった


それも、元気な父限定だ


元気なのは私のおかげ


自分でそう思い、周りにもそう言い、自分を認めていた


その父が認知症になり、彼女にとっては歳の割に元気な父でいられたのは自分のおかげという勲章が無くなった


そこで生きがいを失った


自分で自分の行いを褒められなくなった


なぜあんなに、父に縛られたのか


父から離れて介護職でもすればよかったのに


文句を言いながら父の世話を続けた


だれにも自慢できなくなった父は、母にとっては重荷でしかなくなった


趣味もなく、友達もいなくて


どこにも逃げられない


なるべくしてなった今の状況


どうして、私の話に耳を傾けてくれなかったのか


治る見込みは無いと思っている


それを思うと


お母さん


お母さん


こんな私だって


悲しいんだ