何時もの様に有星神社を訪れた大和は
神棚に何かが置いてある事に気付いた大和は普段から抱き抱えている
自身の“お世話係”であるコアラニャンと共に疑問を抱いた。
「ねぇアレ何だろうね」
「プク」
疑問を抱いた2人はコアラニャンを持ち上げ取って貰おうと
試行錯誤を繰り返している様子を有星 アキエ(通称・オババ)は
『何をしておる?』と言う声に驚きの声を上げた。
「大和・・・何をしておる」
「いや・・・アレ何かなって」
大和の言うアレに視線を向ける神棚に置かれた福豆だと察した。
「あぁ福豆じゃな」
オババの福豆を理解出来ずに『福豆?』とオウム返しをすると
福豆について話始めた。
「昔から穀物等には霊力が宿るとされていてな」
「そうなの?」
大和の問い掛け『そうじゃ』と答えたオババは
更に『福豆』について続けた。
「福豆には昔から邪気を払うとされていてな」
一通りの福豆の説明を終えた2人の元へアキノリが訪れ、
神棚に置かれている『福豆』に気付き『今日は節分かぁ』と呟いた。
「節分って?」
大和の問い掛けにアキノリは節分に着いて話し始めた。
節分とは鬼を追い払って新年を迎える 立春の前日の行事であり、
立春の前日だが 立春の日付は年により異なり2月3日とは限らないと告げた。
二十四節気において立春は新年の始まりで 節分は大晦日の様な日であり、
旧暦の大晦日とも日付が近く『時に重なる事もあり』、
江戸時代までは同じ様に一年の締め括りの日でもあった。
節分の歴史は古く、
鬼を追い払う行事は『おにやらい』・『追儀』と言う宮中の行事が発祥であり、
殿上人と呼ばれる身分の高い貴族が桃の弓と葦の矢を持って
鬼に扮した家来達を追い掛け逃亡させると言う行事が起源であるも
おにやらいは宮中でだんだん廃れて行なわれなくなったが、
各地の神社が形を変えつつ受け継ぎ、一般にも浸透していった。
「後 ヒイラギやイワシも使う時が在るんだ」
「えっ何で?」
ヒイラギは悪霊を寄せ付けないとされ、イワシは焼いた時の匂いで鬼を遠ざけるとも、
匂いで鬼を誘き寄せてヒイラギで刺す為とも言われ地方に寄っては
『やいかがし(焼嗅がし))』とも呼ばれていた。
「へぇ~じゃぁ豆まきは何時やるの?」
「夜じゃ」
大和は『何で夜?』と問い掛けると
鬼は夜に訪れる考えられているが難しいければ昼でも大丈夫と答え、
豆まきの“やり方”を説明した。
窓やドアの外に向かって『鬼は外』と撒いていく
撒いたら直に窓・ドアを閉めて鬼が戻らない様にして室内に向かって『副は内』と撒く
これを玄関まで繰り返す。
「豆まきが終ったら自分と同じだけ『年取り豆』を食べる」
身体が丈夫になって病気になりにくいと言われ
場所のよっては新年を向ける為、
また数え年で数える為に“年齢+1”とも言われている。
2人から“節分”を聞いた大和は何かを思いついた様に表情を浮べると
福豆を分けてもらい普段から抱き抱えているコアラニャンを
居城である牙牢城へ戻って貰った。
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空は青からオレンジへと変わる頃、執務室へコアラニャンは訪れた。
「!?」
「アレ?コアラニャン どうした どろ?」
執務室では当代エンマに王位を追認され、
妖魔界の統治者として執務をこなす蛇王・カイラの元へ
不安げな表情を浮べながらコアラニャンが訪れると
普段から持ち歩いている妖怪パッドを見せた。
『ねぇ 大和知らない?』
「え?一緒じゃない どろ?」
コアラニャン同様に大和の“お世話係”ではあるものの
乳児期に比べ、お世話に必要性が無い今は主に城の雑務や
カイラの執務も手伝いをしていた。
ーじゃあ何処に?
全員が同じ疑問を抱いていると突如として現れた携帯雲外鏡から
『うわああああぁ』と言う絶叫の声と共に大和が現れると同時に何かに躓き
勢い良く転倒すると辺りに豆が飛び散った。
「あぁ~もう何してる どろ」
呆れた表情を浮かべた どんどろは周囲に散らばった豆を掻き集めると
同時に起き上がった大和へバツの悪そうな表情を浮かべながら
『ちょっと鬼退治』と口にした大和へ全員は驚愕の表情を浮かべた。
「節分の鬼は病気や厄災とか悪い事を言うどろ」
どんどろの説明に驚愕の表情を浮かべる大和へ更に続けた。
「節分に豆を撒くのは『魔を滅する』って言う語呂から来てるどろ」
他にも五穀と言われる米・麦・アワ・キビ・。豆の中で
投げ付けると痛いからと言われであった。
「もともと散供って言って穀物をばらまく事で御祓いやお清めするって言う考えがあったどろ」
今より食べ物食べる物が乏しい時代には五穀には霊力があり、
撒いた場所は清められ聖域となると言う考えから
豆撒きには『鬼を打ち払う』と意味と『豆を投げ与えて恵み、静まってもらう』と言う
二つの意味が込められていた。
大和が戻って来た事で部屋へ戻ると
どんどろ は江戸時代末期の地方で商売繁盛を祈願して始まったとされ、
恵方を向いて丸かじりして無言で食べ切れば、願いが叶うと言われる恵方巻を差し出した。
「大和・桜はいコレ」
どんどろ からお寿司の巻物を渡され
大和と桜オロチは笑みを浮かべる受け取るもコアラニャンは疑問を抱いき
どんどろ へ声を掛けると
「コアラニャンはコレ海鮮恵方巻」
渡された恵方巻に目を輝かせると
大和は『恵方巻って?』と問い掛けた。
「縁を切ること無く(商売繁盛の)運を一気に頂く縁起物どろ」
「へぇ~」
「因みに具財は七福神にちなんで7種類の具を使うのがお約束どろよ」
どんどろ の言われた様に無言で食べ切る事に四苦八苦しているも当の どんどろは
一口で食べ切った事に唖然としていた。
恵方巻を食べ終わるも何処か食べたり無いと思っている事に
どんどろ 口を開いた。
「食べたり無いなら蕎麦貰ってくるどろ」
「えっ?蕎麦?」
蕎麦と聞いて大和は疑問を抱いた。
蕎麦と言えば大和が思い描くのは『年越し蕎麦』であり、
『なんで蕎麦?』と問い掛ければ どんどろは大和の疑問に口を開いた。
「江戸時代に『年越しの日』でもあった節分には蕎麦がよく食べられて
大店(おおだな)等で使用人に蕎麦が振舞われる事があったどろ」
「へぇ~そうなんだ」
「これが年越し蕎麦の始まりで
当時は『年取り蕎麦』・『節分蕎麦』と呼ばれていたどろ」
年越し蕎麦の以外なルーツを知った大和は納得した。
夜も深まった時間。
カイラは私室で本を本で居ると突如おして聞こえたドアをノックする音に
『入れ』と言うとお盆に湯飲みを持った“どんどろ”が姿を現した。
「どんどろか・・・どうした?」
「はい・・・これカイラの」
カイラが視線を向けると其処には大和が何処から持って来て
食べ切れなかった豆を消毒の意味を込めて再度香ばしく炒り直して
熱い湯を注いで『福茶』にした物と小皿には塩昆布と梅干が置かれていた。
「カイラは年取り豆食べるの大変だから調理場に言ってもう一回炒り直して貰って
『福茶』にしたどろ」
確かに大和とは違い100年以上の歳月を生きているカイラは食べる豆の数も
尋常でない為に食べたのと同じ効果とされている『福茶』を薦めた。
カイラは自身に気を使ってくれた どんどろへ『悪いな』と礼を言いながら
湯飲みを受け取った。
「人間界で今日が節分と言う事は明日は春分・・・暦の上では もう春か」
「そうどろね」
新年を迎える為に病魔や厄災を鬼に見立て、
拾い忘れて芽が出ると縁起が悪いとされた事から
豆は火が通った物を用意し、豆まき開始までは神棚にお供え霊力が宿った『福豆』を
撒く事に寄って病魔や厄災を払い新たなる一年ー春ーを迎える準備が整った
人間界へ思いを馳せた。