ふりむくな、ふりむくな、うしろには夢がない
2025年12月27日にモーニング娘。を卒業した北川莉央さんに届けたい言葉。
その言葉に出会ったのがProjectNyx第29回公演「宝島」。
紅日毬子さんが久々に主役を務める舞台。
土日が不自由になってしまったので平日問答無用で休みを取って昼の1公演だけの観劇。
会場は池袋シアターグリーン。
普通の演劇を多々観た劇場でアングラ界にこの人ありと知られた紅日毬子さんを観るというのが中々に感慨深いものがあります。
毬子さんの少年役、月蝕歌劇団などで何度か観てますがやっぱりいいですね。
怪しく妖しい役が誰よりもお似合いになる一方で、純真溌剌な真っ直ぐな少年も見事に演じ切る方。
おそらく毬子さんの中にそんな少年が息づいているんでしょうね。
この舞台「宝島」、あのスチーブンソンの小説をもとに寺山修司さんが子供向けの戯曲にしたのを宇野亜喜良さんが大人向けに仕立て直したものらしい。
なので劇中には寺山さんの短歌がたくさん出て来るし寺山さん自身も登場。
原典の世界とはいささか変わった世界になっていたようで。
「ようで」というのは、実はスチーブンソンの「宝島」を読んだことがないんですよね。
ひねた子供だったせいで、あの頃は名作というものに背を向けていたんです。
読むべきものは読むべき時に読んでおくものですね。
帰り道、あるお客さんがお連れの方に「いつになったら宝島に行くんだって、これ宝島の話なのって思った」と語ってました。
確かに島に行ってからの活劇譚はほんのちょっとだけでしたからね。
原作は金銀財宝を探す話ですが、この舞台で探すのは「自分にとっての宝とは何か」でした。
毬子さん演じるジム少年が見つけたのは「冒険する心」。
島に着くまで七つの海を越え七つの心に出会ったジム少年はこの先どんな冒険の旅に出たんでしょうね。
自分に刺さったのは航海学者ドン。
天才を称しながらまだ分からぬこと知らぬことがあることを素直に受け入れ、ピーターパンの子孫のピーターポンに弟子入りしたドンの生き様が耳順の身には染みた。
冒険は遠くの見知らぬ土地を巡るだけではない。
どんな鳥も想像力より高く飛べる鳥はいない
より深く知の世界を飛び回るることもまた冒険なんです。
いろんな役を演じる毬子さんの舞台を追うのも冒険。
劇場は冒険の場なんですね。
紅日毬子、次はどんな冒険に連れ出してくれるんだろう。
客席にはプレゼントとして寺山さんの言葉を記した2Bの鉛筆と宇野亜喜良さんのイラストをまとった消しゴムが隠されていました。
自分の鉛筆には
私は私自身の記録である
とありました。
不完全な死体として生まれて完全な死体となる日が近づきつつある身には深く響いて来る言葉です。
1983年5月4日、寺山さんが亡くなった時に志学だった自分は寺山修司という存在を知りませんでした。
それが今では寺山作品のない人生など考えられないことに。
出会いに遅すぎることはないんですね。
でも、中学生の頃に寺山修司に出会っていたら今頃どんな人生だったんだろう。
紅日毬子さんに出会わせてくれた月蝕歌劇団、高取英さんに、月蝕歌劇団に出会わせてくれた藍山みなみさんには本当に感謝しかありません。
