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「今まで敦賀さんといえば好青年の役が多かったと思うのですが、ダークムーンではこれまでにない表情をたくさん観せてくださいましたね。 特に、ダークな嘉月の表情はすごくかっこよくて震えましたv」
インタビュアーの言葉から本格的な取材が始まる。
「ありがとうございます。 そう言っていただけると演じた甲斐がありました。」
「すんなりと役柄に入っていけましたか?」
「いえ、結構苦しんだところもあって、それだけに思い入れの深い役になりましたね。」
「間違いなく、敦賀さんの代表作になりますよね。」
「嬉しい褒め言葉ですね。」
「ある調査では、月籠りを知らない世代だけではなく、観ていた世代の方たちも、嘉月と言ったら敦賀蓮という意見が多いんですよ。」
「それは光栄ですね。 監督も我々も打倒月籠りで頑張ってきましたから。」




「嘉月という人物は、悪い男と言えば、そうなんですけど、家族を殺されてっていう背景を考えると、単純に悪いって断罪できないところがありますよね。」
「そうですね。 復讐せずにはいられなかったという背景や、美月への想いとか、同情すべき点は多々ありますね。」
「もし、嘉月ではなく、敦賀さんだったらってお聞きしてもいいですか?」
「俺ですか? 難しいなあ。 そうですねえ。 ストーリーに異を唱えるつもりではないんですが、俺自身は復讐を掲げれば何をしてもいいとは思えないんです。 そういう立場になってみないとわからないことではあるんですが、復讐に囚われて人生を終わらせてしまうよりは、前向きに生きてほしいと思いますね。 もし、殺された家族の立場だったら、たった一度の人生、大切にのびのびと生きてほしいと思うんじゃないかと。」
蓮は嘉月の立場を考えながら、キョーコを見つめて語っていた。
「敦賀さんって、ポジティブなんですね。」
インタビュアーが感心したように頷いた。
「あはは。 『悪(ワル)』から遠ざかってますかね?」
「いえいえ、敦賀さん自身のお考えがうかがえて、ありがたいです。」