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「さて、京子さんはドラマ初出演と伺っていますが、初めてが悪役ということで抵抗はなかったですか?」
「実はすごくありました。 お受けしたときはお嬢様の役っていうのでとてもうれしかったんです。 でも原作をお借りして読んだ途端、お断りしようかな、なんて。」
えへへ、と気まずそうにキョーコが笑う。
「そうそう、事務所に響き渡る声で泣き叫んでたよね。」
「そんなことしてません。」
「してたしてた。 俺びっくりして壁にぶつかったから。」


蓮とキョーコのやりとりにインタビュアーがすかさず突っ込む。
「敦賀さんと京子さんは共演以前から交流があったんですね?」
「ええ。マネージャーが倒れた時に代理をしてもらったこともありましたからね。」
「その節は、まったくお役に立てなくて、大変ご迷惑をおかけいたしました。」
「いえいえ、なかなか楽しかったですよ?」
「もう。 嫌味ですよ。 すごく反省しているんですから!!」
微笑ましそうに二人を見ているインタビュアーに気づき、キョーコはふくれっ面をひっこめた。


「京子さんと話している敦賀さんは楽しそうですねえ。 なんだか妬けちゃいますね。」
キョーコはあたふたと否定するが、蓮はさらに楽しそうに声をあげて笑った。
「楽しいですよ。 人の言うことはすぐ信じるくせに、褒め言葉はなかなか信じてくれないんですよ。 だからついついからかったりして遊んでます。」
「むう。 ほらね、やっぱり敦賀さんて悪い男(ひと)だと思いませんか?」
キョーコは味方を求めて、インタビュアーに向いた。


「うーん。 悪い男(ひと)っていうより人が悪いって感じですかね。 でも、京子さんを可愛がってるからっていうのが正解かもしれませんよ。」
「ほら、俺は悪い男じゃないってさ。」
「納得いきませんー。」