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「二人ともお疲れ様。 よかったよ。」
社が二人に水の入ったペットボトルを渡しながらねぎらう。
「そうでしょうか?」
「うん? 何か不満?」
納得いかないといった感じのキョーコに、蓮が攻める。


「あのやりとりのどこが仲好しなのかなって思いまして。」
「うん? 仲好しに見えたよ。 いつもの二人。」
社の発言に、キョーコが愕然とする。


「なんでそういう顔するかな? 俺と仲好しじゃ嫌なのか。」
あからさまに不機嫌になった蓮に、キョーコが言い訳を始める。
「そうじゃなくて、先輩後輩としての立場の違いっていうか、私なれなれし過ぎませんでしたか? かなり生意気だったんじゃないかと・・・。」
「いつもの感じだから、それでいいんだよ。 ゲラができたら、見せてもらえるから、椹さんたちにも確認してもらって、問題があるようなら直してもらえばいいんじゃないかな。」


「でも、『悪(ワル)』ってタイトルにお話が沿ってなかった気がするんですけど・・・。」
「まあ、ああいうのは、キャッチっていうか人目を惹くための冠だからね。 大丈夫。」
ここで、社は周りを見回し、声を格段に落とした。
「あまり、『悪(ワル)』で話を引っ張られると、今は困るから。」
カイン・ヒールの設定を思い出してやっと納得した顔のキョーコに、社は普通の声に戻して続けた。
「だからあれくらいでちょうどいいんだよ。」


「じゃあ、仲好し三人で食事に行きましょうか。」
「おや、蓮くんから食事に誘われるとは珍しい。」
「仲好しじゃないですってばー。」
社とキョーコの突っ込みを待たずに蓮は歩き出した。


――とりあえず、仲好しくらいは許容してほしいんだけどなあ。
こんな程度で凹む、相変わらずのヘタ蓮なのでありました。

                      FIN