「敦賀さん? 私、タクシーで帰りますから、ゆっくりお休みになってくださいね。 一晩休んだらきっと正気に戻られると思いますから。」
人格が変わったんじゃないかと思うほどの暴走ぶりに、私はそっと立ち上がったのだったが・・・。


「今日から、最上さんの家はここなんだよ?」
「は?」
「お互い別れがたいって話だったよね。」
「え、話の流れ的にはそうですけど・・・。」
「だから、これからもずっと一緒にいたいねってことだよね?」
「それはそうなんですけど・・・。」
何かが違う気がするのは、私の気のせい?
恋愛ってこんなに疲れるものだったっけ?
「じゃあ、もう、帰れないよね? なにしろ君は俺に捕まっているんだから?」


この人に勝とうと思ったことが、そもそもの間違いだったのかもしれない。




こうして、彼女は永遠に彼に囚われることになってしまったけれど。
とっても幸せに暮らしましたとさ。

                             FIN


すみません。 恋愛を犯罪に例えるなんてとお叱りのむきもあるかもしれないのですけれど、ちょっと使ってみたかっただけなんです。 不快になった方がみえたら、本当に申し訳ありません。


ストックホルム症候群とは?


1973年、ストックホルムの銀行を強盗が襲い、犯人は数人の人質をとって立てこもった。警官隊と何度も衝突をくり返し、人質が解放されたのは、事件発生から1週間後。
しかし、人質を解放した後、事件関係者は不思議なことに気づく。当然、犯人を憎むはずの人質が、口々に犯人をかばうような証言をするのだ。それだけではなく、「感謝されるはずの」警察を、侮辱するようなことさえ口にする。
そのうえ、事件が解決した後、人質の1人であった女性が、なんと、犯人グループの一人と結婚してしまう。これが、最初に有名になった「ストックホルム症候群」で、この症候群は、この事件から名付けられた。