しまった!と思った瞬間、

敦賀さんの顔がゆっくりと笑み崩れていく。

「そうなんだ。 俺が犯人なんだ。 うん、うん。 いいよ、それで。」
「あ、あの、敦賀さん? えっと、物の例えでして、あの、そんな・・・」

敦賀さんが近付いてきて、そっと私を抱きしめるのがスローモーションみたいに見えた。


「こうされるの、嫌?」
優しい声とぬくもりに、嫌なんて言えるはずがない。
ふるふると頭を横に振ると、
「キスしても、いい?」
そんなこと、訊かないで。
私は敦賀さんに顔を見られないように、しがみついて、さらにふるふると頭を横に振った。

それなのに・・・。

敦賀さんは、少し距離をとると、私の顔に顔を近づけてきて・・・。


「あ、あの! ・・・初心者なので、お手柔らかにお願いします。」
「大丈夫。 恋愛初心者なのは俺も一緒だから。」

うそつき、という私の言葉は、敦賀さんの口の中に消えていった。
甘いくちづけを受けながら、そういえば敦賀さんって本当に恋愛初心者なんだったわ、と一瞬坊の時の事を思ったが、徐々に深くなるくちづけに、何も考えられなくなっていく。


意識を失う寸前までいって、やっと敦賀さんが離れてくれた。
私は大きく深呼吸を繰り返してから、叫んだ。
「お手柔らかにって言ったのにーー!!」
「うん。 だからキスしかしてないでしょ。」
あまりな発言に二の句がつげなくて、赤くなったり青くなったりしながら、金魚のようにパクパクと口を動かすしかできなかった。


そのすきに、敦賀さんの頭の中では、勝手な予定が立てられていたようで。
「今週中に社長に話して、ラブミー部の卒業式をしてもらおう。 来週にならないと時間が取れないから、本格的な引っ越しはその時にしよう。 俺も一緒にだるまやさんにあいさつに行くから。 クローゼットはしばらく客間のを使って。 いろいろ揃えなきゃいけないものがあるなあ。」


スピード展開についていけない。