そんな事を思っていたら、人にぶつかりそうになって抱きとめられた。

え?抱きとめられた?

「危ないよ、考え事しながら歩くと。」

振り仰ぐと神々スマイルが降ってきた。

意識が遠のきそうになり、あわてて離れると、嘘吐き紳士スマイルに変わってた。

つくづく器用な人よね、この人。

「すみません、敦賀さん。今日はこちらでお仕事ですか?」

「うん、今終わったとこ。最上さんは?」

「はい、私もバラエティのお仕事が終わったところなんです。」

「じゃあ、送るよ。」

「いえ、そんな、大丈夫ですから」

「どうせ事務所に戻るんでしょ。行くとこ一緒なんだから素直に送られなさい。」

社さんは今は別の場所へ打ち合わせに行っているらしく、

私は助手席に座らされた。

「で、何を考えてたの?さっき。」

・・・敦賀さんだもの、いいか。

「さっき、ビーグルと一緒の仕事だったんです」

敦賀さんが顔色を変えた。

「何かされた!?」

「いえ、大丈夫です。もうあんなことしないと思うので。」

「近づかないように言ったのに。」

「ヤツの中では期間限定だったみたいです。敦賀さんには会いたくないみたいですけどね。」

「でも、何かあったんだろ。」

「・・・訂正してくれたんです。元の石の持ち主・・・コーンは死んでなかったって。考えられないくらいに変貌していたけど、って。まるで会った事があるみたいな言い方。」

急ブレーキを掛けて、車が停まった。

「どうしたんですか?」

「い、いや。あんまり意外で。」

「そうですよね。魔界人が妖精と出会うなんてありえません!!」

「そ、う、だね・・・」

「ほんとにわけわかんないことばっかり言うんですもの。」

「それで、アイツの事を考えてたの?」

「いえ、コーンの事を。・・・もしアイツの言ったように、コーンがどんなに変わってしまっていても、逢えるならうれしいなって。私に出来る事があれば、何でもしてあげたいなって・・・」

答えながら敦賀さんを見ると、ハンドルに突っ伏していた。

「つ、敦賀さん、具合でも悪いですか?」

「いや、ちょっと動揺しただけだから、大丈夫。さ、行こうか。」

動揺って・・・やっぱり、この人も謎だわ。

     *

もう、本当に可愛すぎだ。

ふいにあんな事言われたからめちゃくちゃうれしくって、気持ちの昂りが制御できなかった。

車内が暗くてよかった。 顔が赤くなってるのが見られなくて。

危ない、危ない。 彼女はまだ俺がコーンだとは気付いていないんだから。

でも、アイツは気付いたんだよな。 一体どういう奴なのか。

どうやら、最上さんの言うように魔界人ではないにしろ、何かの力を持ってる奴らしいし。

アイツからばれる前に、自分から正直に言った方がいいんだろうか。

それとも、アイツを叩き潰しておくべきか? 

もう二度と最上さんに近寄れない程・・・・。


★★★★★


今回はラストちょっと黒い蓮にしてみました。

神に逆らってでもって、決めたんだろーって常々思う次第です。