<オルセー美術館>モネの名画を切り裂き逃走 パリ

10月8日18時11分配信 毎日新聞


 【パリ福井聡】パリ・セーヌ左岸にあるオルセー美術館は7日、何者かが6日深夜に侵入し、1階に展示されているフランス印象派の代表的画家、クロード・モネの名画「アルジャントゥイユの橋」(1874年作、60.5×80センチ)を傷つけたと発表した。被疑者は逃走し、検挙されていない。絵は少なくとも約10センチにわたって切り裂かれたという。
 フランスでは最近美術館への侵入被害が相次いでおり、アルバネル文化相は不法侵入者に対する刑罰強化を検討する考えを明らかにした。
 パリでは6日夜、音楽や演劇が夜通し続く「白夜祭」が開かれ、推定150万人が繰り出した。被疑者は酔った勢いで閉館中のオルセーに侵入したとみられている。


こちらは、10月8日付けのニュースです。

モネは私の大好きなフランスの画家の一人でもあるので、このニュースはショックでした。

傷つけられてしまった『アルジャントゥイユの橋』1874年 パリ オルセー美術館蔵(『Le pont d'Argenteuil』 1874 60×80 Paris, Musée d'Orsay)が、この絵です。



『Le pont d'Argenteuil』 1874 60×80 Paris, Musée d'Orsay


ここで、この絵のことで私が知っている範囲で少しお話をさせてくださいひらめき電球

絵のタイトルにもなっているアルジャントゥイユという場所は、パリのサン・バザール駅から10kmしか離れていないセーヌ右岸に位置します。

モネは、絵を制作する際たえず住む所を変えますが、その中でも最も長い6年間滞在していた場所です。

その分、モネ自身の思い入れも強く、モネ自身の表現したいモティーフが多くあった場所だったのではないかと思います。


後に、この6年間を【モネのアルジャントゥイユ時代】と呼び、印象派の誕生とも言われる「光と水」を鮮やかな色彩で描くモネ独特のタッチを生み出すきっかけを与えてくれた場所でもあります。


モネは、アルジャントゥイユ時代にこの橋の絵を何点か描きますが、その中でもこの作品は、「空と雲」「光と光の反射した水面」を見事に鮮やかな色彩で描いていて、私も一番好きな作品だったのです。


そのため、今回のこのニュースのショックも大きかったというわけです。。。しょぼん


そして、この『アルジャントゥイユの橋』という作品に描かれている【橋】というモティーフが、実は、「日本版画」との【架け橋】にもなっているという点においても、この作品を好きな理由です。


このアルジャントゥイユの【橋】を描いた何点かの作品は、その部分図的な性格、手前左のボートの裁断の仕方、橋の図版的な特徴が、類似の主題を描いた「日本版画」を連想させたように、ここでも橋の構造は平面的な構図の中に立体的な要素として取り入れられています。


歌川(安藤)広重、葛飾北斎、喜多川歌麿などの日本浮世絵版画は、通常の視覚習慣とは無縁のものです。


つまり、浮世絵の平面性・大胆な視角・部分的な構図・日常的な主題・同一のモティーフを連作する着想・そして彼らが追求する革新が生き生きと浮世絵において表現されているということへの衝撃が、今日の印象派主義のすべての画家を勇気づけ、(当時は新しい絵画様式で批判されることもあった)日本浮世絵版画は、印象派主義生成に密接に関わっているということです。


そういう話を知り、私も印象派の絵をますます親しみを持って楽しむことができましたし、何より肉眼ではとらえることのできない「光」や色を持たない限りなく透明に近い「水」というものを、ときには淡いピンクや紫、深い緑や群青などを巧みに使い、ここまで鮮やかな色彩で表現できることに、感動ですキラキラ


モネは、「枠にとらわれない大胆な発想」と「肉眼ではとらえることのできない地球の生み出した自然への鋭い観察力」と「長年の絶え間ない努力」、そして「不可能も可能にしてしまう人間の無限の可能性」を感じさせてくれる私の大好きな画家の一人なのですキラキラ


修復作業が、無事に終えられることを願ってます流れ星