「俺らの声なら、ほとんどの女は落ちるだろ?」
「そうですね。耳元囁けば、すぐベッド行けますね。」
「それは、石動さんだからじゃないですか?」
「ふふっ、大和。強気な態度の男が嫌いな女はいないんだよ。」
「違いねぇ!ベッドに押し倒せばいい。ホテルの部屋に入ってヤらねぇ女なら、最初から来ねぇ。」
「お互いどちらかの家でも同じだよ。」
「あぁ、女の"嫌"は"もっと"って意味だからな。」
「日下部さん、本当に夜になると楽しそうですね。」
「色々溜まってるんだよ、発散しねぇと仕事になんねぇ。男を攻める仕事があった日はなおさらな。」
「僕が可愛い声で受けたじゃないですか。」
「石動、確かにお前は最高だ。俺も一瞬クラッと来た。が、男じゃすぐ萎える。」
『酷いっ、あんなに俺のこと激しく抱いたくせにっ!堂本さんのバカッ!!』
「石動、てめぇ仕事のキャラ持ち込むんじゃねぇーよっ!!」
テーブルに飲んでいたグラスを叩きつけて、叫ぶ日下部さん。
男3人。女と仕事の話で盛り上がる。
って言っても、ほぼ下半身の話になるんだけど。
俺の名前は、堺大和。25歳。
声を扱う仕事に就いて5年目の新人。
やっとのことで掴んだ、アニメの主役が見事当たり、少しずつではあるが名前が認知されるようになった。
けどまだ卵の殻付きヒヨコの俺は未だに監督に怒鳴られる。
今日の失敗は次回に持ち越さないのは当然で、回を重ねる毎に監督からの言葉が叱咤から無言になってることに気付き、最低ラインは超えたなと思っている。けど、まだまだ駆け出しのガキ。
今以上に成長しないとと、自分の未熟さをひしひしと感じていた。
そんな時、憧れの日下部さんと共演出来た日に声をかけてもらって、興奮しながら小走りで付いていって、今いる店に連れてきた頂いた。
あの時は、すごく緊張して話しの内容なんて頭に入ってこないし、何をしゃべったのか覚えていない。
慣れとは恐ろしいもので、幸運にも日下部さんに気に入ってもらえて。
ちょくちょく飲みに誘われては、奢ってくださる。これはもう日下部信者って言われてもいいくらいだ。
日下部晃。38歳
日下部さんは、この業界の大先輩。物心が付いたころに見ていたアニメに必ず出演しているという憧れの人だ。
その人気は衰えることを知らず、演じる全ての人物を自分のものにしている。
それは当たり前のことなんだけど、人物の呼吸をも合わせているのを間近に見て、感情を声に表すということを理解し始めた俺には、まだ辿り着けない遠い道のりだ。
ベリーショート、太めの黒縁メガネに切れ長の目。目尻には笑い皺がある。
身長は俺より低くて、えっと・・・ウィ○によると178。
40歳前にしても衰えどころか、俺より若いくらい。さすが、ジム週3回通って鍛えている身体だ。
だってさ、俺よりもいい身体なんだよ・・・・俺も鍛えようかな。
豪快に笑い、怒り、泣く。そんな日下部さんのことは告白したい程、大好きだったりする。
・・・・・・けど、こんなに女にだらしがないと分かったときはショックだったんだけど。
石動剛。28歳。
イケメン、そして飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍中。
俺はというと、運よくヒット作に恵まれて少しずつ仕事が増え始めた頃、そんなときに、日下部さんから飲み会のお誘いがありそこで知り合ったのが石動さんだ。
現場で石動さんのイケメンぶりを知っていた俺は、初めて会ったとき、この世界でトップクラスのイケメンに口をあんぐりと開けるだけだった。
街を歩けば、女子の視線はすべて石動さんに集中する。
身長も188と高く、普段着がシャツとジーパン。
ネクタイや蝶ネクタイをつけて、ジャケットを羽織り、颯爽と歩く姿はまさにモデルで、無駄なものがひとつも無いとはこのことかと思ったほどだ。
雑誌の表紙を何回も飾り、その笑みに失神する女子続出。
これで声もいいなんて、神様は意地悪だ。
この顔で攻めも受けもするんだから、腐女子の人気はもちろん、一般女性にも人気がある。
以前ドラマCDで共演させて頂いた時、この人にだったら抱かれてもいいとマジで思ったこともあったり
・・・・・いや、でも俺はそう言う趣味はなく・・・って、落ち着け俺っ!!
優しく柔らかい声かと思いきや、低音でエロい。
ただでさえエロい声が、マイクの前に立つと凄まじい破壊力のエロ声となる。
かと思いきや、少年声もお手の物でツンデレや気の弱い声なんて、鼻血が出るほどで。
男の俺でさえそうだから、女子なんてもう即死状態じゃないかと思う。
近寄り難い雰囲気と言動に緊張しながら会話すると、さすが日下部さんの飲み友達。
会話の内容は、下半身の話しと女の話。
そのギャップに緊張がとれ、しゃべっているうちに現在の関係になる。