一、
夜泉揺れる此ノ夏の宵
闇陰に噎び泣く声
紅く滲む血ノ花の色
怨念晴らしの涙に染まる
月 翳り消え出でる
髪 揺れし残影
障子に 憂し忍ぶ影
蕭条の骸か
空蝉は朧気に
隠世へ捧ぐ
哀しい神子の嘆き
存在も忘れ
うな垂れゆく
柳葉の後ろ
転がり落ち
燃え塵
命祀る祠にそっと
祈り詠う白の花びら
心癒す誠の光輝
終の住処に木魂する風
二、
傷 痛み砕け逝く
炎に朽ちる霞
瘡疾うに剥がれ堕ち
静かなる御贄は
白々と明けてゆく
天上に昇り
跡形もないままに
終末へ急ぐ
名も無き身に
起きた悲哀劇
いつか記憶も
泡沫
影見辿る寄香の縁
幽ノ宮儚き宴
不知ノ森響き渡るは
匪に眠れし神子の叫びか
命祀る祠にそっと
祈り詠う白の花びら
心癒す誠の光輝
終の住処に木魂する風
※ルビ無し