一年前、2014年11月3日の今夜、僕はいつものように出張で、東京発新大阪行き、のぞみ号に乗っていた。列車は満席、網棚は楽しそうなお土産であふれていた。三連休最終日のその夜は、ちょうど関西方面への帰宅ラッシュに当たっていた。普段はぎりぎりでチケットを取る僕でさえ、その日は一週間前から座席指定を予約していたくらいだ。
東京駅の新幹線改札口では、家族連れやビジネスマンに隠れるようにして、静かに手を握り合う男女が、何組も見られた。欧米なら派手な抱擁や熱いくちづけを交わすところだけれど、日本人はそうじゃない。
30代半ばのカジュアルな服装をした男性が、別れ際に下を向き、軽く若い彼女を抱き寄せてから、足早に改札をすり抜けて行った。彼はすぐ人混みに紛れてしまったが、彼女はその方向を向いたまま動かなかった。
二人はどんな関係なのかわからないけど、あのふたりにとって今夜のさよならは、派手じゃなくてもきっとよかった、次につなげる想いを残したんだ、そう自分に言い聞かせて、僕も列車へと向かった。
別れ際、なんて本当は誰も経験したくない。でも、その時どんな風に振る舞うのか、何を言うのか、未来はどうあるべきなのか、ちゃんと考えることで人は優しくなれるのだろう。僕は、それ以来、ずっとそんなことを考えている。