西日本新聞   1/12

 

新型コロナウイルスのワクチンを接種していない人が、

職場などで不当な扱いを受ける例が目立っている。

 

体質に不安があって控えていても解雇されたり、

打つことを無理強いされたりするケースも。

 

3回目の接種が始まる中、

国は引き続き「強制ではない」と周知するが、

差別や偏見は地域や家庭にまで広がっているようだ。

 

【画像】打たないと夫から「出ていけ」 やまぬ不利益と差別  

 

福岡市内の会社に勤める30代男性は昨年末、解雇を告げられた。

 

測量機器の納入や運転の点検をする仕事。

顧客の事務所や機器を取り付けた現場に出向くことが多く、

「ワクチンを打ってないと行けないですよね」と社長に言われた。  

 

幼い頃から体が弱かった。

インフルエンザの予防接種では発熱や吐き気の症状が出た。

 

コロナワクチンを打った同僚には体調を崩した人も多く、

不安になって打つのを控えている。  

 

ワクチンについて最初に問われたのは昨年夏。

行動を共にしていた上司から「打つの?」と何度か聞かれた。

 

体質を説明し、理解されたと思っていた。  

ところが間もなく、未接種を理由に「もう現場に連れて行かない」と

言われた。取引先からも来ないよう求められたという。

 

「打たないと決めたんだから自分の責任」と突き放された。  

攻撃は続く。

 

「他の社員は副反応を知っていても受けた」

「打たないのは宗教上の理由か?」。

 

同僚が10人近くいる前で追及された。

仕事の担当を外され、社内清掃が中心に。

そして解雇を言い渡された。  

 

仕事にやりがいを感じているのに

「こんなので辞めさせられるなんて」。

 

解雇撤回を会社に求めている。

 

厚生労働省は、

薬や食べ物により呼吸困難などに陥るアナフィラキシー症状が

ある人は打つのを控え、

過去の予防接種で2日以内に発熱や発疹が出た人も

接種に注意が必要とする。

 

事業主に対し、未接種を理由にした解雇や退職勧奨、

いじめといった差別的な行為をしないよう求め、

強引な配置転換もハラスメントに当たる可能性があるとしている。  

 

それでも当事者は悲鳴を上げる。

昨年10月、日本弁護士連合会(東京)が同5月に続いて

実施したワクチンに関する「人権・差別問題ホットライン」には93件の相談があった。  

 

ある看護師は「『接種しないなら医療法人の方針で退職してもらう』と言われ、辞めた」。

 

同様の理由で退職した看護師が他にもいると語ったという。

 

障害者施設の従業員は「未接種の従業員の出社禁止、

配置転換が検討されている。妥当なのか」と疑問を寄せた。

 

ホットラインに参加した花輪仁士弁護士(山梨県)は

「接種が進むにつれ、打っていない人への差別が強まっていると感じた」と話す。

 

208件の相談があった昨年5月は医療従事者の訴えが中心だったが、10月はその他の労働者をはじめ、

学生や、ワクチンを巡る考え方の違いで離婚を考える夫婦の声も

あった。

 

温浴施設で店員から接種済みかどうか確認された客もいた。  

 

花輪弁護士は、労働者被害の代表例である解雇について

「ワクチンを打っていないことが理由なら基本的に不当解雇に当たる」と指摘する。

 

事業主が業績不振など別の理由を装う例もあり、

相談を呼び掛けている。

 

未接種者を職場で周知するのも差別につながるとして

使用者に配慮を求める。

 

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接種の強要も依然としてある。

 

福岡県内の介護施設で働く40代女性は、体質の不安を上司に分かってもらえず悩んでいる。  

 

幼い頃に予防接種で呼吸困難になり、救急搬送された。

意識が遠のき、全身にじんましんが出た。

 

大人になってからも何度か服薬後に呼吸が苦しくなり、

けいれんやじんましんが出て救急搬送された。

この時「アナフィラキシー反応を起こした」と診断された。  

 

職場に説明してインフルエンザの予防接種は受けてこなかった。

 

ところがコロナワクチンの接種が始まると、

アレルギーの詳しい説明と、受けられないことを示す診断書の提出を求められた。

 

接種会場に行くよう命じられ、出向いて医師に相談したという。  

 

会議では自分を含む未接種者が名指しされ、

文書に名前を書かれていた。

 

接種を控える理由も繰り返し問われる。  

 

女性は訴える。「打ったら命にかかわるかもしれないのに。

接種できない人を攻撃するのは本当にやめてほしい」 

 

(編集委員・河野賢治)

記者ノート

 「なんで打たんの」「頭、おかしいんじゃない?」。

 

記事に登場する男性は新型コロナウイルスのワクチンを打っていないことで職場からこう責められていた。どんなにつらかっただろう。  

 

接種は本人の同意が原則。

 

ただ、2回受けた人は国の集計で約78%(昨年末、全人口比)に達し、受けていない人を「異質な存在」と見る傾向は強まっているようだ。

 

  そうやって職場や知人間、家庭で差別や偏見にさらされ、

言い返せる人がどれだけいるか。

 

「打たない権利」は残念ながら尊重されていないように思う。  

 

フランスの思想家ボルテールはかつて、

表現の自由を「私はあなたの意見に反対だが、

あなたがそれを主張する権利は命を懸けて守る」との言葉で

表したとされる。

 

同じようにワクチンを巡る考え方の違いも認め合いたい。

 

そんな懐の大きな社会こそ、暮らしやすいと思うのだが。

 

 (河野賢治)

 

 

 

 

bokeneko22 のブログさんより