ある休日。
妻
と二人で出かけようと家を出ました。
隣人の家の前を何軒か通り過ぎないとエレベーターや階段に辿り着けません。
すると一軒の家の玄関が開け放してありました。
夏の盛りだったので風通しでも良くしていたのでしょう。
思わず通り過ぎながら、見るともなしにその家の中に目が行ってしましました。
「こらっ、春介っ
」
妻に小声で怒られてしまいました。
だって・・・開いてたら何となく目が行ってしまいませんか・・・・?
エレベーターの中でお小言の続きをする妻。
「ダメでしょ。他人の家の中見たら!」
はあ、まあ、わかってはいますけど、つい・・・。
「中で殺人事件
が起こってて、犯人と目が遭ったらどうすんのよ
」

「それで、春介
と目が遭った犯人
が『み~た~な~』って包丁持って追っかけてきたらどうすんのよっ
」
・・・・・。
「走って逃げても、普段階段を使い慣れてない私達はエレベーターの手前の階段なんて忘れて通り過ぎちゃって、『しまった!!』と思った時にはエレベーターも全然違う階にいて、仕方なく行き止まりまで追い詰められたら、追いかけてくる殺人犯に立ち向かうしかないのよ
」
・・・・・・。
エレベーターを降りてもまだ妻はしゃべっています。
そして一階エントランスを歩きながら、妻は両手に架空の包丁を持ち、頭上に高く振りかざしながら
「で、とうとう・・・・
『あ”~~~~~~~』
って・・・・」
妻が にしおかすみこ
張りの叫び声を出した瞬間、
エントランスの死角から宅配業者
がふいに姿を現しました。
妻はよく歩きながら話をしているとのめり込んでしまうので、
人がいると
「し~~~
。」
と教えてあげるのが私の役割なのですが、
今回かなり突然だったので、間に合いませんでした。
焦った私は・・・
全く他人のフリをしてしまったのです。
私は
一人で絶叫している女とエレベーターに乗り合わせた不幸な住人
になってしまったのです。
だって、妻の にしおかすみこ
の絶叫は絶対に聞こえていますし、振りかざした見えない包丁も絶対に目撃されています。
もうフォローのしようがなかったんです。
パニックになった
私はどうしていいやらわからず、
一番マズイ行動を取ってしまいました。
その後駅までの道のり・・・・
妻に
「ひどいっ
一瞬で私のことを切り捨てた
。」
「腹黒すぎるっ
」
と散々ののしられました。
お願いだから、その妄想力は持ち出し厳禁にして頂きたい。