『公演を目指して9』
野田のオッちゃんは十一月の第四土曜の稽古が終わってから、
あまりにも僕とチカの演技が酷すぎるので、
落胆してバッカスさんを自分のうちに呼び、バッカスさん相手に愚痴っていた…。
野田のオッちゃんはたいして飲んでなかったが、
疲労気味で酔いが早く呂律が回らなかった。
「だっ駄目だ!あっあんな芝居じゃ金とっ取れねぇよ」
美佐子さんはビールをかたずけのほほん茶を出した。
「お、おい、まだ二本だけしか、飲んでねぇぞ!」と
野田のオッちゃんは喚(わめ)いた。
美佐子さんは野田のオッちゃんを睨(にら)み付け
「こののほほんを飲んでのほほんとさいん(しなさい)」
野田のオッちゃんは楯突いて~
「こんな状況でのほほんとしていられるかぁ!」
美穂ちゃんが近くにあった雑誌で
「このへたくそ演出!家でだけ威張んな!」そう言って
野田のオッちゃんの頭をボーンと叩いた。
野田のオッちゃんは「情げなぐなんなや」とシュンとなった。
それをバッカスさんが慰めた。
「ここは辛いけど、我慢するしかないんだよ」
「ああ~」と野田のオッちゃんは頷いた。
「うんうん分かるよ稽古場で耐えるしかなかったから、
ここしかストレス発散するとこ無いもな」と
野田のオッちゃんの肩を叩いた。
「グッスンありがとう俺の気持ち、やっぱりバッカスしか分かんねぇな…」
と野田のオッちゃんはバッカスさんの手を握り男泣きした。
イョーベンペンの浪花節の世界だ。
野田のオッちゃんはため息をついてのほほん茶を飲んで

「なあ~問題はリ・アクション(反応)なんだよな、
だけどあいつ等に、そしたな理屈振り回したって理解できねぇべす」
リ・アクション(反応)
なんか、よく知らないけどリアリズム演劇ではもっとも大切な要素らしい。
これはただ段取り通りセリフを喋るのではなく、
相手のセリフを良く聞き、セリフを返す。リアルな反応のことを言ってるらしい。
こんどはバッカスさんがビールをため息をついて飲んで、
「よく実験劇場の浅井先生が生きているとき。
僕たちの稽古がうまくいかない時、
夜の十二時近くまでスタニフ(演劇理論家スタニフラフスキー)がどうのこうのなどと
コンコンと説教されたことがあったな、
しかしアマでそんなことやったらボイコットされちまうぜ!」---続く
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