『オープニング4・バッカスさんの家で』
でも障害者だって、
職に就いてなくっても結婚生活ができ、
お互いの精神的支えになることが分かった。
バッカスさんのところで稽古しているとき、
こんな人たちが来たの。
その人たちは虹の掛け橋作業所の人たちで、
精神障害者で八巻忠男さんと留里子(るりこ)さんという夫婦だ。
夫、忠男さんは元プログラマー、
二百時間も超える残業をやり、それから失恋で統合失調症 (旧名・分裂病)になってしまったの。現在、無職。
妻、留里子さん元看護師さん、
深夜勤務の連続で心労と医療ミスが引き金で統合失調症になったの。
現在、無職。(激務で精神病になる人や自殺する人も多いが労災認定になることはまずない。)
でも二人とも明るくてとても精神病にはみえない。
「向精神薬(精神病の治療薬)を飲んでるんだ」と二人は言った。
収入は障害者年金、二人で十四万円と、生活保護をうけている、
それなのになんと子供までいるの。
「留里子ちゃんが子供が欲しい欲しいって言うもんで」
「でも私、気がかりがあったの」
「どちらも薬、飲んでいるからなあ」
「奇形児、できたらどうしょう」
「奇形児、できたら、できたで育てないと」
「気違い、になったらどうしょう」
「気違いも奇形児も一緒だ」
そう言い合って、二人は眠剤を飲んで寝る。
「留里子ちゃんからちよっかいをだすんだよな」
「忠男さんHしょう」
「ああ~またかよ、昨日したばかりじゃないか」
「やってやらないと、留里子ちゃん、泣いたり怒ったりとうるさいんだ、
でもあれは精神安定剤よりよく効くんだ。やってやると元気になるんだ。」
留里子さん十八時間、忠男さん十二時間
これは二人の睡眠時間だ普通の体の人と違って、
これくらい寝ないと、二人は身が持たない。
子供は現在一歳八ヵ月だ。午前中は保育所に預かってもらい、
生活保護を受けているので保育料は無料で。
午後からは作業所に連れてきて、
作業所のみんなが見てくれる。
ヤカンさんなんか抱っこしたりキスしたりもう夢中だそうだ。
あっ、子供の名前言うの忘れてたね。
リカちゃん人形のようなので梨花(リカ)ちゃん、
二人が梨の産地、宮城県利府町の出身だから、
そう名付けたらしいよ。
「今日の八巻さん夫婦を見て、チカはだいぶ元気づけられたな」
「いろんな状況の中で、みんなたくましく生きているんだね」
「チカだってカメレオンみたいに変化自在に生きていくさ」 ---オープニング完
※文中のきちがい奇形児の表現は差別的、意図はありません
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