一章のあらすじ

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<初顔合わせ3>


僕は普段こういう時は、手が震えるので格好だけやるが、

なぜかグラスを無意識のうちに上げてしまい、

野田のオッちゃんの股の上にビールを零してしまった。 

「ど!どっどうもすいません!」 


「いやイイんだ、ついレッツの障害のことを忘れてた~、

俺達も悪いんだ。

この通りGo君はとにかく手を浮かすと激しく震える

不随意(ふずいい)運動という障害があるんだ。不随意運動とは自分の意志と関係なく筋肉が動く運動なのだけれど---

あっ!今、気ずいたけど、こんなに低いテーブルでは

レッツ食べにくいだろう。

おい、美穂!介護の実習のつもりでレッツの口に食べさせてやってくれ」

僕はそんな恥ずかしいことなんか……と


   「いいですよ。僕だけカーベットにすわりますから」

バッカスさんもすまながり---

 「僕達も気がつかなかったなそんなことだったら

   キッチンのテーブルをかたずけておくんだったな。

なにしろキッチンのテーブルは長いこと作業テーブル代りだったから」 


  「おいバッカス喋ったついでにお前から自己紹介しろよ」 

「僕からか、照れるなあんまり自己紹介というのが好きじゃないんだ。

なぜかというと、僕は日陰ばかり歩いてきたから、自分を紹介したくないんだよ。」

と言うバッカスさんをあゆみちゃんが援護し、


「あらパパー!私とママを救ってくれたじゃない。

私たち家族の紹介になるけど、私とパパとは血がつながってないの」


奥さんが説明を加えて~「再婚したんです。私、浩子といます」

 「いろいろあったんだな浩子さんも僕らと同じ劇団員で

十五年前はテレビの昼のメロドラマにも出演してたんだぞ」と野田のオッちゃんが言い。 浩子さんが状況を語った

「私が実家のある仙台の精神病院に入院してね」

あゆみちゃんがみんなに料理を分けながら「私は母の実家に預けられて」


 野田のオッちゃんが海苔巻きのご飯粒を飛ばしながら 

「浩子さんが好きで好きでしょうがなった。バッカスは

劇団まで辞めて仙台に移り住み、エート何やったんだっけ」


バッカスさんが 「劇団にスカウトされる前やってたメッキエだよ。

来る日も来る日も鼻をつく酸に鼻腔(びくう)は痛めつけられ、

手は荒れ---そんな手を見てたら浩子さんやあゆみとダブって涙が出てきてね」 


「パパはね。でも日曜の度に精神病院などでパントマイムをやって

慰問したり私の住んでいる側の公園で

ピエロの格好でパントマイムを見せたりして、

私とだんだん仲良くなろうとしたんだよね」とあゆみちゃんは言った。


野田オッちゃんが誉めているのかけなしているのか~「頭脳的作戦だな」と言った。 「僕はもっと活動ができるようにメッキ会社を辞めて。

ストリップ劇場のサンドイッチマンをやったりキャバレーの呼び込みをやったり、

それにそのほうが金になったしね」とバッカスさんが語った。 


「いろいろ大変だったのよね」と浩子さんは言った。

バッカスさんは舌打ちをして…、

「それから僕は本格的に精神障害者のボランティア活動を姶めたんだ。

浩子さんに近づく切っ掛けになればと思って始めた活動だったけど。

世間は障害者のバリアフリーなんて言っているけど

精神障害者の存在さえわからない」


野田のオッちゃんが僕に言った。

 「レッツの『血と涙も流しても』という詞の中で『差別』という言葉をつかっていたが、そんな言葉で言い切れるもんかなぁ?

俺は身体障害者より

知的障害者や精神障害者のほうが

社会的差別を受けているような気がするんだけどけどなぁ」


美穂ちゃんが僕に加勢して。

「でも差別ではないけどさっきの乾杯のようにGo君みたいな

障害に誰も気がつかなかったでしょう。

そういった一般人の常識で考えるところがあるみたい」


バッカスさんも我、意を得たのか……

 「なるほど~無意識の差別か~?

僕にもあるんだ。俳優というのはその人がもっている持ち味

例えば非常に美人なら、舞台に立つだけやカメラに写るだけで、

華やいだ雰囲気をつくりだしたりするもんだ。

演技以前の本人の持味というものが大切で

僕はこのチンチクリンの体が武器だ---

今テレビで放映されている

『墓場のアンドロイド』にこんな抗議がくるんだ。

本人は同情のつもりかも知れんが


『障害者をさらしものにするな』ってねー‐!」

(実際、こびとプロレス にそのような抗議があった。)

「ミゼットマニア」 ---次に続く

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