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<育美ちゃん12>


「私もう指導員、辞めようと思うの。

私、別に障害者がどうのこうと考えてる訳じゃなくって、

訓大を終わって。職員の採用試験にパスし、

公務員で安定しているから入っただけで、

別にそれほど熱意があるわけじゃないの」


 しばらく沈黙がつづいた。どこかで力ッコーの鳴き声が聞こえる。

それくらいここは森に近い、先生たちはため息をついた。

 鹿沼先生が話を切り出した

「都花ちゃんが『高瀬先生はなぜあんなに育美ちゃんに厳(きび)しいの』って

手話で私に訊ねたの、

手話通訳士は指導員には干渉してはいけないので答えなかったけど、

私自身が見ていてもちょっと異常だったわ」

  「先生!訓練校は養護学校とは違うんですよ。

育美がそのことを自覚しないで

いつまでもチンタラやっているので喝をいれたんです」


 阿相先生が眉間に皺(しわ)をつくりまぶたをピクピクさせ

「私のとこの糠田や悦子ちゃんは

以前の職場でトラウマ(精神的傷)を抱えているので

技術の習得以前の生活指導---いや精神的リハビリから始めなければならいのよ」 


「先生!精神的傷は私にもあるわ」そして高瀬先生はシャツの袖を捲って手首を見せた。みんなヒィ~と叫んだ!

 「そう私は異常でサドなの」うすら笑いしポットリと涙を流した。

「こういうの自傷って言うんですってね。もう疲れたわ」

「工夫させようと躍起になれば、工夫しないで同じ過ちを繰り返すし

  不自由なのはわかります!

イヤわからないから---自分の筋を切ってエエイと手首に傷つけたけど---恐くて深く

傷つけられなかった。

そして、傷つけると何故かスッキリするのでくせになって---」---次に続く

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