<育美ちゃん7>
『居酒屋いずぬま中高年会議』
場面は変わって---
野田のオッちゃんと、僕達の隣のへやの伊豆野のオッちゃん(福祉機器科・脳出血による左片麻痺)それから三品さんと三人は
育美ちゃんの婆ちゃんが経営する
仙台の小松島の『いずぬま』っていう居酒屋を訪れた。
婆ちゃんは伊豆野のオッちゃんの出身地、
築館の近くの若柳町畑岡の出身で。
その畑岡の近くに伊豆沼 という白鳥がたくさん飛来する沼があるんだって。
それにちなんで『いずぬま』って命名したんそうだ。
この店は定食屋も兼ねていて薬科大学などが近く
むしろ定食部門のほうが繁盛していて、
昼は育美ちゃんのお母さんが定食部門をやり、
夜の八時くらいから居酒屋部門を婆ちゃんがやる。
内装は田舎の百姓家のようになっているらしい。
育美ちゃんもお店に出てきて、三人にお酌した。
育美ちゃんの婆ちゃんは育美ちゃんに似ず、
あき竹城という女優さんを知っているますね。
そんなガラガラした婆ちゃんで、もっともあき竹城より
年食った七十だ。
「この度はどうも孫がお世話なりすた。これはわだすがらのお礼です」って
婆ちゃんは鰹コクをサービスした。 それは煮込んであってとろけるようだって、
後で野田のオッちゃんは僕に語ってくれた。
野田のオッちゃんがフッとこんなことをもらしたそうだ。
「俺はもう疲れたよ勉強以外で煩(わずら)わしいことが多くって。
若い奴のために俺達年輩が張り合わなければ
誰がやるって喧嘩ばかりしてきたけど
もう疲れた疲れた
---俺がこのくらいストレスがたまっているんだから
育美ちゃんなんか大変だったろう」
育美ちゃんは 「うん発狂寸前だった」と、
三品さんが育美ちゃんに酌してもらいながら
「ヤカンにいつも怒鳴られていたからご飯半分しか食べなかったものね」と~ 婆ちゃんが煮込みを小鉢に取り分けながら…
「だがら心配して訓練校辞めがしたの」
野田のオッちゃんも
「俺、近いうちに寮を出るかと思ってんだ」と
ボソッと言った。
伊豆野のオッちゃんが地酒をグビッと飲んで…
「オメエ出たら舎監の奴ら喜ぶべ」 とひゃかした。---次に続く