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<十八の旅立ち9>


 「ちょっとちょっと待ってくださ~い!まだまだあーるんです!」

佐倉先生は老眼鏡をあげて「ハイ、何ですか?」と興奮気味の一枝姉御に訊(き)いた。

 「ヤカンあっ!間違いフウ~山家舎監さんは、あたいと同じアパレル科の秋田の聾唖(ろうあ)の都花(みやか)ちゃんが山家さんにこんなことを言われたんだって『さすが雄勝(おかち)町のミス小町、なんか都花を見っといつも幸(すあわ)せな気分になる』ーって」

またまたずり落ちた眼鏡をもちあげ

「いまあなたの話を聞くと女性として褒めたたえている。女としてみれば嬉しい言葉じゃないですか・?」

唇をラッパ型にして

「ちょっとちょっと先生最後まで聞いてくださーい!」

「ハイ、早く発言してくださいな、私はこれから県庁に行く用事があるんですから手短に要領よく発言してください」

軽度の脳性麻痺の一枝姉御は、早口で喋れないから、一語一語丁寧に喋るのだ。

とかく軽度の障害者は軽く見られせかされることが多々ある。

 ムッスとした顔をして

「ここまでは、手話クラブの仲間が手話通訳してたものと山家さんもおもっていたんです。都花ちゃんは魔ー術使うんです」

眼鏡を持ち上げ「魔術?!」

唇読術 (唇の動きで言語を知ること/こうしんじゅつ)という術使いなーんーでーす!」

「ホウー!」眼鏡がまたまたずり落ちた。

ウーロン茶を飲んで唾を飲み込み

「通訳の子がトイレに行ったので、聞こえないと思い『たまに都花の綺麗なアンヨみてみでぃもんだスカートはいてケロちゃ』」

「って言ったんでーす。」

福祉機器科の三品さんというオバサン訓練生が捕捉して

「都花ちゃんは耳が聞こえないために小さいとき交通事故で足にきずがあるんだってだからスカートがはけないんだって」

「こんなことだけなく人間として聞こえる聞こえないは別として」

一枝姉御が立ちあがって

「はーいりょーがたりな~いでーす」と締めくくった。

「ハイハイよーくわかりました。彼に注意しておきます」と眼鏡を持ち上げた

佐倉先生に諭されたヤカンは僕に---10に続く