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きままに小説書いてるブログ

She gave rock n roll to you という小説を書いています。
どん底な少年がロックとヒロインで救われていく話です。

大河は刀で切りつけ、時に蹴りを繰り出し、縦横無尽に暴れまわる。大河の攻撃により、町一帯に地響きが起こる。
しかし、敵にはあたらない。
「なんなんだこいつ。最初のと訳が違うぞ」
「はじめてみる機体よ。気をつけて、大河君」
この敵は、アウラがシェイクハンドと呼んでいた機体だが、大河たちワイルドキャッツのメンバーが知るよしもなかった。
「刀がダメなら、爪がある!」
大河は刀を素早くしまうと、カギヅメをスライドさせ、シェイクハンドに斬りかかる。
しかし、シェイクハンドはコロコロと転がり、爪をかわしてしまう。
「こんのっ!」
一番機は爪を上から、一気に力任せに降り下ろす。

ガギッ

「しまった!」
「何やってるの!」
シェイクハンドが間一髪で避けた為、大河は勢い余ってビルを切りつけてしまった。カギヅメは深々と壁に突き刺さって抜けない。
「は、はやく抜くのよ大河君!」
「そんなこと言ったって!」
ビビドライガーは爪が抜けずにその場から動けない。
その隙を敵は見逃さなかった。
素早く近づくと、たくさんある腕のうちの一本でビビドライガーの腹の辺りを殴り付ける。衝撃に巨人は、腹をくの字に曲げ苦しむ。
「がああぁっ!」
「きゃああっ」
大河と渚は衝撃に揺さぶられる。
そのまま、ワンツー、アッパー。ふらふらと戻って来た所をストレートで一撃。
ビビドライガーはガラガラとビルを倒しながら倒れた。
「やったなコノヤロウぅあ!!」
大河は怒りに任せて、一瞬で立ち上がる。肩から頭から、コンクリートの破片がパラパラと下に落としながら、構える。
「うぉっ!」
吼えながら、決死のタックルに行く。
サイコロは避けつつ、カウンターにビビドライガーの顔を殴り付ける。
ガンっ!
「くそぉっ!」
負けじと大河はタックルを繰り返す。

ガン!

「くそぉ!」
ガン!

「あああぁ!」
ガン!

「ちょっと!何してるの!」
「いーから、黙って見とけえ!」

大河はダッシュをし、再びタックルを仕掛ける。
シェイクハンドは、また避けてやろうと、身構える。
「……かかったな」
しかし、タックルは実はフェイク。
いつもより浅めにタックルし、途中で止まったのだ。
「ギギっ!?」
敵はすでにパンチを繰り出していた。
相手のカウンターを頭を降ってかわすと、その腕を、肩と両腕でガッチリホールドしてしまう。

ニヤリ

大河はニヒルに笑うと、ビビドライガーの腕に渾身の力を込めた。

ギリギリギリギリギリギリ

一番機の力に比例して、敵の腕は、曲がって行く。
そしてついに、

ボギン!

相手の腕を一本もぎ取った。
「ギギギギギギ」
敵が苦しむのを見ながら、地面に腕を投げ捨てる。

ズン!

土煙を上げ、腕は地面に落下した。
スッと右手を敵に向け、指差しながら大河は言う。
「どっからでもかかってきな!……てめーに万に一つも勝ち目はねーがな!」
その啖呵にシェイクハンドは激怒した。怒りに体を震えさせ、その二つの瞳には、憤怒の焔が燃えている。

ギギギッ!
シュン!シュン!

シェイクハンドは残った四本の腕をフルに動かし、今までとは比べ物にならないくらい、素早く動く。
「な、嘘だろ?」
シェイクハンドの動きは普通ではない。尋常ではない。まさに燃え盛る火の玉だ。
軽快なフットワーク。正確なジャブ。強烈なブロー。
「がはあっ!」
だんだん押され始める一番機。ビビドライガーの各関節や、体の骨幹となるフレームが、ギシギシと悲鳴をあげる。

ズガン!

シェイクハンドの裏拳がビビドライガーの頬に炸裂した。
回転の遠心力により、威力は今までのパンチとは、段違いだ。
それからは、鬼のような連打。ラッシュラッシュラッシュ。
「くそぉ……くそぉくそぉくそぉくそぉくそぉくそぉ!」
腕を前に組み、ガードしながら、大河が叫ぶ。
「クソッタレがああああ!!」

バキィ!

ビビドライガーの渾身の一振り。しかし、突き刺さった拳は、カウンターで放ったシェイクハンドの拳だった。
「……くそぉ……!」
ついにビビドライガーは、ビルに倒れこんでしまった。凄まじい轟音をたてながら崩れ落ちるビル。
倒れこんだまま、ピクリとも動かない。
そのまま、敵はビビドライガーの胸の辺りをトドメとばかりに五、六発殴る。
「一番機!?一番機!状況を報告せよ!一番機!」
本部からの連絡にも反応しない。
ビビドライガーは、完全に沈黙してしまった。
「ギシギシギシギシ」
笑うように軋みながら、シェイクハンドは背を向けると、舞を倒すため、ゆっくりと歩み出した。一番機のコクピットでは、大河が叫んでいた。
「くそっ!くそっ!俺に、俺に!俺に力があれば!くそぉ!動けよ!助けに行くんだよ!ヤツを!ヤツを倒しに行くんだよぉ!!立てるだろ!?行けるだろ!?動けよ!ちっくしょぉぉぉおおおお!!何でだよ!何でだよぉぉぉぉお!!」
「……力がほしい?」
渚がポツリと呟いた。
大河は悔しさに俯き、自分の腹に怒鳴るように返事をした。
「ほしいだって?当たり前だ!ヤツを倒す力を!みんなを守れる力を!あるのか?有るならくれ!たのむから!力を!俺にどうか力を!」
「もし……もし、このちからを使ったら、もうもとの生活には戻れない。続くのは破滅の道……。死ぬまで戦うことになるわ……。それでも……。それでも、戦うことに迷いはない?」
「ああ!そのためなら、全てを捨てても構わない!」
真っ正面を睨み付けながら大河は言う。
その瞳には、何も写ってはいなかった。ただただ真っ黒な画面の向こうの敵をにらんでいた。
「覚悟!?そんなものはなからできてるぜ!」
「それなら、あたしのやることは一つ。あなたが力を望むなら、あたしは力を与えよう!あなたが敵を憎むなら、あたしも敵を憎もう!あなたがこの道を歩むなら、あたしも共に歩こう!さあ、共に歩もう!修羅の道を!今こそ解き放つ真の力を!目覚めよ!ビビドライガー!!」

ガン!
渚は後部座席のただ一つのボタンを拳で叩いた。

ブー……ン

ビビドライガーは、赤い光をまといながら、再び起き上がった。