三章 tell me、テル ME 3 | きままに小説書いてるブログ

きままに小説書いてるブログ

She gave rock n roll to you という小説を書いています。
どん底な少年がロックとヒロインで救われていく話です。

僕がドグラマグラに、キーボードとして参加した結果、ドグラマグラは、今までよりも演奏の幅が広がったらしい。
キーボードが無いと、メタルはイキイキしないからなぁ、これからはテルくんもいるからなぁ、と、まこっさんはいつも嬉しそうにしている。
今日は新曲、「映写機回せ」の練習だ。
この曲は、へーぞーさんの作詞作曲の曲で、僕とへーぞーさんのコーラスで、まこっさんが歌う。
特徴としては、イントロでシンセで出したチェンバロのカノンが超絶ソロで始まり、息のあったツインギターのユニゾンが被さる。
典型的なメロスピだ。
詞の内容はこうだ。
片腕の無い、女の子が家出をして、町をさ迷っていると、不思議な映画館にたどり着く。
そこは、心がパンクした者たちしか開かない扉に守られた、街のスキマらしい。
そこで彼女は管理人から、不思議な映写機を渡される。この映写機は、少女の過去の辛い場面を写し出す映写機だ。
少女は耐えられなくなり、映写機をハンマーで殴ろうとする。しかし、管理人が間に割って入り、止める。
頭がかち割られながらも、管理人は彼女に言った。
「映写機を回せ。過去が辛くとも、回せ。いずれ素晴らしい未来がある」管理人は息絶え、フィルムを見終えた少女は新しい世界へ旅だつ。

……なんか中2ー?

「こらぁテル!」
「はいぃーっ」
サビのコーラスがどうしても、小さい声になってしまう。キーボードに集中しすぎてしまうのだ。
こうなった時のまこっさんは怖い。ビシビシ檄を飛ばしまくる。
「もう一回サビの前からっ!シモンズも遅れる癖あるぞっ」
「はいーっ」
こんな調子だ。
壁際では、顧問気取りのつもりなのか、文さんが、うんうんとうなずきながら立っている。
熱い。
気温ではない。
全員が一つになって沸き立つ闘志のような、気合いのような、よくわからないものが渦のように、教室に立ち込めている。
「ちょっといいかな?」「何でしょうか」
休み時間に文さんが声をかけてきた。
「さっきのBメロのとこなんだけど、ここは悲しいよりも、切ない感じで弾いてみたら決まるかもね」
たしかに、そのほうが詞に合っているかも。
文さん、侮れぬやつよ……
「どうでしょう?」
「いーね」
「おっし!じゃあ、ラストー」
まこっさんが立ち上がりながら言った。
練習が始まる。
じゃーんっ
ちゃらららららら
ドンドン加速していく

加速加速加速……。


今日の練習は、これでおわった。
結局最後までうまくいかないままだった。
はぁ……
思わずため息が出てしまう。うまくいかないもんだなあ。
「ちょっといいか」
珍しいことに、声をかけてきたのは、へーぞーさんだった。
「放課後……付き合ってくれないか」
なんだか、嫌な予感がした。