テレビCMもWeb2.0?ようやくオンライン化したCM市場 | 汗かいても、いいですか?

テレビCMもWeb2.0?ようやくオンライン化したCM市場



 テレビCMの世界でようやくオンライン化への取り組みが始まった。いまやオンライン取引はどの業界でも当たり前となっているが、テレビCMはオンライン化されていない極めて珍しい業界だった。広告業界がどこまで本気かはわからないが、避けては通れない「Web2.0」の潮流に重い腰を上げたようだ。CMを見て商品を買ったり CMをスキップしてしまうことはあっても、実際にCMを出したことがある人は極めて少数であろう。が、このオンライン化された新しい仕組みを使うことで今までの数分の1の値段で中小企業や一般の人でもCMを簡単に制作・放映することが可能になる。


 アメリカでは「Spotrunner」、日本では同じようなサービスとして電通の「CMGOGO」というサービスがある。これはオンラインでのテレビCMの販売ネットワークだ。ターゲットとしている広告主は日本もアメリカもどちらかと言えばローカル企業、例えば 地元の飲食店や不動産業者などであり、CMを出す先はローカルのTV局やケーブル局だ。


■CMが放送される全プロセスをオンライン化

 Spotrunnerのサービスの概略はこうである。まずはじめに広告主はCMを出したい地域や番組ジャンルなどを選び、Spotrunnerのウェブサイトから業界やコンセプトによって仕分けされたテンプレートとなる動画の素材を選ぶ。これに社名ロゴのファイルをアップロードしたり、電話番号やURLなどのテキスト情報を入力するとオンラインで編集が行われ、内容を確認してOKすればあっという間に完成だ。多くのブログや動画投稿サイトへの投稿がテンプレート入力とファイルアップロードでできあがるのと同じである。


 CMを流そうと思っても流すフィルムがなければ話は始まらないのだが、これを制作する手間やコストがかなり大きく、制作費は安くて数十万円から高いと数億円かかる。これをテンプレートを活用して安く上げようという仕組みだ。もちろん特定の商品CMなどはテンプレート素材では表現しきれないところもあるが、それは工夫次第。また企業イメージCMであれば十分利用可能だ。


 CMができあがると引き続いて予算を入力する。すると局名や番組名、日時などの放送スケジュールの「お勧めプラン」が自動的に提示される。業界的には「局案」とか「線引き案」と呼ばれるものだ。これのやりとりは何度でもオンラインで修正可能となっている。Spotrunner社はテレビ局から(大部分はあらかじめ)広告枠を買い取り、広告主に販売するというモデルである。



 現在日本でCMを流そうとすると、CMはビデオテープの状態で広告会社を通じてテレビ局に物理的に納品される。ここで物流が発生する。ナショナルクライアントが日本全国に向けてCMを流そうとすると原則的にテレビ局の数だけテープのコピーとデリバリーが必要になる。これは結構なコストなのだが、Spotrunnerの場合はCMがオンラインでファイル管理されているので考え方としては上記のコストがゼロである。


 CM放送後は「間引き」されることなく放送されたことと、広告主が経理処理するための証明書として放送確認書が発行される。決済がクレジットカードでネット上でできてしまうところも新しい。


 このようにSpotrunnerはCMの制作、枠取り、配送、放送確認、決済といったプロセスがオンラインでかつワンストップで可能になっている。日本ではこれら一連の業務は、広告会社(広告代理店)との間で行うものであり、各プロセスはほとんど電子化されていない。もちろんSpotrunner社はアメリカでもベンチャー企業であり、まだまだ一般的なものになっているわけではない。



■他媒体、ハード機器も使ってより効果的なCMを

 こうしたサービスはそれ自体非常に画期的だが、もっと本質的な変革を実現する機会を見失ってはいけない。これまでのテレビCMの業務フローを単にオンラインに載せ替えただけで終わらせることなく、はるかにオンライン化が進んでいる他媒体とのクロスメディア連携のためのマッシュアップツールとしても使われるべきだ。


 例えば、旅行サイトで飛行機チケットを(多くは格安券で)購入したら接続の良い電車の指定席や、目的にあったホテルを同時に予約できるというサービスは、Web2.0以前からすでに当たり前である。しかしながらテレビCMは自社便の747ジェットのビジネスクラスだけを定価で売っているようなものであり、今回の仕組みが手書きで発券していた航空券が電子化されただけに終わってはまだまだ面白くない。


 テレビCMは、これまでのテレビの広告主の商品やサービスがマスマーケティングを求めていたので成立したビジネス構造なのだが、いまや広告主の商品やサービスそのものが大きく変化している。テレビ離れは視聴者側だけでなく、むしろ広告主側からもやって来ており、このままではテレビCMの市場は衰退していくばかりだ。


 そこで、今回のCMの送り手側の仕組みと、受け手側、すなわち家庭内の大容量のハードディスクレコーダーのような機器の制御技術を組み合わせてみてはどうだろう。放送局がCMを送り出しているCMサーバーが各家庭に分散されていると考えていただけるとわかりやすいだろうか。家庭側の機器にあらかじめ放送または通信側からCMを蓄えておき、属性に合わせたCMの配信情報、プレイリストだけを個別に送ることができれば、広告主はこれまで以上にセグメントされたターゲットにCMを送り届けることができる。


 コンテンツはマスだが、CMはセグメントされているメディア。そういった場が強く求められていることにいち早く気がついて実行するのは誰になるのだろうか。