滞りなく葬儀も終え一段落したころおじいちゃんが変なことを口にするようになった。

それは毎朝一番のトイレに入ると、
そこには笑顔でおじいちゃんを迎えてくれるおばあちゃんがいるというモノだった。

もしそれが本当のことならおじいちゃんにとっては幸せなことだろう。

毎朝目覚めにおばあちゃんに会えるのだから。

でも家族の誰もが現実に思いを向かわせたのはおじいちゃんが何らかの錯乱を起こしてしまったか、
ボケてきてしまったかということだった。

「おじいちゃん、おばあちゃんはもう死んじゃったんだよ。会えるワケないでしょ?」

妹が毎日同じことをおじいちゃんに言う。

すると今度は、

「でも朝一番にはトイレにいるんだよ、ばあさんは。」

と、決まっておじいちゃんは返答する。

そんなやりとりが1ヶ月程続いた頃、妹がおじいちゃんを病院へ連れて行くべきだと言い出した。

親もそれに納得し、どんな風におじいちゃんを病院へ行くように話をすべきかと相談しだした。

僕はただ黙ってそのやりとりを見ていた。

自分の部屋に行こうとリビングを出て階段へと向かう途中、
おじいちゃんの部屋をそっと開けて中を除いてみた。

おじいちゃんは気持ち良さそうに寝息をたて眠りに就いていた。

その時凄く単純だが今まで深く考えていなかったせいか思いつきもしなかったことを思いついた。

それはおじいちゃんの朝一番のトイレに一緒に付き合えばいいってことだ。

それに付き合うため僕はおじいちゃんの部屋の前で暖を取り夜を明かすことにした。