「この世で絶対的な存在は何かわかりますか?」



彼は唐突にそんな話を僕に振った。



「この世?地球上にはそんなモノ存在しません。感情論込みのモノを除いて・・・絶対的な存在とは太陽しかありえません。」



クダラナイ質問に僕は当然のように応えた。



「素晴らしい!!正解です!!絶対的存在は太陽しかありえないのです。」



彼は僕が正解したことに殊の外満足げに見えた。



「やはりあなたは賢く話が早く進む。私にとってもあなたにとってもそれはいいことです。」



唐突なフリの意図が見えない。



「だからなんなんですか?」



軽く苛立つ感情を声に乗っけて出した。



「あなたはまるで太陽のような人だ。でもあなたは太陽ではない。そうでしょう?」



回りくどく、しかもまだ意図が見えない。



「だからなんなんですか?」



さっき以上に苛立つ感情を声に乗っけて彼にブツけた。



「太陽の視点って想像したことありますか?」



主題がズレてるのかどうかもはや僕にはわからない。
彼の言うこと、質問に応えていくしかどうやら選択肢はなさそうだ。



「そんなのありませんけど、ひたすら有り続け、そして永遠と膨張することを止めない宇宙空間が広がるだけの景色なんじゃありませんか?」



彼はニコニコしながら何度も何度も頷いている。
彼の思う通りの応えを僕が出したということなのだろう。



「あなたは太陽ではない。しかし太陽のような人だ。自ら炎を上げ光輝き風を起こす太陽のような人だ。世の中の大半の人にとってあなたは眩し過ぎる。恐れおののき目を眩ます前に逃げたくなる人が多いでしょう。それか太陽の発する熱によって消滅していくあまたの星たちのように消えてなくなってしまうでしょう。絶対的な太陽を目の前にし勝てるモノなど森羅万象どこにも存在などしないのです。あなたはそれをもっと知るべきです。自分の力がとても大きいということを。しかしあなたに見えてしまうのは永遠と膨らみ続ける宇宙空間のような闇。」



何も言えずにただ彼の話を聞くことしか出来なかった。



「太陽の視点の話はこれでおしまい。じゃあ次に太陽の意思について。太陽に意思があると勝手に仮定してあなたならどんな意思が太陽にあると考えますか?」



話がぶっ飛び過ぎていてついていけない。



「『たられば』で物事を前に進めようとすることは基本的には愚かなことだと思っています・・・でも決して『たられば』トークは嫌いじゃありません・・・太陽に意思があるとしたら・・・鏡などなく自分の姿も知れず広がって行くだけの闇を見続けるしんどい気持ちか、全てを輝かせるために頑張り続けなければならないという使命感と責任感ってとこでしょうか?」



素直に応えた。



「う~ん、素晴らしい!!そろそろ私が意図してることが見えて来たんじゃないですか?」



なんとなく見えてきたのは確かだった。



「でも僕は太陽ではありません。なので意図されてる通りの落とし所などわかりゃしないのです。」



見えてきたことと、現実は違うということをハッキリと彼に伝えた。



「それを私と一緒に探していきましょうよ!!私だって神様じゃあるまいし、あなたの落とし所などわかりゃしませんよ!!」



負けそうだ・・・でも負けたくない・・・



「今の話は僕みたいなタイプに使うネタですか?」



彼はただニコニコするだけで何も応えてはくれない。
話が終わり退席しようとすると彼がまた話だした。



「仮にさっきの話があなたの言うようにネタだとしても、早々使えるネタではないと私は思いますよ!!」



完敗だ・・・完全に負けた・・・なのに何でだろう・・・この感覚・・・
負けたのに気持ちいい・・・僕は彼にこれからも会いに行き続けることだろう・・・