小さい頃から病弱でした。
いい大人になった今でも、万全な健康体ではありません。

事あるごとに掛かり付けの病院まで、当時車の免許を持っていなかった母が
タクシーで連れて行ってくれたことを昨日のことのように思い出します。



そんな僕も小学校へ入学。

慣れない学校生活での疲れや緊張も多かったのでしょう、
朝から熱を出して学校を休むなんてことはしょっちゅうでした。

登校した日でも学校で体調を崩し母に迎えに来てもらい早退なんてこともしょっちゅう・・・。


小学校の1,2年生は年間の1/3ぐらい欠席でした。



授業中、体調を崩し保健室へ。

保健の先生は若くてきれいなI先生。
I先生の顔を見ると、とても気持ちがホッとして体調が悪いことを一瞬忘れてしまう程でした。

いつもやわらかい澄んだ声で僕を笑顔で優しく迎えてくれました。
(ん!?なんだ?今当時の光景を思い出したら、一瞬目頭が熱く・・・)

保健室でI先生と2人きり。
物凄くドキドキしていたのを覚えています。
いろんな話をしました。
時には授業にあまり出れない僕に勉強を教えてくれたりもしました。

でも、そのどれをとっても内容はあまり覚えていません。

とにかく思い出すのはI先生がとても優しくて本当に優しくて・・・


きっと当時の僕にとって、この空間でのこの時間が一番大切だったんだと思います。

 『完璧な世界』 が、そこにはあったんです。



僕が4年生の時、I先生は結婚してU先生になりました。

何だか分からない悔しさと苛立ちがありました。

人生で初めての『嫉妬』だったと思います。

翌年、I先生(U先生とは呼びたくありません。)は出産のため、退職されました。


退職される前、I先生は僕を保健室に呼びました。

学年が上がるにつれ保健室への出入りも減った僕は
久しぶりに何だか分からないドキドキを感じながら保健室へ向かいました。



「ドリッパ君の顔を見るのが少なくなったことはちょっと寂しくはあったけど、とても良いことだよね。ドリッパ君はこれからもっともっと大きくなるために健康にならないといけないんだよ。先生はもうドリッパ君に会えなくなっちゃうけど、いろんなこと、たくさん頑張ってね。」



声を出して泣いてしまいました。



恥ずかしいなんてことを全く思いもせずに声を出して泣いてしまいました。



「5年生にもなった男の子がそんなにも泣かないの。・・・今だけだよ・・・。保健室を出たらもうおしまい・・・。頑張ってね。」



やわらかい澄んだ声で、笑顔で優しく僕の頭を撫でながらI先生は言いました。



この記事を書きながら何度も、当時の一瞬一瞬の光景が頭に浮かんできました。
その度に目頭が熱く・・・



・・・たぶん・・・初恋・・・