消えてしまった人々のこと
小さいころ、いっぷう変わった人達が何人かいた。
リョーちゃんは、第二次世界大戦から生きて帰ってきたのはいいけど、
少しアタマをやられてしまった。
戦争から帰ってきて一度も着替えたことがないかのような服を着てずっと、ずっと散歩している。
子供たちはみんな、なぜか、
「リョーちゃん、今なんじー?」と聞く。
「い、いまか、い、いまは3時や。」とうれしそうに答えるのだ。
一度リョーちゃんを怒らせてしまったばかりに、2時間くらい追いかけられた。
ジュンちゃんは、右手を猫のように折り曲げて、びっこをひきながら散歩していた。
いつも笑顔だった。
友達が夏祭りで調子にのって、水の入った風船ヨーヨーをジュンちゃんの股間にあてたばかりに、
ジュンちゃんに追いかけられた。
ドウサクさんか、マタさんかどちらかは忘れたけれど、
怒らせると鎌をもって追いかけてくるという逸話がある。
然るべき世に存在するはずの人々は、
不自然に皆、消えてしまった。
なぜだろう。
世界には深い海と高い山があるように、人間にも然るべき存在がいなくては、と思う。
平均化。
遺伝学的に考えても、ニンゲン・ホモサピエンスの先はあまり長くないのかな。
生物は変態を生み出しながらきびしい環境に適応できるよう、進化してきたというのに。
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