さあこ
中学校時代の同級生に通称・サーコ(男)というのがいた。
同じサッカー部に所属していたが、彼のことは好きにはなれなかった。
強引で自己中心的な性格や、赤みがかったニキビだらけの頬や、ちょっとすねた目などが。
中学2年の時、同じサッカー部の友達2人と夏休みに行く琵琶湖一周自転車旅行の計画を立てていた。
そこへサーコがやってきて、「俺も行く」といった。
内心「お前はくるな」と思ったけど、僕以外の2人は「行こう、行こう」と言った。
仕方なく、その琵琶湖一周にサーコも加えて4人で行くことに。
琵琶湖一周は2日の日程だった。
初日は小学校の非常階段の下で野宿。
蚊がいっぱいいて刺され、耳元でも蚊のうなる音がひっきりなしでその日は一睡もできなかった。
朝、暑いので飲み物を飲むためマクドナルドによった。
ちゃんとした朝ご飯が食べたかった僕は「ご飯は後で食べるんやろ?」
と言うと、
サーコが「当たり前やん」
と気に障る返答。そのわりに僕以外の3人はちゃっかりハンバーガーを食べていた。
その後数時間、炎天下を自転車にのってひたすら前進。
サーコに
「そろそろご飯食べようや」というと、
「俺たちはさっきマクド食べたからいらんねん」というサイテーな返事。
一睡もせず、メシにもありつけなかった僕はフラフラで炎天下を進む。
大きな橋にさしかかった時、急激に眠気が襲ってきた。
橋を渡り終えるころには視界が狭くなり、自分の周りに透明な幕が張ってあるような感覚。
そして倒れた。遠ざかる意識。
友達の呼ぶ声も数百メートル先から聞いているようだった。
初めて死を意識した。
心の隅では「サーコぶっ殺す」という声が鳴り響く・・・
病院へ直行。
睡眠不足と食事抜きと水分不足が原因の熱射病だった。
サーコが悪魔に見えた。
その後何年かサーコに会うことはなかったが、5年ほど前に見かけた。
彼は白の軽自動車に乗っていた。
電飾やネオン管がピカピカで竹槍マフラー、もちろん白ハンドルにダッシュボードには白のファーが敷いてあった。
ブゴゴゴゴーーーーと彼は走り去っていった。
すごいセンスだ・・・と思った。
車の後ろには「ALONE」という文字が白のカッティングシートで自作してあった。
サーコの仲の良い友達に会ったとき、
「あの、ALONEって何なん?」と聞くと、
どうやら彼の所属する、車のチーム名らしい。
だけど、サーコ一人だけだから「ALONE」
チーム「ALONE」
最初はギャグでやってんのかなと思ったけど、本人は本気らしい。
笑いが止まらなかった、と同時に彼の自虐的ギャグセンスに敬意を払う。
別の友達がコンビニでサーコに出会った。
サーコが
「俺の車イケてるやろー」といったら、
友達は
「なんてイタい車乗ってるねん」と言ったらしい。
この話は半ば伝説化している。
3年ほど前に偶然サーコに出会った。
彼はいきなり、
「ボウリング、行こうぜっ!」と言って
ボウリングを投げるモーションをして、振った手で僕のお尻をパーンと叩いた。
僕は反射的に身をよじり、
「イヤ、やめとくわ。」と言ってその場を離れた。
彼とはその後会っていない。