おんぼろバイクで旅をする その3
朝、起きると田辺の街には雨が降っていた。
ホテルの部屋から下を見ると学生が合羽を着て自転車にのっている。
朝食を食べ終わり出発するときには雨はもうやんでいた。
さらに、南へとバイクを走らせる。
道はよく、快走する。
本州最南端、潮岬に行く。
まずは猫がお迎えしてくれる。
なんて寂しいところなんだろう。
空はまだ曇っている。
天気が良かったら・・・と思う。
なんの感慨もなく早々に立ち去り、次の目的地の那智の滝へと向かう。
那智の神社への参道に家が建っていて、家と家の隙間から下界が見える。
こんなところで暮らすのはどういう気分なんだろう?
深い緑と神聖で湿り気のある空気が肺を満たす。
那智の滝を借景とする塔。
まさに神の住まう熊野だ。
滝の飛沫が舞い、水の匂いがすごい。
清浄な空気で、滝の音だけがしている。
何十分もみとれる。
そろそろ出発しなければ、と思うのだけれども離れたくない。
落下する水がさまざまな形に変化し、生き物のようだ。
この滝に引き寄せられるのはいったいなんなのだろう。
後髪を引かれる思いで那智を後にする。
下界に戻ると気持ちいいように晴れていて、空気もからっと乾いていた。
北上し、三重に入る。
お昼寝中お邪魔します。
道の駅の目の前は広い浜が広がっていた。
だれもいない。
この広さは日本とは思えない。
ひとりでこんなきれいなところにいるなんて、なんて贅沢なんだろうと思った。
鳥が一匹空を滑空する。
熊野の安い宿に泊まる。
熊野の街をバイクと徒歩で散策。
良い雰囲気の中華料理屋発見。
妖しい中国人が大きい包丁をもって出てきそう・・・
今夜は十五夜だ。
海が金色にキラキラ反射してとてもきれい。
海に金色の生き物がいて、そいつがせわしなく動き回っているように見える。
なんてきれいなんだろう。
同宿の女の子もやってきたので、二人で月を眺めながらいろいろ話をした。
海と満月と浜と女の子と熊野。まったく旅は非日常だ。
宿には門限があって9時なので宿に戻り寝た。
翌日起きたらもう家に帰らなくてはいけない。
でも、僕はそのまま東に向かってバイクをすすめたかった。
旅の間、小さい子供のように純粋な眼差しでいろいろなものを見ることができる。
脳は興奮しっぱなしだ。
世界をいつもと違った角度から眺めることができる。
やっぱ、旅はやめられない。
今回の旅の友
- 横尾 忠則
- 私と直観と宇宙人
- 素樹 文生
- 上海の西、デリーの東 (新潮文庫)











