有栖川有栖の『絶叫城殺人事件』です。







タイトルが超カッコイイ!!!タイトルは!!!


絶叫城殺人事件 (新潮文庫)
有栖川 有栖
新潮社
売り上げランキング: 81533


内容(「BOOK」データベースより)
「NIGHT PROWLER(夜、うろつく者)」と記された小さな紙片を、口の中に押し込まれ、次々と殺害される若い女。残酷な無差別殺人事件の陰には、カルトなホラー・ゲームに登場するヴァーチャルな怪物が―。暗鬱の「絶叫城」に展開する表題作ほか、「黒鳥亭」「壷中庵」「月宮殿」「雪華楼」「紅雨荘」と、底知れぬ恐怖を孕んで闇に聳える六つの迷宮の謎に、火村とアリスのコンビが挑む。


















あとがきによると、作者は今まで意図的に「~殺人事件」というタイトルを使わないようにしていたのを、出版社の依頼で黒鳥亭殺人事件を書いたのをきっかけとして、「~殺人事件」シリーズを書くことにして、それを一冊の本にまとめた結果、生まれたのが今作らしいです。
というわけで上のあらすじにある通り、6つの殺人事件が起こります。それぞれが独立している殺人事件でした。




まぁ有栖川有栖の作家アリスシリーズは(特に短編集は)僕としてはファンが読んで火村とアリスの仲の良さにニヤニヤしていればそれでいいものというとらえ方をしているのですが(ただの事件紹介にしかなっていないような話が多いと思っているのですが)、今作の短編はそれだけで終わるのは少しもったいない気がします。



というのも今作は最初からこの6編で話をまとめようとしていたからだと思いますが、6編の話がそれぞれタイプが違っていて、作家アリスシリーズのすべての側面を見せたように思えるからです。そういう意味で全体を俯瞰して見れば、内容は割と良かったと思います。ひとつひとつの内容は特に感慨深いものはなかったのですが(笑)。



僕としては、事件が起きてから火村とアリスが呼ばれて、事件の調査をして解決に導くというパターンを変えてくれたほうが、作家アリスシリーズは成功するような気がするのですがいかがでしょうか?今回は6編が大体そのパターンだったので。



今作の中からいくつか取り上げてみると、まず最初の『黒鳥亭』は、友人が住んでいる黒鳥亭という変わった建物の井戸の底で死体が見つかる話です。これが良かったですねぇ。ってか今作で良かったと思えるのはこれぐらいなんですが、おそらく人気も一番あると思います。犯人の意外性はもとより、犯行の手口も、まさに短編ならでは、という感じだったのでサクッと読めてほんの少し切なくなれました。



壺中庵・月宮殿は一瞬で内容忘れました。


雪華楼は、たぶんこれが好きな人も多いと思うんですが、僕としては
(以下、ネタバレしないように気をつけてますが、先入観を持たせたくない人のために一応反転させておきます。)


その手口を奇跡的な確率だけれど認めるというのならば、屋上の縁に立った被害者に氷の塊をぶつけて殺したっていう奇跡的な手口も認めろよ。証拠も残らないし



って思いました。


紅雨荘は、昼ドラか!って思いました。実写化しやすそうなトリックでした。


絶叫城は、完全にタイトル負けしているような気がします(笑)。ってかタイトルが格好よすぎるのに、内容はいつもの内容って感じでした。絶叫城っていうテレビゲームの内容に沿って連続殺人が行なわれる話です。


「ゲームのせいで犯人は現実とバーチャルの区別がつかなくなっているんだ」とか評論家たちは言うけれど、でも違うんじゃない?みんな、ゲームと現実の区別はつけているんじゃない?今回の犯人も結局はこんな動機でしたよ、というテーマを持たせていたんだと思いますが、自分で作った創作の話でそれを言われても、「それは先生がそういう犯人像にしたからじゃないですか」と言いたくなります(笑)。どうもこの話は納得のいかない内容でした。う~ん。




全体的には緻密な論理モノではなかったような気がしますが、企画ものとして、というか有栖川有栖の幅の広さは存分に見せていると思います。




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