大学が夏休みに入ったので頑張って更新しますね!


伊坂幸太郎の『魔王』です。


僕は伊坂幸太郎のこういう側面、好きですよ。


魔王 (講談社文庫)
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伊坂 幸太郎
講談社
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内容(「BOOK」データベースより)
会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいていった。五年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。























これ読んだのは数年前なのですが今回『魔王』の続編の『モダンタイムス』を読んで面白かったので久しぶりに再読。中身は『魔王』と『呼吸』の二部構成でした。




時代設定は現代のように見えるけれど、現代の日本の状況を大げさに書いているような感じで、それがリアルさを演出しているのだと思う。不景気や雇用問題・対外政策などなどでどうしても閉塞しがちになっている日本の雰囲気と、それに対して強烈なまでのリーダーシップを発揮して日本の政治を一方向に推し進めようとする政治家の犬養さんに対して、安藤という男が違和感を感じて、ヤキモキするのが第一話の『魔王』で、その安藤の弟の、どことなく超然とした世界との関わり方を恋人の目線から書いたのが第二話の『呼吸』。




まず政治家である犬養さんの言動やそのカリスマ性とそれに惹かれた国民たちの熱狂がどうしてもファシズム的な感じになってしまい、それに疑問を感じる安藤兄の葛藤がとてもよかった。安藤兄が手に入れた『腹話術』(人に自分の思うことを話させる能力)で、演説中の犬養にとんでもないことを言わせようとするところがなんだか伊坂幸太郎らしいなぁと思った。僕は『終末のフール』とかも好きなんですけど、登場人物たちが斜に構えたようでいて実はまっすぐに世界を見つめているようなところがなんだか歯がゆい(この表現は合っているのか?)感じがします。



『呼吸』のほうでは安藤弟が『10分の1の確率の勝負に絶対勝てる能力』という特殊能力に目覚めるんですが、そんな素敵な能力を会得してもそれを自分の私利私欲のために使わないし、かといって世間の人たちのタメになりそうなこと(多くの場合が押しつけがましい独善的なこと)にも使わない、という固い意志が(→結局はくだらないことに使うんですよね~)とてもよかったなぁ。コッチでは弟の恋人が少し変人なところも可愛かったです。






犬養という政治家の強烈なまでのカリスマ性とそれが生んだ熱狂が与えるファシズムが読んでる側の、なんとなく感じる肌寒さに通じますが、犬養を打倒することが今作の主旨ではなく、作中では犬養自身も「俺の意見に盲目的に賛同するな。自分で考えろ」と言ってるぐらいで、やはり犬養は打倒すべき悪とかではなくて、むしろ今作の主旨は、どうしても流されがちになってしまう国民の集団心理のようなものや、想像力の欠如・人ごと感覚というものに対する警告なんだろうなぁと思います。



僕は政治の話が好きなのでこういうの大好きですね。

で、この続編の『モダンタイムス』はまた次回!




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