京極夏彦の『魍魎の匣』です。








・・・すげーな・・・。


文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)
京極 夏彦
講談社
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内容(「BOOK」データベースより)
匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物―箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。






























まず、上に書いてあるあらすじの淡泊さにビックリです(笑)。


なんか色々と事件が絡まりまくってた気がしますが、そこだけ書いちゃった!?って感じですね。


ま、いいですけどー。






『姑獲鳥の夏』に引き続いて京極堂シリーズの2作目です。

僕は割りと短めでアッサリと終わってくれたほうが好みで、『魍魎の匣』は読んでる間は「長いな、長いな」と思いながら読んでいました。


でも序盤と終盤はとても面白くて、手を止めるのが難しかったですね~。

(中盤はかなり中だるみしてしまいました。)



今作はもう匣(箱)だらけ!!


至るところに立方体の匣が出てきます!



あとはもう盛りだくさんで時代背景なども活かしつつ、バラバラ殺人、旧日本軍の裏の仕事、謎の施設、天才科学者、引退した美人女優、白い手袋の謎の人物など、これでもか、と詰め込んでいたので、これだけの大作になっても仕方がなかった??













物語の冒頭は二人の女子中学生の話から入ります。


僕はこの頼子と加菜子のエピソードがとても好きでした。


加菜子の逞しいほどの達観ぶりも、それに憧れる頼子も。




なんだか青臭くて生々しくてとても切ないですよね。





「生きるってことは衰えていくことだろ。つまり死体に近づくってことさ。

だから太陽の光を浴びた動物は、精一杯に幸せな顔をして、力一杯に死んでいく速度を早めているんだ。

だから私たちは、月に反射した、死んだ光を身体中に浴びて、少しだけ生きるのを止めるのさ。

月光の中でだけ、生き物は生命の呪縛から逃れることが出来るんだ」





この部分がとても好きでした!


何、この世界観(笑)。






そしてそこから木場修祭りが始まります。



あと、今作は木場修が格好よすぎます!!!


不器用な男の不器用な生き方が格好良いですね~。



あんまり書くとネタバレですけど、もう、お前、不器用すぎるだろー!もっと頑張れよ(笑)。



でもまぁ不器用なりに事件を解決させようと警察の法規を乱すところなんてなかなか男でしたよ。



僕は前作で密かに榎木津さんファンになりましたけど、今作ではピエロでした(笑)。


物語に全然関係ないと思われていた関口先生の本の出版の話も思わぬところで絡んできて感涙です。














さてさて、物語全体を通して思ってしまったのはこれはもう読者が推理する類のものではないのだな、ということですかね。いえ、違いますね。

これはトリックだとかそういうところが焦点なわけではないんだな、ということかもしれません。



密室からの人間消失の謎なんて、これはもう反則ギリギリですよ。


でもそれでも納得できてしまうのは、満足できてしまうのは、トリックが明かされたあとに判明する物語の背景にこそ物語の焦点があるからではないですかね。

背景にある重要な部分を知ってしまうと、そういうトリックを使ってしまったことに納得いってしまうんですよね。

なので今作におけるネタバレは、密室からの人間消失の謎のトリックを明かすことにはなくて、むしろ犯人像(犯行の動機や、生い立ちなど)を明かしてしまうことにあるんじゃないですかね。


かなりの長作でしたが、ディティールに拘って丁寧に作られた証拠だと受け取りましょう!

なかなかの傑作でしたよ。










僕は最近は図書館ですべて済ませてしまう傾向にありますが、今作は読んだあとに京極先生に敬意を表して『敬意買い』させて頂きました(笑)。


『敬意買い』なんて東野圭吾の『容疑者Xの献身』以来だなぁ。





ただ、世間の評価に少し違和感があります。


これが京極夏彦の最高傑作ですか?


マジっすか。


う~ん、僕は『姑獲鳥の夏』と同程度だったと思うんですけどね~。


まぁどっちも面白かったんですけど(笑)。



そしてこのあと『狂骨の夢』読んだんですけど、僕はこれが今のところ一番面白かったような気もします!!!!



ま、その話は後日。



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