陰謀渦巻く大都会
非情の弾丸が、獲物を死線へと誘う

 

本シナリオは「ロンメルーゲームズ」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『デッドラインヒーローズRPG』並びに『ブラックジャケットRPG』の二次創作です。
(C)Takashi Osada / Rommel Games
(C)KADOKAWA

 

狙撃成功率150%

概要

「狙撃成功率150%」は、プレイヤー3人用の「デッドラインヒーローズRPG」専用シナリオです。想定されるプレイ時間は、キャラクター作成を除いて4〜5時間程度になります。

 本シナリオを遊ぶ場合、GMは「デッドラインヒーローズRPG」の基本ルールブック(以下、R1と表記)と「学園マッドネス(以下、R2と表記)」、そしてサプリメント「ファインド・ウィークネス(以下、D2と表記)」が必要です。また、必須ではありませんが、一部NPCがデッドラインヒーローズの姉妹作である「ブラックジャケットRPG」から登場するため、こちらのルールブックも併せてご入手くださると、より遊びやすくなります。

 

 

 

 

 

シナリオ・サーキット

 フェイズ 

イベント

概要
導入  護衛任務   グラッジドッグスとともに
 護衛任務に就く
導入  COM僧あらわる  山伏ドットコムの襲撃に遭う
導入  少年との出会い  ミゲルから新たな依頼を受ける
展開  ブリッツクリーグの脅威   事件解決に向けて
 活劇を繰り広げる。
決戦  最強のヒットマン  伊豆別荘にて繰り広げられる
 ブリッツクリーグとの死闘
余韻  親子の結末  ミゲルとマーヴの親子関係の決着 

 

エントリー

番号

 詳細

PC1  キミはバンシー・エンタープライズ社の副社長マーヴから多額の報酬とともにとある依頼を受けた。それは、ある勢力に狙われているマーヴの息子・ミゲルを護衛することだ。今回の任務には、キミの他に獣人傭兵軍団グラッジドッグスの傭兵たちが参加するらしい。挨拶でもしておこう。
PC2

 キミは街で銃撃戦を繰り広げる兵士達を鎮圧すべく出動した。一方は統率の取れた獣人兵士によって構成された「グラッジドッグス」の傭兵とPC1。もう一方は、なぜかやたらと強い虚無僧の集団「山伏ドットコム」だ。キミは事態の解決を試みるが、何者かによる長距離狙撃を受けてしまう。

PC3

 市街地戦闘勃発の知らせを受けたキミは、現場に向かう途中で、暴走する一台の車と遭遇する。車の暴走を食い止め、未然に大惨事を食い止めるキミであったが、暴走車の後部座席に縛られた子どもを発見する。子どもはミゲルと名乗り、キミへ護衛を依頼してくる。
(ある程度、知名度のあるヒーローであることが望ましい)

 

事前公開情報

リトライ  :2 □□

クエリー  :3 □□□

チャレンジ :2 □□

初期グリット:3 ■■■□□□□□□

PC人数    :3

推奨成長点 :0〜20点

 

○あらすじ

 世界に冠たる巨大複合企業、バンシー・エンタープライズ。その副社長であるマーヴ・バンシーには、目に入れても痛くないほど溺愛している一人の息子、ミゲルがいた。しかしそうした存在は、時として弱点にもなり得てしまう。ミゲルを狙う邪悪が放つ、恐るべき刺客の数々。ヒーローは迫る刺客を打ち破り、ミゲルを守り切ることができるだろうか。

 

※※※

導入フェイズ

[イベント1 護衛任務]

登場:PC1
場所:空港

 

▶︎状況1

 一週間前、PC1はバンシー社の副社長マーヴ氏から、息子・ミゲルの護衛を依頼された。以前から悪質な虚無僧に狙われているらしく、しばらく日本で生活することになったのだという。
 かくして多額の報酬と引き換えに護衛を引き受けたPC1は、あと数十分で到着するミゲルの飛行機を待っている。

 そんな時、どやどやとガラの悪そうな連中が向こうから歩いてきた。獣人系の超人種が5~6人。彼らの先頭を堂々と歩くのは、シェパード犬を彷彿とさせる獣耳と、青い目が印象的な女性だった。彼女は連れに何かを伝えると、そのうちの一人(猪頭の巨漢)だけを引き連れ、真っ直ぐPC1のもとへやって来る。そして不機嫌そうな声音で話しかけてくる。

 

「アンタがクライアントの言っていた、ヒーローの護衛か」
「お坊ちゃんの護衛を依頼されたのは、アンタだけじゃなかったってことさ。わたしはシルベット。おっと、馴れ合うつもりはないから握手は結構だよ」

 挨拶と自己紹介を済ませると、シルベットは隣にいる猪頭にも自己紹介を促す。すると猪頭の男は、巨大な牙を口から覗かせながらニヤリと笑って手を差し出した。

「バングだ。足引っ張ったら後ろから撃つから、そのつもりで気張れよ、ヒーロー」


▶︎解説

 彼らは獣人傭兵軍団「グラッジドッグス」である。PC1が彼らについて知っているかどうかは自由にしてもいいが、少なくとも現時点で彼らと敵対する理由はない。もしPCがヴィラン組織であるという理由だけで彼らと対決しようとするようなら、GMは「空港にいる一般市民が巻き込まれる」などの理由で躊躇うように誘導すること。
 なお、彼らは「ブラックジャケットRPG」の舞台となるバスターバースではなく、あくまでも「デッドラインヒーローズRPG」の舞台であるプライムバースで生きてきた存在だ。したがって、「ブラックジャケットRPG」ルールブックに書かれている設定そのままの背景を持つわけではない。この世界ではまだレインドッグが姿を消していないかもしれないし、歪み石の鉱山を掌握していないかもしれない。細かな部分はGMとPLで相談して決めてしまうのもいいだろう。

 

▶︎状況2

 グラッジドッグスの面々と待つこと数分。ミゲルの乗る飛行機がついにやって来た。飛行機から降りてくる乗客は全員、旅行者を装った護衛である。そして彼らの中に埋もれるようにして、身なりのいい10~13歳ほどの少年がPC1の前にやって来る。

「こんにちは。ミゲル・バンシーです。あなたがPC1ですね?」
「そして、グラッジドッグスの皆さん……これからしばらくよろしくお願いします」

 

 ミゲルは大人びた口調で丁寧に挨拶すると、これからのスケジュールについて説明を始める。これから、日本で滞在するにあたって過ごすことになる東京都郊外の別荘へ向かうようだ。
 PC1とシルベットたちは、旅行者を装った護衛たちから任務を引き継ぎ、早速手配した車に乗り込んで別荘へ向かうことになる。

 

▶︎解説2

 口にこそ出さないが、ミゲルは超人種嫌いの父がグラッジドッグスを雇ったという事実に対し、若干の驚きを感じている。しかし彼の思惑は、むしろ彼らの任務が失敗し、自分が誘拐されることにある。PC1に対しても、この時点では決して心を開かないだろう。

 

▶︎状況3

 出発して数十分が経過した頃、目の前の道路が突如爆発。車は横転し、事態は急展開を迎える。何者かが発射したロケット弾が、道路もろとも吹き飛ばしたのだ。
 そして横転した車から脱出したPC1は、襲撃犯の姿を目の当たりにする。虚無僧だ。見間違いではない。虚無僧だ。虚無僧が、ロケットランチャーを構えている。イクサの開始を告げる、猛々しい尺八の音色がどこからともなく木霊した。

 

▶︎解説3

 この場面では時間的余裕はほとんどない。悠長に長セリフを吟じあげようものなら虚無僧たちの小銃で蜂の巣にされてしまうだろう。さっさと戦闘を開始してしまうことをお勧めする。

 

▶︎エンドチェック

①シルベット率いるグラッジドッグスと合流した。
②ミゲルとともに別荘へ出発した。

③山伏ドットコムの襲撃を受けた。

 

 

[イベント2 COM僧あらわる]

登場:PC1、2
場所:都内某所

 

▶︎状況1

 PC2のもとに、(街をパトロールしていたサイドキック、あるいはG6から)緊急の連絡が入る。どうやら街でヴィランが抗争を繰り広げているらしい。
 早速現場に向かうと、やたら戦闘力の高い虚無僧の集団が、周囲へ被害を撒き散らしながら戦っている。その相手は、獣人傭兵軍団グラッジドッグス。かつて超人特殊部隊"ネバーモア"から独立して活動するプロの傭兵組織である。そしてヒーローであるPC1も、なぜかグラッジドッグス側に参加して街中でドンパチを繰り広げていた。
 何が起きているのか。どうしてこんなことになったのか。この中で一番話の分かりそうなPC1に説明を求めてもいいだろう。無論、そんな余裕があったならの話だが……。

 

▶︎解説1

 PC1、2の関係性によって様々に描写できる場面であるが、最終的にPC2が事情を飲み込める形でオチがつくことが望ましい。なおミゲルは、今後の展開の都合により場面では登場しない。

 

▶︎状況2

 混迷を極める戦場で、熾烈な戦闘を繰り広げる戦士たち。しかしその戦場から、一台の車が脱出してこうとする。PCたちはそれに気付くが、追いかけようとした時、どこからともなく発射された弾丸がPC2の肩を撃ち抜く。
 銃撃を察知することすらできないほどの遠距離狙撃。PC2の負傷を目の当たりにしたシルベットは、明確な焦りと驚きを露わにする。

 

▶︎解説2

 脱出したのは、一人のCOM僧。彼はミゲルを拉致し、戦場を脱出したのである。しかしこの時点で彼は重傷を負っており、長くは運転できない。ミゲルのその後は、次のイベントから登場するPC3に委ねられることになる。
 また、PC2を狙撃して追跡を阻んだのは山伏ドットコムのバックアップに付いたブリッツクリーグである。

 

▶︎エンドチェック

①PC1とPC2が合流した。
②PC2が、ブリッツクリーグによって狙撃された。

 

 

[イベント3 少年との出会い]

登場:PC3
場所:都内某所

 

▶︎状況1

 市街地戦闘が勃発したという情報を得たPC3は、現場に向かって移動中である。しかしその道中、PC3は暴走車が歩道に突っ込みそうになっているのを目撃した。車を受け止める、あるいは市民を救い出すなどして、被害を未然に防がねばなるまい。

▶︎解説1

 車が暴走している理由は、運転していたCOM僧が気を失っていたからである。もしPC3が救助活動を拒否したとしても、奇跡的に被害はゼロで済むものとする。

 

▶︎状況2

 暴走車の運転手は、すでに事切れていた。その後部座席には、縛られた少年が座っている。彼の拘束を解いてやると、少年はPC3に自己紹介をする。

 

「僕はミゲル・バンシー。バンシーエンタープライズ副社長、マーヴ・バンシーの息子です。あなたは……ヒーローのPC3ですよね?」

 

 堂々とした振る舞いや、身につけているものの格から、彼の言葉が嘘ではないことがよく分かる。経済というこの社会のピラミッドにおける、頂点にある人間のそれを、PC3は感じることができるだろう。
 そしてミゲルは、PC3の手を引いて、足早に事故現場から去ろうとする。

 

「今は何も聞かず、一緒に来てください。あなたの協力が必要なんです」


 ……どうやらついていくしかなさそうだ。

 

▶︎解説2

 事故を放置していくことになってしまうが、そのことを咎められても、ミゲルは「一刻を争う事態なんです。事故は警察に任せましょう」と頑なに聞き入れようとはしない。それでも放置はできないと固辞するなら、ミゲルは「この先のレストランで待ちます。僕がまた捕まらないうちに、早く来てくださいね」と後で合流する約束を取り付ける。

 いずれにせよ、展開フェイズからの状況に深刻な齟齬が生じないように融通を効かせよう。

 

▶︎エンドチェック

①PC3とミゲルが出会った。

 

 

※※※

 

展開フェイズ

[イベント3 ミゲルの願い]

登場:PC3
場所:落ち着いて話のできる場所(例:レストラン、PC3のアジトなど)

 

▶︎状況1

 助けた少年は、自らを「ミゲル・バンシー」と名乗った。バンシーエンタープライズの副社長、「マーヴ・バンシー」の息子だ。

 彼は、超人種嫌いの父を会社から追放しようと目論む、叔父の「ディック・バンシー」の手の物によって誘拐されそうになっていると語る。ミゲルによると、ディック社長は腹違いの弟マーヴを排斥するため、あの妙な虚無僧に、ミゲルの拉致を依頼したらしいとのことである。

 

 ところがミゲルは、むしろ自分が叔父に誘拐された方がいいと考えていた。そうすれば、超人種を疎む父を止められるだろうと。

 ミゲルは超人種と旧人種が手を取り合い生きられる未来を歩むには、叔父のディックこそが正しいと告げた。

 

「これからの世界のため、父さんは……マーヴは排除されるべきだ。そのためなら僕は、喜んで叔父さんのところへ行くよ」

「叔父さんならきっと僕にひどい事はしない。PC3、僕を叔父さんのところへ連れて行って欲しいんだ」

 

 ミゲルをディックの元へ送り届ければ、無用の争いを回避し、かつマーヴの暴走を食い止めることができるかもしれない。だがそれはそれとして、ミゲルの決意はかなり壮絶だ。血の繋がった父親に対するあまりに厳しい態度に、PC3は何を感じるのか。

 

▶︎解説1

 PC3のクエリーイベントである。ミゲルとて、心の底から父を憎んでいるわけではないが、世界のためより良い選択をしなければならないと、自らを追い詰めている。そんな想いを汲み取ってあげてもいいし、事務的に彼の頼みを引き受けてもいい。

 

▶︎エンドチェック

①PC3がミゲルの願いに応じた。
②グリットを1点得た。

 

 

[イベント4 真の黒幕]

登場:PC3、1、2
場所:バンシーエンタープライズ日本支社

 

▶︎状況1 

 日本支社には、思いのほかスムーズに到着することができた。しかし当のディック社長は「何も知らない」の一点張りだった。ミゲルを誘拐しようとしたCOM僧達は、どうやらディックの名を騙る何者かに雇われたらしい。

 

「そんな、僕は確かにCOM僧から聞いたんだ! "ディック社長の遣いです"って……」

「残念だが、私はそんなCOM僧を雇った覚えはないんだよ、ミゲル」

 

 どうやらミゲルは、COM僧に騙されていたらしい。しかしそうなると、彼らの本当の雇い主は誰なのか。疑問が渦巻く社長室に、荒々しい足音とともにガラの悪い集団が押しかけてくる。シルベット率いるグラッジドッグスと、PC1、2だ。

 

「坊ちゃんに仕掛けた発信機を追跡してきたら、どうやら面倒な状況に巻き込まれちまったようだね」

 

▶︎解説1

 グラッジドッグスとPC1、2は、山伏ドットコムが撤退した後、ミゲルに仕掛けた発信機を頼りにここまでやって来た。マーヴに雇われた立場である彼らとしては、黒幕ではないディック社長と積極的に対立する理由はないが、社長と副社長の確執はよく知っている。
 また、登場人物の勢力図について、この辺で一度整理した方がいいだろう。ここまでの流れを、一度参加者全員で確認しておこう。

 

▶︎状況2 

 気まずすぎる状況で、硬直状態に陥る社長室。しかしそこへ、猛々しい尺八の音色がこだまする。

 

「ムッ、この音色は……! シルベット、伏せろォ!」

 

 バングが咄嗟にシルベットを押し倒すのと、社長室の壁を破壊してジェット錫杖に跨ったCOM僧の大群が押し寄せてくるのはほぼ同時のことであった。そしてCOM僧の電撃的な奇襲により半ば部屋が制圧されつつあるタイミングで、COM僧の一人が無線機をPC2に手渡してくる。

 

 無線機から聞こえてくるのは、男の声だ。声の奥では、ひゅうひゅうと風が吹き荒ぶ音が聞こえる。

 

「今、お前たちを隣のビルから狙っている。今すぐその部屋にいる全員を狙撃可能だ。言っておくが、お前が肩を撃たれただけで済んでいるのは偶然じゃない。その気になれば、僕はお前の眉間にぶち込むことだってできた」

「僕は無駄口を叩く奴が嫌いだ。迂闊なことを口にすればその都度一人ずつ射殺する。分かったら、黙ってゆっくり頷くんだ」
「ミゲルをCOM僧に渡せ。いいな」

 さて、ミゲルを引き渡すか、否か。決断の時だ。

 

▶︎解説2

 PC2のクエリーイベントである。PC2はミゲルを引き渡すか否か決めさせられる。もし断ったり、不明瞭な答えを返すと、そのたびに部屋にいるグラッジドッグスメンバーが一人ずつ狙撃され、射殺されてしまう。
 ここで部下が二人以上射殺されると、後々のチャレンジイベントの難易度が変化するので、GMは注意しておくこと。
 最終的にはミゲルを引き渡さなければならなくなるので、あらかじめPLに伝えて、どこに落とし所をつけるか決めてからロールプレイに入ろう。

 

▶︎状況3 

 ミゲルを引き渡すと、COM僧たちはジェット錫杖にまたがり空へ飛び去っていく。無線機の向こうにいたスナイパーも、もはや応答しない。……完全に、ミゲルを連れ去られてしまったようだ。

 

▶︎エンドチェック

①ディック社長が山伏ドットコムとの繋がりを否定した。
②PCが合流した。

③山伏ドットコムに包囲された。

④ブリッツクリーグの脅迫に答えた。

⑤グリットを1点得た。

 

 

[イベント5 マーヴの懺悔]

登場:PC全員
場所:バンシーエンタープライズ日本支社 ⇨ マーヴの別荘

 

▶︎状況1  

「やれやれ、ミゲルの坊やを守りきれないとは。アタシらも焼きが回ったねぇ」

 

 グラッジドッグスのリーダー・シルベットは、自分たちがマーヴに雇われ、ミゲルの護衛をしていたことをPCたちに改めて説明する。そして、襲撃を予見し自分たちを雇ったマーヴなら、山伏ドットコムを雇った黒幕のことについて何か知っているだろうと告げ、以下のような提案をする。

 

「わたしらはこのまま降りるつもりはないよ。これからクライアント……副社長サンのところへ行って、事情を全部問いただす。そうすればミゲルの坊やを奪還する手立てが見つかるかもしれない」

 

▶︎解説1

 この提案に乗れば、▶︎状況2へ進む。提案を断れば、このままシナリオは終了だ。

 

▶︎状況2

 シルベットたちとともに、マーヴの別荘を訪れるPCたち。当然、セキュリティガードの妨害を受けるが、そんなものに阻まれるグラッジドッグスではない。結局一同は、マーヴの寝室にまで上がり込むことになった。

 PCもしくはシルベットが事情を説明し、説得ないしは脅迫することで、マーヴは以下の情報を提供する。

 

 曰く、マーヴは超人種から異能の力を消し去る「異能減退薬」の開発を医療部門に行わせているらしく、それは不完全ながらもいくつもの実験で成功を収めているらしい。

 それを快く思わない何者かが、ディックの名を騙って山伏ドットコムを動かし、ミゲルを誘拐して開発を中止させようとしているというのだ。マーヴの元には、「ヘリオス」と名乗る事件の黒幕からの脅迫メールが届いている。

 マーヴは膝を折り、ヒーロー達に頭を下げる。「ヘリオス」からミゲルを奪還して欲しい。そのためならどんな報酬も出す。薬の開発も、気に入らなければ中止して構わない、と。

 ヒーローはどんな条件で、マーヴの依頼を飲むのだろうか。

 

▶︎解説2

 PC1のクエリーイベントである。もしプレイヤーが判断に迷うようであれば「超人種嫌いのマーヴが、自らの信条に反してでもグラッジドッグスを雇った」という事実から、ミゲルへの愛の本気度が伺えることを、GMから示唆してもいい。

 ここで「ヘリオス」という名前からタナシス・フェルミを連想できるかどうかは、PCそれぞれの過去やセッション履歴などから判断して構わない。少なくともマーヴは、世界的大富豪のタナシス・フェルミの正体が、犯罪ネットワーク「ゴッズ・4・ハイア」のボスであるなどと、夢にも思わないだろう。

 

▶︎エンドチェック

①シルベットとともにマーヴの別荘を訪れた。
②マーヴの依頼を飲んだ。

③グリットを1点得た。

 

 

[イベント6 ミゲル救出]

登場:PC全員
場所:さまざま

 

▶︎状況

 翌日から、ミゲル救出に向けて本格的な活動が始まった。グラッジドッグスとの共同戦線が幕を開ける。果たしてヒーローたちはミゲルを救い出すことができるだろうか。

 

▶︎解説 

 チャレンジイベントだ。一つの判定に挑めるのは一人だけである。PCがこのチャレンジを達成するには、合計3回のチャレンジ判定に成功する必要がある。なお[イベント4]にて隊員を二人以上死なせていた場合、グラッジドッグスの支援を受けにくくなる。その場合、全てのチャレンジ判定に-10のマイナス修正が乗る。

 

▶︎チャレンジ判定

・判定1 :隠密

 敵のスナイパーの正体を探る。

 成功すると、スナイパーの正体がブリッツクリーグであることが判明する。

 

・判定2 :経済、科学のいずれか

 戦いに向けて武器装備を調達、あるいは新開発する。

 成功したときの描写は自由にしてよい。

 

・判定3:知覚、作戦のいずれか

 ミゲルの居場所を突き止める。

 成功すると、さる海外の大富豪の別荘と地元では噂される、伊豆の屋敷にミゲルが囚われていることを突き止めることができる。

 

失敗:このチャレンジに成功しないまま展開フェイズを終了した場合、決戦フェイズでの戦闘でグリットを使用できなくなる。

 

 

[イベント7 トラップ屋敷]

登場:PC全員
場所:伊豆の屋敷

 

▶︎状況

 ミゲルが囚われている伊豆の屋敷に到着したPCたち。しかし先行偵察を行ったグラッジドッグスの隊員によると、どうやら屋敷には無数のトラップが張り巡らされているようだ。
 

▶︎解説 

 チャレンジイベントだ。なおこのチャレンジイベントは、トランプを使用する特殊な形式をとる。

 まず、1組のトランプの中から、AからKまで一枚ずつ取り出す。この時、スートは自由で構わない。そして取り出した13枚のトランプを、GMはよく切ってから、裏面を上にした状態で、以下に示す図の通りに並べる。これが、屋敷を示す簡易マップとなる。

 

(ゴール)

■■■

■■■

■■■

■■■

(スタート)

 

 PC達は一番下の列から屋敷に潜入し、進む先のカードを一枚ずつめくっていく。カードは数字に準じたイベントが発生する。そうやって進む先のカードをめくっていき、ゴールに辿り着ければ、このチャレンジイベントはクリアとなる。

 めくったカードのうち、絵札を除く数字の合計が25以上になってもゴールできていなかった場合は、チャレンジに失敗したとみなす。この時、リトライが残っていれば、1点消費することで、絵札を除く数字の合計を-10することができる。再び25以上になってもゴールできていなかった場合は、やはりチャレンジ失敗とみなす。チャレンジ失敗の時点でリトライが0だった場合、展開フェイズを終了する。そして失敗のペナルティとして、決戦フェイズでの戦闘時に[疲労]を受ける。

 

A:何もない。

 このトラップ屋敷には珍しく何の罠も仕掛けられていない。このまま行きたいところだが……。

 

2、3:アロースリット

 センサーが作動し、壁のスリットから矢が飛んできた! PC全員は〈運動〉判定で判定を行うこと。失敗した場合、1d6点のダメージを受ける。

 

4、5:シュート

 床に突如空いた穴に飲み込まれてしまった。穴の下には斜めになったトンネルになっており、PCたちはこれを滑り落ちてしまうことになる。このトンネルは、まだ表になっていないカードのいずれかに通じている。どのカードをめくらせるかは、GMが指定すること。

 

6、7:対人地雷

 対人地雷……いわゆるクレイモア地雷(あるいはその形状から「只」と表記されることもある)が巧妙に隠されていた。PCはそれぞれ〈知覚〉判定を行い、失敗したキャラクターは1d6点のダメージを受ける。

 

8、9:開かない扉

 なかなか開かない扉がある。それもそのはず、この扉は扉っぽく偽装された壁でしかないのだ。無駄に時間をロスしてしまったことで、めくったカードの合計が+1d6される。

 

10:シフティング・ウォール

 天井から滑り落ちてきた鉛の壁が、通路の前後をすっかり塞いでしまった。分厚い壁は頑丈で、びくともしない。〈知覚〉判定で脱出の手立てを探すこと。PCのうち誰も成功できなかった場合、めくったカードの合計を+1するごとに、PC一人の再挑戦が可能となる。

 

J:高圧電流

 床に高圧電流が流れている通路だ。迂回路はないので、何とか突破する手立てを探らなければならない。電流を解除するには、〈科学〉判定にPCのうち誰か一人が成功する必要がある。誰も成功できなかった場合、全員2d6点のダメージを受けながら高圧電流の床を踏破するしかない。


Q:スケベブック

 大変に性欲をそそる、スケベな本が落ちている。読んだキャラクターは、以下に示すうちいずれか一つの効果をランダムに受ける。

①とても素晴らしいスケベに癒された。サニティを1d6点回復。

②自分の趣味とは違った。特に効果なし。

③シルベットによく似た女優のスケベ写真を見つけた。サニティを2d6点回復。

④自分の趣味とはかけ離れていた。1d6点のショックを受ける。

⑤自分の趣味とあまりにもかけ離れていた。2d6点のショックを受ける。

⑥スケベブックの裏には地雷が仕掛けられていた。2d6点のダメージ受ける。

 

K:シルベットの手作りレーション

「これでも食って、精をつけておけ」

 そう言ってシルベットが取り出したのは、包み紙に包まれた携帯糧食・レーションだ。見た目は無骨だが、食べてみるとこれが想像よりはるかに美味い。グラッジドッグスの隊員たちも、普段慣れている食事に比べて遥かに美味いレーションの味に感激しているようだ。

「美味すぎます隊長! これはどこのレーションなんですか!」

「そ、そんなに喜ばなくたっていいだろっ。別に、大したものじゃないよ……」

 食べたキャラクターは、決戦フェイズの戦闘時、自らが与えるダメージ・ショックに+1点を得る。

 

※※※

 

決戦フェイズ

[イベント9 最強のヒットマン]

登場:全員
場所:屋敷の中庭

 

▶︎状況

 ついにミゲルの囚われた、屋敷の中庭にたどり着くPCたち。しかしミゲルは、助けに来たPCたちを見るや否や、真っ青な顔で叫ぶ。

 

「逃げて! これは罠だ!」

 

 その瞬間、ミゲルを囮にしたブリッツクリーグの狙撃がPC達に襲いかかる。その第一の犠牲となったのは、シルベットだった。

 

「ぐぁ……! しまった……ッ」

 

 脚を撃たれたシルベットは、部下のバングに担がれ何とか遮蔽の裏に避難できたが、これ以上無理はさせられないだろう。また、そこへ追い討ちをかけるようにして、山伏ドットコムのCOM僧たちもジェット錫杖に跨り飛来する。
 ___生きてみんなで帰るには、奴らを倒さなければならない!

 

▶︎解説

 チャレンジ1に失敗したまま決戦フェイズに突入した場合、PCは全員[浪費4]を負った状態となる。そしてチャレンジ2に失敗したまま決戦フェイズに突入した場合は、この決戦フェイズにおいてグリットを使用できない。

・勝利条件

 敵を全滅させる。 

・敗北条件
 PC全員が[戦闘不能]もしくはロストする。

・PC初期配置
 エリア1、または2

 

・NPC初期配置
 エリア3:COM僧(リーダー)

      COM僧(構成員)
 エリア4:ブリッツクリーグ

・NPC

 COM僧(リーダー): D2 p.37

 COM僧(構成員):D2 p.37

 ブリッツクリーグ:R2 p.111

 

 

※※※

 

余韻フェイズ

[イベント9 親子の結末]

登場:全員
場所:それぞれ

 

 ミゲルは救出され、事件は解決した。しかし、山伏ドットコムを操り、マーヴを脅迫しようとしていた黒幕・ヘリオスの存在を考えれば、ヒーロー達の戦いはこれから始まったと言えるかもしれない。

 とはいえ、これが一つの区切りになったのも確かだ。マーヴは今回の一件で考えを改め、今後は息子ミゲルの言葉に耳を貸すことを約束した。ミゲルの父に対する失望や絶望がそう簡単に覆るわけではないが、親子の絆はこれから紡ぎ直されていくことだろう。

 

 そしてクライアントの迎えた結末を見届けたシルベットは、部下達と共にアジトへ帰還する直前、PCたちに別れの挨拶をする。

 

「今回はとんでもない案件だったが、あんたらと一緒に戦うのも悪くなかったよ、ヒーロー」

「今度会うときは、果たして敵か味方か……まぁいずれにせよ"仲良く"できるのが一番だな」

 

 PC1に握手を求め、手を差し出すシルベット。PC1は握り返してもいいし、断ってもいい。

 

「狙撃成功率150%」FIN.