土曜日に芝居を見てきました。

俳優座『とりつくしま』
シアタートラム@三軒茶屋

舞台はシンプルでした。
中央に鉄骨の足場かジャングルジムかと思うような鉄骨の四角く組まれたもの。
これが場に応じてドアを彷彿させるものが出てきたり、台所を彷彿させるものが出てきたりします。

話としては、
死んだ人が現世の“物”に取り憑いて、残していった人を見守るというもの。
死んだ人は様々なものに取り付きます。
ピッチャーの試合中のパフパフするものに取り憑いて、中学最後の試合に臨む息子を見守る母、
カメラに取り憑いて孫の様子を見ようとするも、そのカメラは売りに出され、見ず知らずの初老の男を見守る事になったおばあちゃん。
尊敬しつつ恋い焦がれた書家の師匠が愛用するセンスに取り憑いた若くして亡くなった女性。
そんな中、何に取り憑くか決められずにいる青年。
最後に青年は取り憑くものを決めます。


演出をされてる方は、非常に音に神経を使っていると思います。
冒頭の降ってくる声の演出では劇場内を暗くし音が回っているかのように音が移動していきます。暗闇の中で観客は浮遊感に襲われます。
舞台後方のカーテンを移動させる際、滑車の音に合わせるかのように蝉時雨を被せます。(滑車の音もまるで蝉の声のよう)
劇中で出てくる補聴器に取り憑いた女性が喋る時はわざわざマイクを持って喋ります。これは恐らく、声の発生する場所を女性に特定させず、かつ、フラットに客席に届け、補聴器が思いを語っているようイメージさせる為だと思います。

話も良かったですね。
原作があるのですが、Twitterなど見ると原作ファンも満足みたいです。
僕は読んだこと無いです。
僕もうっかり泣いてましたからねぇ。
いえ、泣いたから良い作品というわけではないですが、少なくとも心を動かされる力がこの作品にはあったという事です。
人の思いをテーマにした作品ですし、身近な家族へ向けた思いということで誰しもが感情移入しやすかったのもあると思います。
また、奇麗事ばかりを並べているわけでもないので、それもまたスイカにかける塩のようにアクセントが効いていたのだと思います。

さっきから僕は何に対して泣いてしまったんだろうと思い返しているんですが…
何に泣けてしまったんでしょう…。
なんでしょうね…思い出せないんです。
このシーンに泣けた!って感じでもないからかもしれません。
見てる間にジワジワきたというような。 
ピータラビットで、お母さんにせっかく服を作ってもらって出掛けたのに帰りは裸で帰ってきた、というのを読んだときに感じた寂しさに似ているかもしれません。
人の思いが伝わらないもどかしさ。

嗚呼。
そうです。
今回のこの芝居のポイントは、
死んだ人は物に取り憑いて生きている人を見守る事が出来ますが、干渉する事が出来ないんです。
ただただ見守るだけなんです。
どんなに助けたくても、声をかけたくても見守ることしか出来ない。

そんな中でも、偶然、思いが重なったかのように思う瞬間がある。

マッサージ機になった中年男性が、ふと静かな夜に家族の思いに触れる話がありましたがそこら辺が上手く描かれてました。

そんな瞬間があるからこそ人は救われるし生きていけるんでしょうね。
今回のは死んだ人の話でしたが。

やー。いい、いいですよー。
俳優座。

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