劇団俳優座LABO vol.24
「犬目線/握り締めて」
@劇団俳優座5階稽古場(六本木)
8/5 14:00の回。

http://blog.engekilife.com/2009/08/haiyuuza-keiko.html

『演劇ライフ』
細かいことはここらへんが詳しい。

 学生時代の先輩が演出デビューしました。
 わぉ~。スゲー。
 
 ということで、拝見しました。
 面白かったです。

 まず、俳優座の稽古場での公演ということで一体どんなもの?
 言っても稽古場でしょう?
 大学の頃やった教室公演みたいなもの??
 会場に入るまでそんなことをグルグル考えてましたが、とんでもない。
 六本木の俳優座の劇場の裏から狭いエレベーターで5階へ。
 受付となっているフロアを通って稽古場へ。
 
 !

 ぱっと目に入ってきたのが緻密に作られた装置。
 客席は雛壇になっていて椅子が並べられている。
 ちょうど『中野あくとれ』くらいの大きさ。
 しかし、天井はコチラのほうが高いと思う。
 天井にはしっかりしたぶどう棚があり照明が吊れるようになっている。
 つまりはもう普通の劇場と変わりなかった。
 舞台設定は、あるアパートの入り口部分で、管理人室があり、エレベーターがあり、集合郵便受けがある。
 エレベーターはちゃんとボタンが付いていて押すと光るし、エレベーターが上下している表示も出る。
 郵便受けもよく古いアパートで見かけるタイプのものだ。
 壁は古びていて、雨跡が残っていたり、ポスターの剥し跡などがある。
 舞台奥には植え込みまである。
 この装置の緻密さは、まさに作品の世界観にふさわしいもので、簡略化されたものだったり、抽象的な舞台にしたら作品の雰囲気が損なわれたことだろう。
 また、この作りこんだ装置はこの劇場のサイズだったからこそ生きてくる。
 コンパクトなサイズの会場なので客席から舞台が近い。その為、装置の細部までよく見ることが出来、実際どこかのアパートの入り口部分を眺めているのと同じくらいの距離感で見ることになるので、作品の世界にすんなりと入り込める。覗き見ているような。
 恐らく、これより大きな劇場で同じようなことをやろうとしても出来ないはずだ。距離感が違う。覗き見る雰囲気は出なくなってどちらかというと傍観する雰囲気になったはずだ。もしその状態だったら間休憩挟んで二幕は飽きてしまったかもしれない。
 この作品はこの劇場の広さがジャストフィットで緻密な装置は作品を成立させるのに必要不可欠な要素だったのだと思う。

 客入れも、音楽などが流れているのではなく、虫の声だけ。
 これもまた、作品の世界にスッと入っていける手伝いをしている。
 後で、先輩に聞いたところ、俳優座では小劇場のように音楽を流すということはあまりやらないそうだ。自分がいかに小劇場基準で芝居を見ているかを知ることになった。ちょっと恥ずかしい。
 音も良かった。休憩前の暗転でセミの声が流れるのだが、劇場をグルグル回るように調整されていたり、舞台奥で叫ぶシーンで叫び声にエコーがかかるようにしていたり(普通の反響ではないと思うんだよな、あれ。多分マイクで拾ってエコーかけてたのだと思う。違ってたらゴメンなさい)。

 内容的には、『17歳のカルテ』に近いものを感じる・・・かな・・・?
 普通と異常の違いってなんだ?ということが描かれている。
 それは、ちょっとした加減の違いなのだと。
 例えば、ミリタリー(コス?)系マニア的なキャラクターが出てくる。部屋の中で兜かぶったりしている。
 それを見たら
「変わった人だなぁ」
とは思うけど、
「まぁ好きなんだろうねぇ」
くらいで終わるだろう。
 でも、兜かぶって兵隊の格好して武器(なんだっけな良く見えなかったんだけど刀?)持って路上をウロウロしていたら、これは「まぁ好きなんだろうねぇ」では済まなくなってくる。
 また、子供が好きといっても、子供と話をしたい→遊びたい→触りたい→犯したい。程度によって普通の範囲を超えてしまう。
 それは個人と社会の触れ幅なのだろう。
 正常というのはカッコたるものではない。
 今いる場所からちょっとヨロけたら異常に足を突っ込む可能性は誰にでもある。
 その差はちょっとしたことなのだ。
 それが、前半から後半に向けて、登場人物達は、徐々に普通の皮を剥ぎ取られて内面をどんどん剥き出しにしていく。
 そして、それぞれの異様な内面を見て異様な他人に自分の姿を見つける。
 女性の部屋に入り込み、女性の服を着ることに喜びを見出す男性に「この人は私と同じだ」と感じたりする。


 ネタの部分では、あるシーンでガンダムネタがふんだんに盛り込まれていて、1stガンダムのセリフだけでつなぎ合わせてそのシーンが成立しているのは圧巻。
 しかし、年配の人も多かったので、そういった方々には何が何やらだったろう。
 そして、
「させるか!」
「あ、アムロ・レイ」
の最初のやりとりを聞いて即座に笑った人が数名いたわけですが、うがった見方をすれば、このシーンはヲタクリトマス紙で、「あ、あそこにヲタクがいる」というのが分かってしまうという恐ろしいシーンでもあったのでした。結構、有名なセリフからマイナーなセリフから色々出てきたのでヲタクの度合いも測れるようになっていた。(スレッガーのセリフからミハルのセリフから、色々。分からないのもあったし・・・)

 とにかく、良いものを見ました。
 演出デビューおめでとうございました。