「もしもし」

太郎の助手席で、携帯を手にしました。

熊谷さんからと、すぐに分かりました。

出るのはまずいと思いましたが、変に隠す方がよくないと思ったんです。


「デート中?」

「はい」

「セックスしたのか」

「いいえ」

「すみません、今外出先なので、切ります。」

熊谷さんの声が太郎に聞こえてしまいそうだったので、電話を切りました。

「誰?」

「会社の人

「なんで休みの日に電話してくるわけ?」

「…」

「なんなんだよ!」

さっきの会話が、太郎にも聞こえていたのか、太郎はものすごく怒りました。

太郎は、ハンドルに頭を何度もたたき付け、泣き出しました。

「ごめん…」

太郎は思い切りアクセルを踏み、100キロ近いスピードで坂を下り始めました。
私はそのまま、死ぬんじゃないかと覚悟しました。