一歩一歩、河の淵に近付いて行く母に赤子の様に食事を与える。
母はどんな気持ちで私に食事を与えていたのだろう。
今の私には少しでも河までの距離を長くしたい、それだけだ。
出来ればもう一度、リブを連れて公園に散歩に行きたい。
それだけだ。
母の祈りも同じだったのだと今は思える。
元気に育って欲しい。
ただそれだけ・・・。
唯一の救いは末期がんであるが激しい痛みが無いこと。
それだけでも有り難いと思う。
苦痛に耐える本人と見守る家族の辛さはいかばかりだろう。
最近はちゃんとした会話が出来づらくなった。
言葉も聞き取りづらく意識もはっきりしていないような感じだ。
ただ、昨日・・・。
くさいセリフを母の耳元で囁いた。
「かあさん、ありがとう。貴方の息子で幸せでした」
同じ病室の患者さんに聞こえると恥ずかしいので
耳元で囁いた。
聞いているのかいないのか、分からない反応だった。
でも少しして、母の眼から涙が溢れた。
母はいつまでも母だ。
母さんありがとう。