スコットタント 13
「この根っこは貴方の仕業ですか?」
スコットタントに問い掛けに大きなガジュマルの木が答えた。
「そうだ」
「どうして僕たちをとうせんぼするのですか?」
「もう一人にはなりたくないからだ」
「でも僕たちはこれから旅に出なければならないんです」
「そうよ。これから果てしなく遠い所へ行くんだから邪魔しないでよ」
怒りながら言ったメイルの後に呆れ顔でタキが続けた。
「ま、一人になってしまう気持ちは分からなくもないけどさ」
すると大きなガジュマルの木が更に怒った声で言った。
「お前達に何が分かる!絶対に行かせやしない」
辺りを囲っている根っこは更に高く伸びた。
「どうやら聞く耳はなさそうですね」
チキはスコットタントを見上げて言った。
するとメイルがスコットタントが通れそうな根の隙間を見つけた。
「タント、あそこから」
「チキ、タキこっちだ」
全員が隙間に向って走り始めた。
だが後少しのところで新たな根がしたからそそり出るとスコットタント達は完全に逃げ場を失った。
「諦めるんだな。お前達はずっとここにいるんだ」
メイルは今にも泣き出しそうな顔でスコットタントに言った。
「タントもう駄目だよ。チキとタキだけでも上から」
するとチキは眼を閉じて力無く頭を二度三度振りながら言った。
「タントに乗って何時間も歩いて来ました。隠れる場所のない平原で隼やフクロウに襲われた
らひとたまりもないでしょう」
スコットタントは木に向って歩きながら語り掛けた。
「僕は太陽の光で動く事ができますが皆はずっと此処にいたら生きて行くことは出来ません。
勿論僕もいつかは止まってしまうでしょう。そうなればあなたはまた一人になってしまいます。
今僕達を留めてもやっぱり一人になってしまいます」
「それでもいい。少しの間でも誰かが居てくれればそれでいいんだ」
それを聞いてスコットタントはとっても悲しい気持ちになった。
「本当にそれでいいんですか?」
ガジュマルの木はスコットタントの問いに何も答えなかった。
だが、やがてガジュマルの木は苦しい胸の内を話し出した。
「かつて此処には大きな森が在った。大地と共に生きていた人間や動物達や森の精霊達が
楽しく暮らしていた。だがやがて人間の文明が発達すると彼等は森を開き畑に変へ大きな火を
使うようになった。だが木を根こそぎ切り倒し、大地を掘り返し鉄を作るようになると川は
干上がり大地が枯れていった。すると人間達は此処を出て行った。仲間達を切り荒れ野原にして
勝手に出て行った。そして俺は一人ぼっちになった。木の仲間がたくさんいた。俺の身体をリスや
子供たちが登った、俺の身体に寄り添って小鳥や若者が愛をはぐくんだ、俺が作った木陰で
老人が昼寝をしていた。俺の作る木の実を動物たちが食べた。俺はずっとずっとみんなと
仲間だと思っていた。皆共に暮らし、本当に幸せだった。でも俺はここに残された。俺だけ
が残された。寂しかった。本当に寂しかった。暗い夜に一人で星空を眺めている俺の気持ちが
お前達に分かるか?」
大きなガジュマルの木の悲痛な叫び声が小さなスコットタント達に重く圧し掛かった。