たんと 9 | 尾川永次のブログ

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小説、ポエム、旅日記などなど徒然なるままに行きたいと思っています

       スコットタント 9

歩き出して二時間、森は遥か遠くになった。
辺りは多少の起伏はあるものの、何処までも続く平原をスコットタントは
もくもくと歩いていた。
「タントー、出してー」
壷の中からメイルが声を掛けた。
「周りに森は無いよ」
「大丈夫、壷の中は森に居るのと同じなんだ。元気になったよ」
「そうなんだ」
スコットタントは立ち止まるとしょっていたバックから壷を取り出して栓を抜いた。
すると元気になったメイルが出て来て肩に乗った。
「やっぱり外がいいな。タント、あそこの岩に登ってみようよ。見晴らし良くて
 気持ちいいよ、きっと」
少し先の小高い岩山をメイルは指差した。
「そうだね。この先に何が在るか見ておきたいしね」
二人は高さが二十メートルほどの小高い岩山を登った。
青い空にはぐれ雲がぽつんぽつんと浮かんでいる。
遥か遠くが見渡せる頂上に登ると平原を吹き抜ける風が頬に当った。
「景色もいいけど風が気持ちいい」
メイルが両手を広げ眼をつぶって気持良さそうに深呼吸するとスコットタントも
嬉しそうに遠くを見つめて頷いた。
「うん」
メイルはスコットタントを観た。
「タント風分かるの?」
「風を感じる機械が付いてるから吹いてる事は分かるんだけど風が
 気持ちいいかどうかは分からないんだ。それよりメイルの気持良さそうな
 顔が嬉しいんだ」
「へー、そうなんだ。メイルも嬉しいよ」
「何が?」
「同じ時に嬉しい気持になるってことが」
「そうだね」
その時、二人以外の声が聞こえて来た。
「気持いいだの、嬉しいだのと、
これから待ち受ける試練を前に御気楽な
 もんですなー」
「極楽トンボとはこの事を言うのだろうね」
それは聞き覚えのある声だった。