連休中、ひょんなことから、親類の老画家のアトリエにお邪魔することになった。そこは初めての世界。



次の作品の発想のために、室内に配置してある作品のレイアウト変更のお手伝い。天井の高いアトリエの上方の壁に、重たい額入りの絵画をかけ替える。高齢になると難しい作業だが、次の作品が生まれるためには大切なことのようだ。



アトリエは創作のための神聖な場所。ここに入るのは初めて。老画家の後ろから、少し緊張しながらも、興味津々でアトリエに入る。その入り口で目についたのは、壁に貼った手書きのことば【良い絵の3条件】だった。


新鮮であること

独自性があること

説得力があること



長らく企業で研究開発の現場で働いてきた私としては、1番、2番には共感。これは研究者として必須の心構えなのである。発明者として自分ではいつも新規性、進歩性を重んじてきた。



新規性とは、特許出願の時に発明が未だ社会に公開されていないことをいう。一方、進歩性とは、特許出願の時にその発明の属する分野において通常の知識を有する当業者から、容易に発明できない程、創作困難であることをいうのだ。長いことこの世界で過ごしてきた。



新製品開発に携わる研究者も、想像の世界に携わる画家も、根底には同じものが流れていたのだと思うと、なんだか嬉しかった。



それ以上に感心したのが3番目の言葉「説得力があること」。2番目までなら自分の世界に閉じこもっているとも言える。3番目があるからこそ、社会との繋がりが生まれる。ここには葛藤があり、産みの苦しみもあるのだろう。



「説得力」この言葉は積極的であり攻撃的でもある。キャリアコンサルティングを勉強していく過程で、自分の中では封印してきたようにも感じる。だから余計に印象に残ったのかも知れない。



画家に求められる説得力とは、絵に解説文が添えられ、読んで理解するのとは違う。絵を見た人が感じるものでないとならない。はっとするのでも、じわ〜っと感じるのでも感じ方は様々だ。受け止め方はいろいろあっても良いが、その感性に訴えるのだ。



この連休に老画家の展覧会やアトリエ訪問から受けた刺激を自分の中で昇華し、これ糧として、自分たちの来月の展覧会に臨めるだろうか。連休も残りあとわずか。いま、気持ちが引き締まる思いである。