/復活・あなたのギア拝見
[2010年02月19日(金)]
らうんどあばうと/vol.543
柏、某地鶏屋に向かうトダメイジの足取りは重かった
さっきから何度もメールをチラ見するのだが、訝りながらもホールインワンという文字が網膜に焼きつき目の前から離れない・・・
「しかし・・・」
例えば100歩譲って、仮に倶楽部のバカ連中の誰が達成したとしても何とか乗り切れる
だがしかし、よりによってこいつとは・・・
M本の時もそうだったのだが、自分が何かしらの切っ掛けとなって、しかも、せこくもちょっとでも自分が優位に立てる初心者のデクの棒を選んでるはずなのに、
なんだってホールインワンなんか出しやがんだ!
と、18年かかってやっと100を切ったこの男の心の叫びが一瞬声に出かかるが、階段からコケそうになったので我に返る
まぁ、もしかしたらオレを騙すためのウソかもしんないしネ
などと、そんなことをしても誰の得にもならないことは重々承知の上、それでも未だ信じがたい知らせについてグダグダ考えているうちに、潜りなれた暖簾の前まで来たのだが、まだ女々しくも帰ろうか、などと躊躇しながらも、気がつけば奥の間の連中が屯している座敷の前にいる
ここでトダメイジの最終的な結論は、「ヤツのスコアは一体・・・」
そう、自分が遂こないだ出したばかしのベストに対し、どうだったのか?ということであった
(ホールインワンじゃおまえ、・・・100どうよ???)
なんだか連中は盛り上がっていて、影が薄まりかけてる自分には気づかないようだけれども、まず先に目に入ったのは、
一番手前に座っている(オレが連れてきたはずの小物の)hitoくんのこれでもか!という笑顔であった
(やっとスキになってきたのに、ゴルフ・・・)
さて、この男が登場する前に、実は反省会(という名の飲み会)では、丁度トダメイジの話題で盛り上がっていたのだ
「スイマセン!」しか連呼しないhitoくんは置いといても、大方が軽い悪口で、やれヤツのゴルフ生命は終わっただの、やれ間違いなく(道具の)クラブ
置くね!、とか、2度と来ないんじゃん?的な、本当に分かりやすいトダメイジのトリの頭を肴に酒をくらっていた
なので、ぽつんねんと突っ立ていたこの男に一瞬誰も気づかなかったのだが、幽霊よりも薄いドライアイスのような負のオーラを纏ったこのダメ人間の登場には、今までバカ笑いしていたメンバーもギクリと驚いた
だがここで、実はトダメイジの登場を心待ちにしていた人間が一人いた
その名は風来坊、
今日のイベントの発起人である
ここ数カ月、とんと倶楽部の活動にはご無沙汰だったのであるが、それは家庭や仕事上の諸所といったのっぴきならない事情があったにせよ、精神的とまでは行かないまでも個人的なモチベーションの問題の所為もあった
それは一種の気の病といってもいいかもしれない
その病の名は、(自分で勝手に呼んでいるのだが)「奇跡的風来坊風伝説欠乏症」
すでに倶楽部の殆どの方がご存じであるかと思うが、参加して2年半近く、
数々の伝説・・・というより眉唾な迷信を作ってきた
例えばティショットを林に打ち込み、ダボ確実な絶対的状況であるにもかかわらず、「ありえないリカバーショット」でスコンとボールがグリーンを捉えるだけでなく、こともあろうかオッケーバーデ―の範疇に転がりこんだり、ヘタをしたらそれがお約束のように入りイーグルとか、
酔った勢いで1mのイージーパットをガツンと打ったはいいものの、物凄くオーバーし難易度が激増しした返しの下り5mがどんな魔法なのか、あっさり入ったりと、
しかし、それは経験や技術からくる研ぎ澄まされ計算しつくされたショットであるならいざ知らず、全く意図すらされてない、時には「ああ~」とか「うあ~」とかの奇声を伴い、なんとなく打ったらそうなった的な摩訶不思議なものであるから同伴競技者はたまらない
しかも続くんだ、これが!
そして、カップから当然自分の実力のようにボールが拾われた時、そこにいくつかの殺意に似たものが生まれるのは当然であった
人はこれを「風来坊の量子学的パラレルワールド」と呼んだが、飲酒に伴う邪拳、酔八仙拳ゴルフバージョンとも呼び、恐れを隠すように忌み嫌っていた
だがしかし、この迷信にも陰りが見え始めた
某コースの会員権を購入し、少しの実力と例の摩訶不思議な現象によってとんとん拍子にAクラス、ハンデ
10までいったものの、そこからがどうも芳しくない
今までは、酒を飲むことによって、目の前の現実を自分のパラレルワールドに置き換え、思い込みによる虚構とすり替えることによって現実の結果に照らしてきたのだが、競技に置いてシビアにスコアを意図的に少なく抑えるという究極の事実に、ちっさいメンタルに設置されたマシーンが許容範囲を超え、悲鳴を上げ始めていたのである
Aクラスに入ってからスコアが伸びないことでの自尊心の傷つき、
それに加え、折からの景気悪化に伴う両者からのプレッシャーである
伝説など出ようはずもない
実はこの日も、43、44だかでナイスゴルフだったにもかかわらず、風来坊には全く納得いかないものであった
それは、自分が企画した倶楽部イベントであるにもかかわらず、「奇跡」が一つもなかったからである
それだけではない、
何と目の前で、自分が今まで打ちたててきた金字塔全てがあっさり!、
トップで半分以上転がってしかもカップに入るという真の奇跡、人生でまだゴルフ4ラウンド
目、倶楽部イベント参加たった2回目の若造がっやてのけた天文学的に確率の低い1発のフロック、「転がしのホールインワン」という絶対的なハンマーに叩き壊されたのである!
倶楽部の中で自負をしていた「元祖・伝説製造マシーン」というアイデンティティが音を立てて崩れた瞬間であっただけでなく、自身もやったことがないという驚きとともに、ゴルフ歴25年間というキャリアもが崩れ去ろうとしていたのだった
そんな訳で、かみさんにも中々頭が上がらないという親近感的共通点を持ちながら、あらゆる格下に打ちのめされてきたダメキング・トダメイジの登場には、心底救われたような気がしたのはいうまでもない
トダメイジはここでまた、傷心の風来坊にカモにされたというよりはある意味、踏みにじられることにかけては神の域まで昇華された、といってもいいかもしれない
そして、誰に語るともなく、「あのショットがいつもならガシャンとピン
に当たるンだよ!(笑)」というもう一つの世界で起こった風来坊のお伽噺が空しく響くのと同時に、「そうそう」と相槌を打つ周りの空気も微妙に揺れたのだった
そんなところで登場である
ワンテンポ遅れて周りから意味ありげなヤンヤの声援が上がる
「いよーッス!」と、何事もなかったようにトダメイジが座敷に上がり込み、ドカッと座る
そして、スムーズに出されたおしぼりで手と首周りを拭き、すでに顔の一部と化したメガネをクイッと人差指で上げ、落ち着きを払って生ビールを中ジョッキサイズで注文した後、
こちらに向き直り、第一声が、
「な、なんかやったんだって、オマエ、
で、ススススススッススコアは???」
大方の予想通り、落ち着き払った態度はフェイクと判明したが、レンズの反射で窺えない目は明らかに怒気の籠った三白眼である
H 「スイマセン、メイジサン、106ッス、スイマセン」
その刹那、力が抜けたように三白眼は安堵しそして、ほんの極く少しであったのだが、涙が滲んだ
H 「ホント、スイマセン!」
しかし、それに気づいたものは誰もいない
(多分)つづく
らうんどあばうと/vol.543
柏、某地鶏屋に向かうトダメイジの足取りは重かった
さっきから何度もメールをチラ見するのだが、訝りながらもホールインワンという文字が網膜に焼きつき目の前から離れない・・・
「しかし・・・」
例えば100歩譲って、仮に倶楽部のバカ連中の誰が達成したとしても何とか乗り切れる
だがしかし、よりによってこいつとは・・・
M本の時もそうだったのだが、自分が何かしらの切っ掛けとなって、しかも、せこくもちょっとでも自分が優位に立てる初心者のデクの棒を選んでるはずなのに、
なんだってホールインワンなんか出しやがんだ!
と、18年かかってやっと100を切ったこの男の心の叫びが一瞬声に出かかるが、階段からコケそうになったので我に返る
まぁ、もしかしたらオレを騙すためのウソかもしんないしネ
などと、そんなことをしても誰の得にもならないことは重々承知の上、それでも未だ信じがたい知らせについてグダグダ考えているうちに、潜りなれた暖簾の前まで来たのだが、まだ女々しくも帰ろうか、などと躊躇しながらも、気がつけば奥の間の連中が屯している座敷の前にいる
ここでトダメイジの最終的な結論は、「ヤツのスコアは一体・・・」
そう、自分が遂こないだ出したばかしのベストに対し、どうだったのか?ということであった
(ホールインワンじゃおまえ、・・・100どうよ???)
なんだか連中は盛り上がっていて、影が薄まりかけてる自分には気づかないようだけれども、まず先に目に入ったのは、
一番手前に座っている(オレが連れてきたはずの小物の)hitoくんのこれでもか!という笑顔であった
(やっとスキになってきたのに、ゴルフ・・・)
さて、この男が登場する前に、実は反省会(という名の飲み会)では、丁度トダメイジの話題で盛り上がっていたのだ
「スイマセン!」しか連呼しないhitoくんは置いといても、大方が軽い悪口で、やれヤツのゴルフ生命は終わっただの、やれ間違いなく(道具の)クラブ 置くね!、とか、2度と来ないんじゃん?的な、本当に分かりやすいトダメイジのトリの頭を肴に酒をくらっていた
なので、ぽつんねんと突っ立ていたこの男に一瞬誰も気づかなかったのだが、幽霊よりも薄いドライアイスのような負のオーラを纏ったこのダメ人間の登場には、今までバカ笑いしていたメンバーもギクリと驚いた
だがここで、実はトダメイジの登場を心待ちにしていた人間が一人いた
その名は風来坊、
今日のイベントの発起人である
ここ数カ月、とんと倶楽部の活動にはご無沙汰だったのであるが、それは家庭や仕事上の諸所といったのっぴきならない事情があったにせよ、精神的とまでは行かないまでも個人的なモチベーションの問題の所為もあった
それは一種の気の病といってもいいかもしれない
その病の名は、(自分で勝手に呼んでいるのだが)「奇跡的風来坊風伝説欠乏症」
すでに倶楽部の殆どの方がご存じであるかと思うが、参加して2年半近く、
数々の伝説・・・というより眉唾な迷信を作ってきた
例えばティショットを林に打ち込み、ダボ確実な絶対的状況であるにもかかわらず、「ありえないリカバーショット」でスコンとボールがグリーンを捉えるだけでなく、こともあろうかオッケーバーデ―の範疇に転がりこんだり、ヘタをしたらそれがお約束のように入りイーグルとか、
酔った勢いで1mのイージーパットをガツンと打ったはいいものの、物凄くオーバーし難易度が激増しした返しの下り5mがどんな魔法なのか、あっさり入ったりと、
しかし、それは経験や技術からくる研ぎ澄まされ計算しつくされたショットであるならいざ知らず、全く意図すらされてない、時には「ああ~」とか「うあ~」とかの奇声を伴い、なんとなく打ったらそうなった的な摩訶不思議なものであるから同伴競技者はたまらない
しかも続くんだ、これが!
そして、カップから当然自分の実力のようにボールが拾われた時、そこにいくつかの殺意に似たものが生まれるのは当然であった
人はこれを「風来坊の量子学的パラレルワールド」と呼んだが、飲酒に伴う邪拳、酔八仙拳ゴルフバージョンとも呼び、恐れを隠すように忌み嫌っていた
だがしかし、この迷信にも陰りが見え始めた
某コースの会員権を購入し、少しの実力と例の摩訶不思議な現象によってとんとん拍子にAクラス、ハンデ 10までいったものの、そこからがどうも芳しくない
今までは、酒を飲むことによって、目の前の現実を自分のパラレルワールドに置き換え、思い込みによる虚構とすり替えることによって現実の結果に照らしてきたのだが、競技に置いてシビアにスコアを意図的に少なく抑えるという究極の事実に、ちっさいメンタルに設置されたマシーンが許容範囲を超え、悲鳴を上げ始めていたのである
Aクラスに入ってからスコアが伸びないことでの自尊心の傷つき、
それに加え、折からの景気悪化に伴う両者からのプレッシャーである
伝説など出ようはずもない
実はこの日も、43、44だかでナイスゴルフだったにもかかわらず、風来坊には全く納得いかないものであった
それは、自分が企画した倶楽部イベントであるにもかかわらず、「奇跡」が一つもなかったからである
それだけではない、
何と目の前で、自分が今まで打ちたててきた金字塔全てがあっさり!、
トップで半分以上転がってしかもカップに入るという真の奇跡、人生でまだゴルフ4ラウンド 目、倶楽部イベント参加たった2回目の若造がっやてのけた天文学的に確率の低い1発のフロック、「転がしのホールインワン」という絶対的なハンマーに叩き壊されたのである!
倶楽部の中で自負をしていた「元祖・伝説製造マシーン」というアイデンティティが音を立てて崩れた瞬間であっただけでなく、自身もやったことがないという驚きとともに、ゴルフ歴25年間というキャリアもが崩れ去ろうとしていたのだった
そんな訳で、かみさんにも中々頭が上がらないという親近感的共通点を持ちながら、あらゆる格下に打ちのめされてきたダメキング・トダメイジの登場には、心底救われたような気がしたのはいうまでもない
トダメイジはここでまた、傷心の風来坊にカモにされたというよりはある意味、踏みにじられることにかけては神の域まで昇華された、といってもいいかもしれない
そして、誰に語るともなく、「あのショットがいつもならガシャンとピン に当たるンだよ!(笑)」というもう一つの世界で起こった風来坊のお伽噺が空しく響くのと同時に、「そうそう」と相槌を打つ周りの空気も微妙に揺れたのだった
そんなところで登場である
ワンテンポ遅れて周りから意味ありげなヤンヤの声援が上がる
「いよーッス!」と、何事もなかったようにトダメイジが座敷に上がり込み、ドカッと座る
そして、スムーズに出されたおしぼりで手と首周りを拭き、すでに顔の一部と化したメガネをクイッと人差指で上げ、落ち着きを払って生ビールを中ジョッキサイズで注文した後、
こちらに向き直り、第一声が、
「な、なんかやったんだって、オマエ、
で、ススススススッススコアは???」
大方の予想通り、落ち着き払った態度はフェイクと判明したが、レンズの反射で窺えない目は明らかに怒気の籠った三白眼である
H 「スイマセン、メイジサン、106ッス、スイマセン」
その刹那、力が抜けたように三白眼は安堵しそして、ほんの極く少しであったのだが、涙が滲んだ
H 「ホント、スイマセン!」
しかし、それに気づいたものは誰もいない
(多分)つづく
柏、某地鶏屋に向かうトダメイジの足取りは重かった
さっきから何度もメールをチラ見するのだが、訝りながらもホールインワンという文字が網膜に焼きつき目の前から離れない・・・
「しかし・・・」
例えば100歩譲って、仮に倶楽部のバカ連中の誰が達成したとしても何とか乗り切れる
だがしかし、よりによってこいつとは・・・
M本の時もそうだったのだが、自分が何かしらの切っ掛けとなって、しかも、せこくもちょっとでも自分が優位に立てる初心者のデクの棒を選んでるはずなのに、
なんだってホールインワンなんか出しやがんだ!
と、18年かかってやっと100を切ったこの男の心の叫びが一瞬声に出かかるが、階段からコケそうになったので我に返る
まぁ、もしかしたらオレを騙すためのウソかもしんないしネ
などと、そんなことをしても誰の得にもならないことは重々承知の上、それでも未だ信じがたい知らせについてグダグダ考えているうちに、潜りなれた暖簾の前まで来たのだが、まだ女々しくも帰ろうか、などと躊躇しながらも、気がつけば奥の間の連中が屯している座敷の前にいる
ここでトダメイジの最終的な結論は、「ヤツのスコアは一体・・・」
そう、自分が遂こないだ出したばかしのベストに対し、どうだったのか?ということであった
(ホールインワンじゃおまえ、・・・100どうよ???)
なんだか連中は盛り上がっていて、影が薄まりかけてる自分には気づかないようだけれども、まず先に目に入ったのは、
一番手前に座っている(オレが連れてきたはずの小物の)hitoくんのこれでもか!という笑顔であった
(やっとスキになってきたのに、ゴルフ・・・)
さて、この男が登場する前に、実は反省会(という名の飲み会)では、丁度トダメイジの話題で盛り上がっていたのだ
「スイマセン!」しか連呼しないhitoくんは置いといても、大方が軽い悪口で、やれヤツのゴルフ生命は終わっただの、やれ間違いなく(道具の)クラブ 置くね!、とか、2度と来ないんじゃん?的な、本当に分かりやすいトダメイジのトリの頭を肴に酒をくらっていた
なので、ぽつんねんと突っ立ていたこの男に一瞬誰も気づかなかったのだが、幽霊よりも薄いドライアイスのような負のオーラを纏ったこのダメ人間の登場には、今までバカ笑いしていたメンバーもギクリと驚いた
だがここで、実はトダメイジの登場を心待ちにしていた人間が一人いた
その名は風来坊、
今日のイベントの発起人である
ここ数カ月、とんと倶楽部の活動にはご無沙汰だったのであるが、それは家庭や仕事上の諸所といったのっぴきならない事情があったにせよ、精神的とまでは行かないまでも個人的なモチベーションの問題の所為もあった
それは一種の気の病といってもいいかもしれない
その病の名は、(自分で勝手に呼んでいるのだが)「奇跡的風来坊風伝説欠乏症」
すでに倶楽部の殆どの方がご存じであるかと思うが、参加して2年半近く、
数々の伝説・・・というより眉唾な迷信を作ってきた
例えばティショットを林に打ち込み、ダボ確実な絶対的状況であるにもかかわらず、「ありえないリカバーショット」でスコンとボールがグリーンを捉えるだけでなく、こともあろうかオッケーバーデ―の範疇に転がりこんだり、ヘタをしたらそれがお約束のように入りイーグルとか、
酔った勢いで1mのイージーパットをガツンと打ったはいいものの、物凄くオーバーし難易度が激増しした返しの下り5mがどんな魔法なのか、あっさり入ったりと、
しかし、それは経験や技術からくる研ぎ澄まされ計算しつくされたショットであるならいざ知らず、全く意図すらされてない、時には「ああ~」とか「うあ~」とかの奇声を伴い、なんとなく打ったらそうなった的な摩訶不思議なものであるから同伴競技者はたまらない
しかも続くんだ、これが!
そして、カップから当然自分の実力のようにボールが拾われた時、そこにいくつかの殺意に似たものが生まれるのは当然であった
人はこれを「風来坊の量子学的パラレルワールド」と呼んだが、飲酒に伴う邪拳、酔八仙拳ゴルフバージョンとも呼び、恐れを隠すように忌み嫌っていた
だがしかし、この迷信にも陰りが見え始めた
某コースの会員権を購入し、少しの実力と例の摩訶不思議な現象によってとんとん拍子にAクラス、ハンデ 10までいったものの、そこからがどうも芳しくない
今までは、酒を飲むことによって、目の前の現実を自分のパラレルワールドに置き換え、思い込みによる虚構とすり替えることによって現実の結果に照らしてきたのだが、競技に置いてシビアにスコアを意図的に少なく抑えるという究極の事実に、ちっさいメンタルに設置されたマシーンが許容範囲を超え、悲鳴を上げ始めていたのである
Aクラスに入ってからスコアが伸びないことでの自尊心の傷つき、
それに加え、折からの景気悪化に伴う両者からのプレッシャーである
伝説など出ようはずもない
実はこの日も、43、44だかでナイスゴルフだったにもかかわらず、風来坊には全く納得いかないものであった
それは、自分が企画した倶楽部イベントであるにもかかわらず、「奇跡」が一つもなかったからである
それだけではない、
何と目の前で、自分が今まで打ちたててきた金字塔全てがあっさり!、
トップで半分以上転がってしかもカップに入るという真の奇跡、人生でまだゴルフ4ラウンド 目、倶楽部イベント参加たった2回目の若造がっやてのけた天文学的に確率の低い1発のフロック、「転がしのホールインワン」という絶対的なハンマーに叩き壊されたのである!
倶楽部の中で自負をしていた「元祖・伝説製造マシーン」というアイデンティティが音を立てて崩れた瞬間であっただけでなく、自身もやったことがないという驚きとともに、ゴルフ歴25年間というキャリアもが崩れ去ろうとしていたのだった
そんな訳で、かみさんにも中々頭が上がらないという親近感的共通点を持ちながら、あらゆる格下に打ちのめされてきたダメキング・トダメイジの登場には、心底救われたような気がしたのはいうまでもない
トダメイジはここでまた、傷心の風来坊にカモにされたというよりはある意味、踏みにじられることにかけては神の域まで昇華された、といってもいいかもしれない
そして、誰に語るともなく、「あのショットがいつもならガシャンとピン に当たるンだよ!(笑)」というもう一つの世界で起こった風来坊のお伽噺が空しく響くのと同時に、「そうそう」と相槌を打つ周りの空気も微妙に揺れたのだった
そんなところで登場である
ワンテンポ遅れて周りから意味ありげなヤンヤの声援が上がる
「いよーッス!」と、何事もなかったようにトダメイジが座敷に上がり込み、ドカッと座る
そして、スムーズに出されたおしぼりで手と首周りを拭き、すでに顔の一部と化したメガネをクイッと人差指で上げ、落ち着きを払って生ビールを中ジョッキサイズで注文した後、
こちらに向き直り、第一声が、
「な、なんかやったんだって、オマエ、
で、ススススススッススコアは???」
大方の予想通り、落ち着き払った態度はフェイクと判明したが、レンズの反射で窺えない目は明らかに怒気の籠った三白眼である
H 「スイマセン、メイジサン、106ッス、スイマセン」
その刹那、力が抜けたように三白眼は安堵しそして、ほんの極く少しであったのだが、涙が滲んだ
H 「ホント、スイマセン!」
しかし、それに気づいたものは誰もいない
(多分)つづく




