彼の彼女は滋さん。

いつもノーメイクで浅黒い肌。 ショートカットの髪。
彼の破けたジーパンに、彼のキャップ。

彼と同棲してても、あまりゴハンを作らない。
棚には、インスタント食品が沢山入ってた。
特に美人な訳でもなく、おしゃれな訳でもない。
でも、それに勝る 何かを持っている。

広い心? 笑顔? 明るさ? ポジティブさ? 
彼は、ルームメイトがいると言っていた。
実は、そのルームメイトは 女の人だった。
でもって、その人は、彼女だった。
それでも 私は 彼と離れたくなかった。
そして ついに、彼女にバレた。 
でも、彼女は彼を責めるコトはしなかった。

彼女は 彼の笑顔が好きなんですって。
とても変な光景なのだけど、3人で会う事になった。
先に来ていた私に、笑顔で『どもっ!』と言った 彼女(滋さん)。

とてもフランクな滋さん。 ずっと笑顔だった。
それが逆に切なくて、悲しくて、申し訳なかった。
私達3人に修羅場はなく、ホテルの喫茶店で、静かな時間が流れた。
ホントに、どーでも良い会話。 

ケーキセットの滋さん、フルーツヨーグルトの彼、瓶ビールの私。
『まずいケーキだ』と言って、彼と私に味見させる滋さん。 

このフランクさ、彼に似てる。彼と滋さん、同じテンション、同じ波長。
私、この二人の電波を裂くことなど できない。

私、まるで、この二人に連れられてきた子供みたい。
私を責めない滋さん。 こんな事を言った。

『私、彼の笑顔が一番好きだから。その笑顔でいれるのは、文(ブン)ちゃんなんだって。彼の事が好きなんでしょ?
好き? 嫌い?  聞きたいのは、それだけ。』

なんで、笑顔でこんなコト言うの?  胸が痛いよ。
こんなに想ってくれる彼女がいるのに、私を選ぼうとしている彼。
私を選んだら、気難しい息子、厳しい両親、仕事、時間、これから掛かる金のことなど、

直視しなくては ならない面倒なコトが沢山ある。それを考えると、どーして いいか分からない。

彼にとっては、天涯孤独の滋さんといた方が楽なんじゃないかな。って。

涙が溢れてしまった情けない私を慰める滋さん。ヘンな光景だよ。絶対。  
結局、滋さん、終始 笑顔だった。
最低でも ビンタの一発か二発は覚悟してたのに。

私の心に焼き付いた滋さんの笑顔は
ビンタを貰う事よりも 胸に突き刺さる 傷かもしれん。