彼は、ルームメイトがいると言っていた。
実は、そのルームメイトは 女の人だった。
でもって、その人は、彼女だった。
それでも 私は 彼と離れたくなかった。
そして ついに、彼女にバレた。
でも、彼女は彼を責めるコトはしなかった。
彼女は 彼の笑顔が好きなんですって。
とても変な光景なのだけど、3人で会う事になった。
先に来ていた私に、笑顔で『どもっ!』と言った 彼女(滋さん)。
とてもフランクな滋さん。 ずっと笑顔だった。
それが逆に切なくて、悲しくて、申し訳なかった。
私達3人に修羅場はなく、ホテルの喫茶店で、静かな時間が流れた。
ホントに、どーでも良い会話。
ケーキセットの滋さん、フルーツヨーグルトの彼、瓶ビールの私。
『まずいケーキだ』と言って、彼と私に味見させる滋さん。
このフランクさ、彼に似てる。彼と滋さん、同じテンション、同じ波長。
私、この二人の電波を裂くことなど できない。
私、まるで、この二人に連れられてきた子供みたい。
私を責めない滋さん。 こんな事を言った。
『私、彼の笑顔が一番好きだから。その笑顔でいれるのは、文(ブン)ちゃんなんだって。彼の事が好きなんでしょ?
好き? 嫌い? 聞きたいのは、それだけ。』
なんで、笑顔でこんなコト言うの? 胸が痛いよ。
こんなに想ってくれる彼女がいるのに、私を選ぼうとしている彼。
私を選んだら、気難しい息子、厳しい両親、仕事、時間、これから掛かる金のことなど、
直視しなくては ならない面倒なコトが沢山ある。それを考えると、どーして いいか分からない。
彼にとっては、天涯孤独の滋さんといた方が楽なんじゃないかな。って。
涙が溢れてしまった情けない私を慰める滋さん。ヘンな光景だよ。絶対。
結局、滋さん、終始 笑顔だった。
最低でも ビンタの一発か二発は覚悟してたのに。
私の心に焼き付いた滋さんの笑顔は
ビンタを貰う事よりも 胸に突き刺さる 傷かもしれん。