長年通っていたお店から、ずっと接客してくれていた店員さんが退職されたのを知ったのは、つい先日のこと。

初めてその店に行ったのは5、6年前だろうか。
当時の僕の好みにガッチリと一致したその店は、まるでオモチャ箱の様だった。
そのセレクトが新鮮で、通う度に欲しいものが沢山あった。
いくらお金があっても足りないと思えたほど。

少しの年月が経ち、僕の服に対する趣味趣向も変化した。
以前ほど胸をうたれる事が少なくなった。
やがて一緒に店に通う相手も変わった。

それでも、その店員さんは変わらず僕に接してくれた。
相方と二人で、何度その人の事を話題にしたか分からないぐらい。

「今日も可愛かったなあ」
とか
「あんな服、私も欲しい」
とか
とにかくいろいろ語った。

なにより僕にとって、何をするわけでなくとも、自分の大好きな人が楽しそうに話をして、目を輝かせて服を選んでいるのを眺めているのがとても幸せだった。

これからまた、以前のようにロフトマンに通う日が来るかどうかは分からない。

でも確かなのは、もうそこにO西さんはいないということと、
それが自分の人生における一つの時代が、ゆっくりと、しかし確実に終わってしまった事の象徴のように思えることである。

この場を借りて

たくさんの思い出をありがとう。
今までずっと、それなりの人生を送ってきた

教育熱心な家庭に生まれたお陰で、小さい頃から成績は優秀だったし
大した勉強をしなくても、それなりの大学に入れた

母親からの遺伝のお陰で、足は速かったし運動も得意な部類だった

でも何をしても一番になれるものが無かった

だから、頭は良くても東大なんて夢のまた夢だったし
サッカーをしてもレギュラーになるのがやっとだった

これまでずっと、生まれもった才能や恵まれた環境に甘えて
自分を徹底的に追い込むという経験に欠けていた

他人に甘え、自分を甘やかし続けてきた人生だった

でも、もうそんな人生は嫌なんだ
これまでの自分を抹消したいんだ

四月から、業界でも厳しいと有名な人の下に弟子入りした

どつかれる、しばかれるのは当たり前の毎日で
悔しくて、自分が不甲斐なくて涙したことも一度や二度ではない
でも、何事に対しても徹底的に拘る人はここまで凄いんだという世界も体験できた

何より、こんなにも適当でいい加減で怠惰な自分に対して
正面からぶつかり本気で叱ってくれる人がいるという事が新鮮だった

だからこそ、期待に応えるためにも自分を変えたい
変わるしかない

人それぞれ、色々な生き方がある

「仕事だけが全てじゃない」
余暇を生かして趣味や自分の時間を充実させるという
近年の流行の生き方を否定するつもりは無い

でも僕は
将来年をとった時のため
自分の子供が生まれた時のため
身体が言うことを聞かなくなった時に後悔しないため

徹底的に自分を鍛え直して
脇目も振らずに目の前の仕事に真摯に向き合い
「これだけはやり切ったんだ」と胸を張って言えるものを残したい

その為には、まず自分を変えないといけない

だから絶対変わるんだ

今までの自分を変えてみせるのだ
「きっともう、この街に戻ってくる事は無いんだろうな」

荷物が運び出されて空っぽになった部屋を眺めながら、そんな事を考えていた

少し時間があったので、この街で初めてランチを食べに行った喫茶店に行ってみる
店頭には「本日臨時休業」の張り紙
よくお世話になった魚屋さんも閉まっている

しかし、その商店街には確かに、一年前と変わらない時間が流れていた

楽しいことも辛いことも
駄目なことも少し頑張ったことも

色んな自分をこの街は見守ってくれていたんだな

一年後の自分は、今より少しでも社会に貢献できる人間になっていたいと思う

さようなら北田辺

それにしても、本当に色んな事がありすぎた一年でした