恐妻家あっちゃん←ドクター が、『子供、何人いてもいいけど、うちんの(奥方)が嫌っていうだろうなぁ』と苦笑い。


既に3人の子供の父親のあっちゃん


仕事上あまり子育てに協力できないのだから3人が奥さんも精一杯なんだろう。


『うちのは子供のこと、メチャクチャ怒るんだけど、過保護なんだよ。しかも完璧にしないと気が済まないのか、日々弁当作るのだけでカリカリしてるんだよ』


まぁ、今の子は周りの目を気にすることもあろうし、私立の学校に通わせている分、他の保護者の目も気になるのかもね。



もともとあっちゃんもあっちゃんの奥さんも、普通の家庭の出。セレブママの多い学校では若干の疎外感があるのかもね。



『うちの子もですが、作ってもらって当たり前。しかも彩りや内容のバランスが悪いとダメ出し、平気でしますからねぇ。奥さんも大変なんですよ』と奥さんをかばう同期主任。



『弁当なんて前日のオカズの残りだよ、今でも』とアタシ



『それでいいと思うよ。』あっちゃんは頷いた。



『いやいや、それじゃ子供的にはダメなんです』と同期主任



はぁ!?なま贅沢な!とアタシは眉を吊り上げた。



『オカズの残りとして一面煮しめはまだ全然良くて、タッパーに白米を敷き詰めた上に干物の魚がお頭付きで1匹丸々入って、後は梅干しって事があったよ。オッサンの弁当みたいなのには石になりかけた。』とアタシが教えるとあっちゃんは腹を抱えて笑う。



『今の子達は机を並べて集って食べるから、見た目や中味にこだわるのよ』と同期主任



『アタシだって友達と集って食べていたわぃっむかっむかっ


ミッチーはフルタイムで働いていたため、朝は戦場。


よっしー、アタシ、自分の分を一足先に起きて朝早く作るだなんてあるわけないじゃん。



前日の夕食のオカズの残りをバランスも見てくれも無視して豪快にぶち込むのがミッチー流。



オカズが何であれ作ってくれたことに文句を言うのはよっしーの教えではアウトだったが



さすがに魚の干物一匹丸載せの日の丸弁当、今のアタシならともかく、当時女子高生だったアタシにはいくらなんでも男気溢れすぎていて、その弁当を見たビートルよし子は大ウケ



それでも他に食べるものがないのでミッチーめ、やりやがったなと仕方なく完食。



ミッチーに文句を言ったことはないアタシだが『女子の弁当にあれはないだろう』と訴えると



しばし考えてミッチーは申し訳なさそうに『頭がついてたがあかんかったか…』と呟くように言った。



いや、そうじゃない。干物丸まま一匹と梅干しだけ、しかもタッパーにという渋すぎるスタイルだよ、オッカサンと呆れてアタシが指摘すると



『え、魚の干物?鯵じゃなくて鯖がいい?』



何故、そんなに魚の干物を推奨するのだ、母よ。



怪訝な表情のアタシに『美味いで。鯵!』



抵抗するのを諦めたアタシ。


そしてそれから数日後、またタッパー弁当が手渡され覚悟をして蓋を開けると


明らかに手で頭をむしられた鯖の干物が半身で載せられていた。サイドメニューは勿論、梅干しのみ!



その思い出をあっちゃんに聞かせると涙を流さんばかりに爆笑し



『そのくらいしたほうが子供は逞しく育つよ』と言ったが、違うよ。


アレでアタシは逞しくなったんじゃない。逞しいのはもともとなんだよ。



その証拠に弟二人はミッチーの干物弁当を断固拒否し今でもミッチーの豪快弁当が恥ずかしかったかを切々と語るのだから。