数日前、子育てナースマンが週末、県外の実家に帰る話を聞いていると
突然ナースマンが『Nさん、週末天文館に出られます?』と訊ねる。
当然ながら前もっての約束は基本しないアタシは、行くか行かないかわからないが、土曜日の夜に大人しく家にいる可能性は低い。
『まだ決めてないけど、行くかもな。』
『俺、土曜日、バンドのライブがあるんです。見にこられませんか?』
ら、ライブ……。
アタシが週末にライブ?
夜の街で働く友達や見た目は派手な友達が多いアタシだが、アタシ自身は紛れもなく普通のオバハン主婦で、インディーズライブに行ったら
確実に浮く。
しかもアタシの苦手は大きな音に薄暗い室内、そして人混み。
ロックより、昭和歌謡に心癒されるアタシがライブ…。
バンドのメンバーがどんな人を誘っているかはわからないが、今一人で頑張っているナースマン。
かつては、協議離婚で調停中の嫁や家族が見に来ていたこともあったろう。
自分が苦手だからと無下に断りきれんなと躊躇しつつ『どこであるんか?』と聞いた。
イベントでよく使われるビルらしいが、当然ながら行ったことなどない。
しかも行きつけのどの飲み屋からも離れた場所…。
相手がナースマンでなきゃ、120%断ってる。
『…い、行こうかな…』とノリノリ度10%で答えてみた。
ライブに一緒に行くメンバーがいないか探してみたが、さすが週末、誰もつかまらず。
早い時間ならみかちゃんと行くのが常だが、トリをとるらしくみかちゃんは出勤している時間で無理。
クッソー
当日わざわざチケットを持ってきてドリンク代まで置いていったナースマンをぶっちぎることも出来ず
みかちゃんと焼き鳥をつまんだ後、一人トボトボ会場へ向かった。
そして入場。
薄暗いどころか、真っ暗な狭い空間。
テレビしかで見たことないペンライトが前列で光る。
ナースマンはドラムだから後方で座っているから爪先で立っても見えやしない。
クマ牧場の餌待ちのヒグマのようにユラユラと体を揺らし、人の隙間からナースマンを探すが結局見つからず、しかも眼鏡をかけていないためボーカリストの顔すら見えない。
轟くような伴奏につんざくような声で叫ぶように歌う彼らにアタシのテンションは地下三階まで直滑降。
2曲目ではバンドの誰かが客にジャンプして盛り上げようと声をかけたため
会場の客の半分がフライパンの焙ったゴマのようにピョンピョン跳び跳ねだした。
揺れる床。そこは7階。
いつぞや外国のクラブの床が抜け多数の死傷者が出た事故が脳裏によぎる。
アホか、コイツら。もう義理は果たした!
2曲目の途中で会場を出て即行家路に。
あまりの疲労感にみかちゃんの店に寄る気も失せバスに飛び乗った。
聞けばナースマンのバンドは今回でファイナルステージだったらしい。
よく頑張った、アタシ。
ナースマンよ、アコースティックギターかピアノでジャズかボサノバを演奏するときは行くかもしれんが、ロックの間はアタシを誘うのは勘弁してくれ!
ドラムなら石原祐次郎的な演奏をお願いします。